表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/107

第82話 最強の冒険者

 

 選挙当日。今までよりも様々な人が俺の当選結果を待っている。事務所の前も多くの人が居る。

 前にアーローさんが心配していたように、熱狂的な信者みたいな人がずっと「羽山健人!羽山健人!」と叫んでいて怖くもなってきたが、この雰囲気だけを見るに、俺はA級冒険者へと昇級出来そうだ。

 これが終わったら次はS級だ。しかも、トリガーラッキーさんが言っていた事と、クインはもうすでに死んでいる事を考えると直ぐに昇級するはずだ。

 心の準備なんか出来ているはずがない。けど、それでもやるしかないのだ。うん。


「人沢山だねー!」

「うん。これなら大丈夫そうだ」

「良かったぁ!ね!」


 ずっと豪邸に放置されたのが嫌だったのか、自由になっていたはずの2人は俺の近くに居る(?)。好きな場所に居るのもまた自由の一つだろう。ウムウム。


「一昨日の事ってまだニュースになってないんですよね?」

「テレビではやってませんが、ネットニュースにはなっているので。なので、今回の選挙にはプラスに働く可能性が非常に高いです。旬な話題なので」

「どんな風に言われてるんですか?ちょっと怖い」

「あの会場にいた人の一人が匿名で告発しているそうですよ。なので、貴方がハットを殴り飛ばして少女を救った事、今までに何回も何回も生贄の儀式が行われていた事が言われていますので」


 そういう話なら俺の好感度は上がってくれそうだな。

良かったけど、俺が抱えている大きな大きな問題は、俺がクインを殺した事を咎められるかもしれない、という事だ。問題は全然解決していない。


「クインの事は?まだみんなに知られてないんですかね?」

「クインが死んだ事はまだネットニュースになっていませんが、そのような噂は囁かれているようです。貴方とクインが揉めていた、みたいな話もありますよ」

「うわぁ……揉めてたぁ……」

「その目撃情報はマイナスに働くかもしれないので。でも大丈夫ですよ。トリガーラッキーさんも大丈夫と言っていましたので」

「それなら安心……だけどまだちょっと怖いね」

「少しですので。直ぐに分かりますよ」


 向こうは金蜘蛛を信仰しているみたいだけど、俺はトリガーラッキー様を信仰している。ほとんどそんな感じだ。


「そろそろ結果が出るそうですよ。しっかりとしておいた方が良いので」

「身だしなみとか大丈夫ですか?」

「問題ないので。A級冒険者は最上級の冒険者として認識されます。ホントに凄い事なんですよ?S級なんて例外的にしか扱われてないので」

「へぇ」

「当たり前ですけど、貴方が最速です。今までいた冒険者の中で1番早くA級冒険者になるかもしれないのが貴方ですので」

「大変だ」


 もう正直そこら辺の名誉らしき物はどうでも良い。もう完全に約束を守るモードに切り替えたから、それ以外の事は割となんでも良い。

 それからしばらく色んな人と他愛もない会話を強いられながら、ただただ時間が過ぎるのを待っていると事務所の中と外がザワザワと騒めきだす。昇級したのかな?


「当選したみたいですので。おめでとうございます、羽山健人さん」

「や、やったー」

「「バンザーイ!!バンザーイ!!」


 あちこちで万歳の声が聞こえてくる。はぁ、人混みは苦手なのに。これってこういうの苦手なタイプの冒険者は何してんだろ?みんな俺と同じように祝って貰わなければならないのかな。


「後少しで終わりなので。最後に気合い入れてくださいよ?」

「まぁ、ヤバいかもしれないんで頑張ります。やれる事はやります」

「それなら安心です。貴方はこの事務所のエースなので」


 アーローさんに書類を手渡される。いつものようにそれにサインをすると、いつものように。


『称号を獲得しました!スキルを解放する為にメールを開き、添付されたURLのサイトにアクセスしてください!』


 ________________



【最強の冒険者】の称号を得ました!

