第52話 『ジャック騎士団』
『ウィーーン!ウィーーン!』
『モンスターが街に現れました。避難してください。モンスターが街に現れました。避難してください』
『ウィーーン!ウィーーン!』
『モンスターが街に現れました。避難してください。モンスターが街に現れました。避難してください』
朝の5時半頃、ボケーッとスマホを見ていた俺は警報の音にビックリした。
そして、繰り返される警音と、繰り返される機械音によって状況を理解する。
「本当に来るんだ」
「来たな!お前はどうするんだ!?」
「うーん、まだトリガーラッキーさんからは連絡が来ていない……窓の外から見えないかな」
大きな大きな窓の外から街並みを眺めていると、遠くの方に巨大なドラゴンがいた。黒い鱗を持った、童話に出てくるみたいなドラゴン。龍じゃなくてドラゴン。
まるでトカゲが二足歩行しているみたいだが、口から火を吐いているのでおそらくトカゲではない。うーん、大変な事になってしまった。
「あれは『ブラッド・ハルヴァルギル・ドラゴン』だ!お前も名前だけは知ってるだろ!」
「なんか、バカでかくない?えーと……6階建てのマンションぐらいの身長あるけど」
「A級用のダンジョンだからな!だが我もデカいぞ!見てみろ!」
「あ、アルダード……じゃないか、イフリートもいる。あれ?戦ってる?」
イフリートは持っている火の棒を思いっきりドラゴンに叩きつけたが、あんまりダメージが入っている様子はない。
ドラゴンは反撃する。尻尾を思いっきりイフリートの体に叩きつけて、数メートルほど宙に浮かした。
身長はドラゴンの方が大きい。しかし、イフリートも3階建てのマンションぐらいデカい。あれだけ吹き飛ぶという事はとんでもない威力なんだろうな。
「他の冒険者達は対応に当たってるみたいだぞ!お前は大丈夫なのか!?」
「うーん、とりあえず」
『避難してください!!避難指示が出ておりますのでお手数かけますがお客様方も避難してください!』
「とりあえず避難するか」
ホテルのスピーカーからそんな声が聞こえてきた。まだ距離があるとは言え、ここも安全な訳ではない。というか、俺はいつでも動けるように準備をしておかないと。
荷物などはなかったので、とりあえず部屋から出ていこうとしたが、冷蔵庫にあるジュースをグビグビ飲んでからにした。美味しいぞ。
「キシシ!余裕だな?お前ならなんとでもなるのか?これくらい」
「トリガーラッキーさんがいるからね……まぁ、とりあえず急ごう」
部屋から出ていき、エレベーターのボタンを押した。
「階段の方が早いだろ!」
「こういう所の階段は途中で途切れてるんだよ。最上階に階段はない」
「そうか!」
俺はエレベーターで階段がある階層ぐらいまで降りると、そこから階段を思いっきり駆け降りていった。体力の問題は何にもない。怪我しても大丈夫だし、とりあえずは下まで気合いで降りていこう。
○○
「【罠】がいくつか発動したので。もう来まてますので」
「本当に?私はまだ《運命》ってスキルを信用出来てないけど。こんな朝早くからさ」
「すぐに分かるので。いきましょうメイルさん」
「はいはーい」
トリガーラッキーと一緒に事務所を出た。その時の私はまだ疑心暗鬼だった。しかし、目の前に、街の中にモンスターの大群が、数十匹の群れがいたのを見て、その気持ちは変化した。
なんとかしないといけない。私たちがみんなを守らないと。それが冒険者の役目だ。
「【直撃】!!」
薄暗い路地裏。ここには雑魚しかいない。これぐらいならもっと低い位の冒険者でもなんとか出来るはずだ。
問題は、あの大きなドラゴン、『ブラッド・ハルヴァルギル・ドラゴン』。
私たちでなんとか出来るんだろうか?こんな街中で、慣れない場所で。
きっといつもとは違う動きをしてくるはずだ。それに私は対応出来るのだろうか?
