第71話 秘密結社『グリッチスパイダー』
大きな大きな大豪邸を買ってもらった事もあり、他にもアーローさんと約束しちゃった事もありで、珍しく色々と任務などを頑張って普通の冒険者らしく事務所に貢献している日々だったが、トリガーラッキーさんがやってきて状況は微妙に変わりだす。
いつものように謎の書類にサインをしていると、いつもいる部屋の扉が開いた。
「お疲れ様なので。この前のやつが通るみたいなので」
「あ、この前のって召喚獣の?」
「そうですので。そして、貴方に言わなければならない事があるので」
なんか酷い怖いような雰囲気になってきたけど、一体何を言われるんだろう?大抵変なことばっかりだから、覚悟はちゃんとしておかないと。
「ブラックに会いにいってほしいので。そして、そのまま、貴方1人でクインを殺してもらいます」
「え?どうしてそうなるんですか?」
「クインには私も勝てません。死んでしまうので。なので、貴方が戦って殺してください」
「トリガーラッキーさんでも勝てない……俺に勝てるんですか?」
「勝てるので。運命なので。安心してください」
この前は俺とトリガーラッキーさんの2人でソルドを殺した。しかし、今度は俺1人で殺さなければならないみたいだ。
しかも、ブラックさんに会いにいった後はそのまま1人?途中まででも良いから協力してはくれないのだろうか?だって相手はS級冒険者だし。
「えっとー」
「短時間で倒してほしいので。貴方は運良く、いや、運命によれば問題なく殺せますので」
「相手はS級冒険者ですよ」
「貴方には相手の攻撃がほとんど効かないはずなので。それでは、よろしくお願いしますなので」
ソルドは色んな場所に自分の力を分散していた。だから、俺とトリガーラッキーさんの2人でなんとか出来た。
しかし、コッパーさんみたいな、純粋に強い相手にはまだ勝てない気がする。というか、どういう相手なんだ?瞳がどうのこうのっていうのは聞いた事があるけど。
「……あの!向日葵嬉しかったので!それでは!」
「あ!ありがとうございます……」
最後に突然その言葉を発して、トリガーラッキーさんは事務所から消えてしまった。やっぱりなんだかんだ普通の人っていう側面もあるのかな?
個人的にはお花とかを喜ぶタイプには思ってなかったけど、ちゃんと嬉しいと思ってくれていたならコッチも嬉しい。
「ブラックさんの所へ行く前に私からもお話がありますので。3つほどです」
「へ?アーローさんからも?」
「はい。一つは、さっきブラックさんからカジノへ来るようにとメッセージが来ていたという事です。そして、次はクインの話です」
「クインの話?」
俺はキングとクインに会った事がない。だから、どんな人なのか知らない。
瞳がヤバいっていうのは何度も聞いた気がするけど、それでも人となりまでは分からない。
「彼女の後ろには巨大な組織がありますので。そこは、実はブラックさんとも関係があります」
「え?じゃあ、殺しちゃダメじゃないですか?」
「巨大な組織は人体実験や生贄の儀式などをこの時代においても行っています。しかも彼らは特権階級なので。ほとんど野放しにされているのです」
「ホントの話なんですか?それって」
「本当です。ブラックさんから話を聞きましたし、トリガーラッキーさんも証拠を持っていますので」
なんだかとんでもない話になってきたぞ?なに?俺はこれからこの世界の闇と戦ってくるのか?もしかしてめちゃくちゃ大変な話に巻き込まれている?
「クインがS級冒険者になったのも、その裏社会との繋がりがあったからだと言われていますので。なので、本当に気を付けてください。何をされるか分からないので」
「なるほど……気を付けます」
「はい。気を付けてください。実質的にこの世界を支配している人達ですので。ソルドもそこに入っていたそうです」
そんな陰謀論めいた出来事が本当にこの社会にあるだなんて。え?生贄の儀式をやっている人たちがまだいるの?
どうしてそんな人達がS級冒険者とのパイプを持っているんだ。色々と不思議でしょうがない。
「『グリッチスパイダー』という秘密結社ですので。ちなみに、その人達は金蜘蛛を信仰しています」
「えー!?あ、じゃあ……カジノも闘技場も?」
「そうなので。そして、最後にもう一つだけお話しです」
俺の頭はパンクしそうになっていた。えー、ブラックさんって悪い人だったの?闘技場って良くない場所だったの?生贄って何?えー?どういう事?
メイルさんもこの事は知ってるのかな?だって闘技場の王なんだし。
「最後の話は、おそらく、これは私も自信を持って言えるような事ではありませんが、おそらくブラックさんは良い人なので」
「え?そうなんですか?」
「はい。トリガーラッキーさんがそう言ってました。その組織を壊すのはブラックさんでもあると」
「なるほど…………ちなみに、メイルさんってこの事知ってると思います?」
「知ってると思いますので。だから闘技場から離れたんじゃないんですか?トリガーラッキーさんがその儀式の現場に行った時にも闘技場の戦士も何人か招待されていたらしいので」
「なるほど」
現実がドンガラガッシャンと崩れ落ちていく感覚がある。しかし、どうしていきなりそんな事を俺に言い出すのだ……と微かに思ったが、もしかしたら俺はこういう事を知らなければならない立場になっていくのかもしれないな、と微かに思った。
めちゃくちゃ嫌だけど、やるしかない感じだ。
「ブラックさんは単純に金蜘蛛が好きみたいですね。それもあってそこの宗教に入ったんですけど、中身が大変だったので」
「確かにブラックさんって金蜘蛛好きそうですよね」
「ですね。ただ、あの人はあの人で曲者なので。秘密結社とは関係なく気を付ける必要はあると思います」
「分かりました。気を付けます」
まぁ、自分に出来る事を出来るだけ頑張るって道以外は無さそうだ。頑張るか、よく分からんけど。けれども。
「よく分からないですけど、俺はトリガーラッキーさんを信じる事にします」
「私も大丈夫だとは思ってますので。また沢山お金稼いでくださいね。羽山健人さん」
「分かってます。えっとー、もう転移で向こう行っちゃっても大丈夫ですか?連絡とか、アポとかは?」
「大丈夫ですよ」
アルダードとかストームとかの協力が必要かもしれないなぁ。完全に1人って訳ではないんだけど、こういうデカい仕事を事務所の人以外とするっていうのはほとんど初めての体験だ。
しかもそのタイミングで敵は悪の組織らしいしさぁ。てか、ソルドを殺した俺がそこに潜入して良いのか?
ソルドもクインも、多分シリンもその組織のメンバーでしょ?それなら、俺って仇みたいなもんじゃないか。大丈夫?生きて帰れる?嫌になってきたなぁ……
カジノの前まで転移したが、なんだか足が重たい、気が進まない。普通に怖い。そんなヤバい人達の巣窟に行って、中でも権力ありそうなクインを殺すって正気かい?正気を保っているのかい?
「大丈夫?健人」
「うーーーん、分からないけど、まぁ?なるようにしかならないし、運命ならしょうがない」
「そっか。でも、死なないでよ」
「多分、大丈夫。大丈夫である事を祈ろう」
今までの俺の悩みの種は約束だった。でも、ここに来てまた新たな悩みが生まれてしまったのだ。
悩んでも仕方がないので、俺はカジノの中へと入っていく。普通にゴーパーにも会いたい。もう覚悟決めないとな。
読んでいただきありがとうございました!!
何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!
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