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第48話 久々トリガーラッキー

 

 事務所の空き部屋で物件探しなどをしていると、扉がドガッ!と開き、中に人が入ってくる。こ、この感じ?馴染みがあるような……


「お久しぶりなので!さぁ、お話があるので!」

「あ、トリガーラッキーさん」

「初めましてなので。ローズさん」

「……え?私?」


 トリガーラッキーさんもどこかでローズさんの事を聞いていたらしく、初めましてなのに普通に挨拶をしていた。やっぱりなんだかんだ気にかけてくれていたのだろうか?

 まぁ、普通そうだよな、だって自分で勧誘してるんだし。

 今日もスチームパンクみたいな格好をしている。なんでその服装がそんなに気に入ってるんだ。


「2人に関係がある話なので」

「え?ローズさんにも?」

「はいなので。貴方、ダンジョンを抜け出す前にソルドに会ってますので」

「私?ソルド……ソルド……多分、会ってると思います」

「え?ソルドって誰ですか?」

「S級冒険者のソルドですので。召喚獣を無数に使役しているという人なので」


 またS級冒険者の話。というか、ローズさんをダンジョンから逃したのはそのソルドって人なのか?

 どうしてそんな事をしたんだろう?、と思う気持ちはあったが、これまで見てきた感じ、S級冒険者が変な事をして変な結果になったっていうだけな気もする。


「彼はその世界を変えようとしているので。その方向性は奇しくも貴方と同じです。羽山健人」

「俺と?」


 俺と同じ方向性って、つまりはモンスターが人間みたいに生きられる世の中を作るって事か?

 確かに、無数に召喚獣を使役できるような人だったら、モンスターに対して相当な理解があるだろう。その結果として、今の世の中は間違っているというふうに思うのは分かる。

 その人と協力する事が出来れば、俺の願いは思っていたよりも簡単に叶うのかもしれない。


「しかし、その人は非合法ですので。みんなでとっ捕まえに行くので!!」

「え?いきなりですか?」

「事務所のみんなにも連絡してありますので。残念な事に、これからこの街で彼の召喚獣が跳梁跋扈します。それらの退治などは私たちではなく皆さんに任せますけど、私たちはソルドを殺しに行きますので!!」

「ころ、殺す!?そこまでしなくても……」


 今さっき協力出来るかもって思ったばかりなのに、今度は殺すみたいな話になってしまった。どうして?どういう事?もう意味があんまり良く分からん……格別だ。冒険者の中でも格別にイッチャッテルヨコノヒトハ。


「その前に踏むべき段階がありますので。まずは人間をモンスターに改造しているマッドサイエンティストを捕まえます。話はそれからなので」

「あ、いや、あの、もう正直何がなんだかよく分からない……え!?何をするんですか?俺たちは?」

「分からなくても良いので。着いてきてください!後メイルさんも来ますので」

「えーー?もーー……わけわからーん!」


 冒険者に慣れてきて、自分自身もめちゃくちゃな人間になってしまったんだ。とか、勝手に思っていたりもしたが、別に全然、ぜーんぜんそんな事なかった。この人に比べれば大分真人間。

 いそいそと俺の前を歩いているトリガーラッキーさんの背中を、俺は見送ろうとも考えたが、無視する訳にもいかないので着いていく事にした。

 事務所内で合流したメイルさんも困惑の様子。しかし、アーローさんだけは何事もなかったような顔をして、この状況を受け入れている。知っていたのかな?この話を。


「というか、証拠とかってあるんですか?これから捕まえに行くんですよね?」

「マッドサイエンティストの証拠は現場にあるので!ソルドの方もちゃんと証拠を押さえているので」

「現場に……もしなかったら?」

「無いなんて事はあり得ないので。運命ですから」


 事務所を出て、アーローさんの車が来るのを待っている途中、純粋な疑問をトリガーラッキーさんにぶつけてみた。

 すると、証拠は現場にあるだの、もう押さえてるだのなんだの、運命だのなんだのって言われて少し不安になる。

 本当にこの人を信用して良いのかまだ曖昧なんだよな。もたれかかって良いような人じゃない気がする。ある程度距離を取らないとこっちまで大怪我するんじゃないだろうか?