「気付いていると思いますので」
「え?」
「私は羽山健人の所に行きますので」
私の横で一緒に戦ってくれていたトリガーラッキーさんは、羽山健人くんの所へ行ってしまう。少し不安だ。
「心配はいらないので。それと、【召喚】」
ラッキーさんは目の前にライオンのようなモンスター、『ライダル』を召喚した。街の中だ。召喚して良いのか?『ライダル』はA級ダンジョンのボスだ。
「小さな敵は召喚獣に任せた方がいいので。それでは私は行きますので」
「あ、ちょっと!」
呼び止めようとした私に、『レッドゴブリン』が襲いかかってくる。クソ、小さい癖に攻撃力だけは立派なヤツ。
ラッキーが召喚したライダルは目の前の敵をドンドンと蹂躙していく。しかし、モンスターは後ろからもドンドンと増えてくる。
私はここを去らないといけない。なら。
「【召喚】」
私は『ウルブル』を召喚した。牛のような肉体をした狼だ。私が初めて使役したモンスター。B級のダンジョンのボスではあるが、ここに居る敵を倒すのには十分なはずだ。
「任せたよ。ウルブル」
「御意!!」
私はこの場をウルブルに任せてドラゴンの元へと走っていく。鎧は『ブラッド・ハルヴァルギル・ドラゴン』の物。
きっと上手くいく。前の私より、今の私の方が強い。絶対強い!!ぜっったいに!つよい!!!!
○○
俺が44階建てのホテルを降りて外へと出て行くと、そこにはアーローさんがいた。
「待ってましたので。行きましょうか」
「えっと、俺はどこに行くの?」
「さぁ。とりあえず事務所へ行きましょう。道路は渋滞で車は使えませんので」
「オッケー【転移】」
俺たち二人は事務所へと向かう。すると、目の前に魚みたいな見た目をした四足歩行の生き物がいた。足は人間の足をしている……どう見てもモンスターだ!こんな所にまで来てたのか!
「アーローさん!こっち!モンスター!」
「それは私の召喚獣なので。この辺りでまだ逃げていない人の救助を行なっています」
「そうなの?大丈夫なの?
「大丈夫です。トリガーラッキーさんの指示なので」
確かに、その奇妙な見た目をしたモンスターは道を塞ぐ木や、建物の瓦礫などを撤去していたり、周辺にいる無数の小さなモンスターを水の魔法で蹴散らしていた。
みんなを守っている。これをもっと多くの人が見てくれたら。
「えっと、これからどうするんですか?」
「私たちはソルドの家に向かいますので。トリガーラッキーさんは後から合流します」
「なるほど。じゃあ、二人で?」
「違います。人が来るので」
「待ちですか?今は?」
「助けられそうな人を助けましょう?この辺りにもモンスターは来ているので」
アーローさんはそう言った。なので、俺は近くにまだ残っている人たちの救助活動を行う。ここは都会だが、事件が発生したのが朝だったおかげで人気は少ない。
それでも人はいるので、その人達の救護を行なっていると、4、5人の集団が走ってやってきた。これが噂の?
「待たせた。それじゃあソルドの所に行くぞ」
「え?貴方達は?」
「話は走りながらだ。その方が早い。着いてこい!羽山健人!」
「は、はい!あの!アーローさんも!」
「……分かってますので……」
4、5人は止まる事なく走り続ける。その足は異常なほど早く、俺は全力疾走でなければ追いつかない。アーローさんも俺と同じように全力疾走で追い付こうと頑張っているが、その表情はどう見ても辛そうだ。
次第に後ろへと下がっていくアーローさん。最終的には立ち止まった。
「あのーー!!……はぁはぁ……後で追い付きますのでーー!先に行っててくださいー!」
後ろの方で俺たちに手を振るアーローさん。俺と一緒に走っているみんなはそれに見向きもしない。
というか、俺は疲れないから全力疾走し続けられるけど、この人たちはなんだ?なんでこのスピードで走り続ける事が出来てるんだ?てか誰?
「あの名前は?というか、どなたですか?」
「俺の名前はジャック。そして、みんなは『ジャック騎士団』の一員だ」
「ジャック……S級冒険者の?」
「あぁ、そうだな」
やっぱりなんか違うと思ったんだよ。この感じは確かにS級冒険者だ。
俺は謎に納得しながら街を走る。目的地も知らないので、みんなの後ろに着いて行くしかなかった。
読んでいただきありがとうございました!!
何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!
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