 おめでとうございます!


 ________________ 


 【最強の冒険者】なんて、随分と大層な名前の称号だな。一体どんなスキルが貰えるんだろう?今更欲しいスキルなんてもうないけど、貰えるもんは貰っておこう。

 そんな気持ちで確認したスキルは、《冒険家》というダンジョン内にどれだけ居続けたとしても疲れなくなるというスキルだった。

 今まで知らなかったけど、普通の人ってダンジョンの中にいると疲れるみたいだ。俺にとっては全く要らないスキルではあるけど、新しい発見があってちょっと良かった。


「次はS級冒険者か?なる前に捕まらないといいな!キシシ!」

「確かに……」

「あの、羽山健人さんですか?取材の方させてもらってもよろしいですか?」

「あぁ、アーローさん的には?」

「貴方が決めれば良いので」


 もっと核心に迫るような事をみんなの前で発言するのが意外と約束を守る為には大事なのかも。もうそろそろ誤魔化し効かなくなってきたし。


「それならよろしくお願いします」

「ありがとうございます。今回A級冒険者に昇級されたという事ですか、今のお気持ちは」

「私はS級冒険者を目指しているので、まだ気を抜く訳にもいかないな、と思っています。しかし、応援してくださった皆様には感謝をしています」

「それでは、S級冒険者になった際に案を提出すると思うのですか、どのような物を想定されていますか?」

「私の事務所の先輩でもあるトリガーラッキーさんと同様に、より幅広い召喚獣の活用に付いて考えております。この前の事件があった事により、我々は召喚獣と向き合う事から逃げられなくなっていますので、その問題にアプローチするような案を提出したいですね」

「具体的にはどのような物を想定されていますか?」


 その質問に答えるのかは多少迷ったが、それでも言わなければならない事は言うべきだと思う。


「召喚獣は確かにAIですが、人とのコミュニケーションを取る能力を持った者が非常に多いです。日常生活のあらゆる場面で色々な人が召喚獣と触れ合えるような、お互いに協力し合えるような社会を築いていく為の物にしたいと思っています。詳細に付いてはまだまだ不十分なところもありますのでこのくらいで」

「なるほど」

「ゆくゆくは、召喚獣が一つの生き物のように、まるで人間のようにみんなと共に生活する社会が理想です」

「そうですか。あの、一部で噂になっている件に関してなのですが」


 一部で噂になっていると今このタイミングで行ったら一昨日のパーティーの事に決まってるじゃないか。

 あまりにも正直に自分の思ってる事をペラペラ言い過ぎてるけど、これもペラペラ喋っちゃおうかな。


「ハットの事ですよね?それなら」

「…………え?あ、申し訳ありません。その質問は無かった事にしていただけますか?」


 記者の方は耳に付けたイヤホンを押さえながらそんな事を言った。いやぁ、本当に色々なところに権力が及んでいそうだ。

 今までの有力な冒険者のほとんども繋がりがある訳だし、他にもどれだけの人がハットの指示に従っているのだろうか?

 どうしてそんなに力が?《金蜘蛛の心臓》ってそんなに価値のある物なのか?


「それでは、これにて取材を終わらせていただきます。ご協力いただきありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」


 その質問のせいか、取材はここで打ち切りになってしまった。そこでふと考える。

 ハットがここまでの権力を持っているというならば、ハットに勝ったという事実を利用すれば今度は俺に大きな権力がやって来るのではないだろうか?

 そうすれば、俺はみんなの約束を果たせる。みんなが自由に生きられるような社会を作れるんだ。

 向かうべき所へと一直線に進んでいく。どこまでも続く訳じゃないんだ。いつかは必ず終わりを迎える。


読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!

ランキングに乗りたいのでブックマークや評価などしていただけると嬉しいです!他の人に広めてもらえたりなども嬉しいです!


ブックマークや評価等とても嬉しいです!ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