「どこに向かえばよろしいですか?トリガーラッキーさん?」

「シリンのアイスクリーム工場なので。そこに証拠がたっぷりありますので」

「シリンのアイスクリーム……え?アレってなんか変なの入ってるの!?私めちゃくちゃ食べてるんだけど!?」

「アレ自体は問題ないので。ちゃんとした審査が通ってますので」

「そっか……良かった……」


 ついさっき事情を知った割に飲み込みが良いメイルさんは、シリンのアイスクリームという名前を聞いてデラ驚いていた。

 俺もその名前は聞いた事がある。ゴーグルを付けたトゲトゲの白髪をした白衣のオジサンがイラストとして書かれているお菓子だ。俺も食べた事ある気がするな?

 そのイラストの元になった人が、例のマッドサイエンティストであるシリンなのだろう。多分。流石に色々分かってきたぞ。


「あのー、そのシリンって人は何をしてるんですか?モンスターを人間に改造?」

「逆なので。落第冒険者って言われる人たちがいます……アーロー代わりに説明してくださいなので。落第冒険者に関してもなので」

「はい。わかりました」


 トリガーラッキーさんはアーローさんよりも「ので」が強いな。普通な感じで喋ってるけど、流石にそれは無理があるだろって繋げ方してる時ない?

 それに比べてアーローさんはまだ常識的だ。俺的にもそっちの方が聞きやすそう。


「この世界にはモンスターがいますよね?そのモンスターは倒されたとしてもまた再出現します」

「あー、そうですね。それは間違いないです」

「しかし、ダンジョンの中には再出現しないモンスターがいます。元々人間だった人が、改造されてモンスターになったのがそれなので」


 うーん、良く分からんけど、そのシリンって人は人間をモンスターに改造してダンジョンに放っている、という事で良いんだろうか?


「モンスターになっても意識は繋がっていますので。その犯人を突き止める為に、改造モンスターを冒険者は捕まえなければならないので。殺してしまうと冒険者資格の失効。さらに落第冒険者として晒される事になります」

「怖い……え、それ、俺全然知らなかったんですけど?」

「そんなの稀中の稀なので、貴方は気にしないでも大丈夫ですよ?しかし、今後は多少気にしといてくださいね?」

「あ……はい、気をつけます……」

「私たち冒険者には警察と同じような権限がありますので。落第冒険者を捕まえたりする事も私たちの役目ですよ」

「殺しても良いので」


 アーローさんから説明を受けていたが、突然トリガーラッキーさんが怖い事を言い出した。殺しても良いので?そんな怖い言葉ある?ギャングかヤクザじゃん。


「落第冒険者は殺しても問題ありませんので。それどころか評価は上がりますので」

「…………まぁ、まぁ、そうですね。つまりはこれから俺たちが捕まえに行くのは落第冒険者って事ですか?」


 トリガーラッキーさんが口を開く。アーローさんの説明はもう終わりか?


「そうなので。だから、殺しても問題ないので。しかし、シリンは捕まえる事が出来ます」

「え?」

「問題はソルドの方ですので。残念かもしれませんが、彼は殺します。運命なので」

「え……S級冒険者を?」

「絶対に勝てるので。心配はしないでください」


 車に揺られている。え?俺は、人を殺す為に移動をしているのか?

 ……人を殺す?俺が?そんな……そんな事になるなんて思ってもみなかった。

 出来ない!と思う気持ちはそんなになかった。なぜなら、俺はモンスターも人間みたいに見えてるからだ。


読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!

ランキングに乗りたいのでブックマークや評価などしていただけると嬉しいです!他の人に広めてもらえたりなども嬉しいです!


ブックマークや評価等とても嬉しいです!ありがとうございました!

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