第45話 恋人
「ちょ、ちょっとだけ片付けても良い?朝出た時に急いでてぐしゃぐしゃってなっちゃったからさ」
「別にそのままでも良いけどな」
「いやいや、まぁ、ちょっとで終わるから」
「それなら待ってるわ。早くしてくれよ?寒いんだし」
「あぁ、それは分かってる。じゃ」
ヤバいヤバい。ローズさんには隠れてもらった方が良いんだろうか?それとも……いや!何馬鹿な事を考えとるんだ!!
人間みたいに自由に生きたい、って言ってるんだったら、ここでローズさんが隠れる必要なんてないはずだ!ただ!!
ただ!それとは別に俺がどうしたら良いのかが分からない。俺はどうやってこれからの時間を乗り切れば良いのか?もう正直にローズさんがモンスターである事言っちゃおうかな、どうせいつかは言うんだし。
ローズさんにもちょっとだけ話してるはずだから、多分なんとかなるんじゃない?知らないけど。
「あ、お待たせ。終わったよ。てか……中に人いるんだけど驚かないでね?」
「え!?あ、そういう事!?それで俺を呼んだ……っていうのもなんか変だよな。結婚相手とかじゃないもんな」
「いや!も、面倒いから早く入っちゃって?うん」
もうめんどくせーや!別に隠すような事じゃねーし良いだろ!もう良く分からんから。
「た、ただいま〜」
「お帰りなさい。健人さん」
「え?……あ、お、おかえり……」
「ただいまだよ?ふふふ」
健人さん?今までは健人くん?いや、羽山くん。今は健人さん?あれれれ?俺が外に出ている間に一体何があったんだ?何がどうしてこんな事に?
「初めまして。俺は柏木亘と言います。健人とは前の会社で同僚でして。すみません、こんな夜遅くなるお邪魔しちゃって」
「いえいえ、お気になさらず」
なんだか上手に応対してくれるローズさん。そんな感じだったかなぁ……なーんか、変だなぁ……おかしいな、おかしいな。
「中へどうぞ。お料理も用意してますよ?」
「え?ほんとに?ローズさんが用意したの?」
「うん。健人さんの為に私が手作りで」
「へぇ!それは楽しみです!お店寄らなくて正解だったな?」
「そ、そうだねー」
おかしい!!絶対想定と違う!!
じゃあどういう想定をしていたのかと言われると困るが、こんなの全然想定していない。元々は、元々は?
元々俺は自分が間違っていない事を確認しようとしていたんだ。というのは、冒険者はモンスターをモンスターとしてしか見ていないという事を知ったから。
そうなった時に、冒険者以外の人ならどうだろうと思い、柏木を誘ってみた。モンスターに付いてどう思うか、そして、ローズさんたちと話してみてどうなるのか、それを確かめる為に呼んだ。
その旨は、そういう話はローズさんにも、アルダードにもしていた。今日の朝した。
ポワワワワ〜ン
○○
「今日さ、柏木っていう人が来るんだけど」
「人が来るの?」
「あぁ、もし無理そうだったら外で会う事にするから別に大丈夫なんだけど、その人冒険者とかじゃなくて会社員なのね?」
「うん」
「それでさ。普通の人はモンスター?に付いてどう思ってるのかなぁってちょっと確認をしたくて」
「それは良いな!!我らも気になるぞ!!」
「でしょ?ちょっと確かめたいからさ。ローズは大丈夫?それでも」
「………………」
「……ダメかな?」
「良いよ。私待ってるから。羽山くん」
○○
みたいな話をしたはずだ!なのになんでこんな事に?
もしかしてより好印象になるように努力してくれたのかな?それにしてもちょっと健人さんの謎が解けない、てか、家に食材なんて無かったはずだけど、どうやって?
「え、買い物行ってくれたの?」
「うん」
「…………あ、あぁ、そっか。そうだよねー……」
三人で部屋の中へと歩いていくと、そこには立派な鍋がありました。うーん、美味しそう!!!お腹空いたね!!!
俺ってコレ食べて良いのかな?食事のメニュー決まって……もう良いや、今日は難しい事を考えるのをやめよう。
「スゲェー!美味しそうですね。料理得意なんですね?」
「あんまりやった事は無いんですけど。ネットで見た事があったのでそれを真似して」
「いやー。それでも失敗する人居ますからね。料理上手だぁ」
「……美味しそうだー、お腹が空いてたなー」
「いっぱい食べてね?健人さん」
ニコッ。ニコッじゃないんだよ。俺も一応ニコッと返してみるけど、中々これはニコッていう状況ではないね。
グサッて感じ。うん。なんか色々とヤバい……俺はどう思ってるんだ?モンスターの事、いや!召喚獣の事。いやいや!違う!俺はローズの事をどう思ってるんだ?ねぇ?
そもそも向こうがどう思うかも分からないのに、こんな妄想ばっか。めちゃくちゃ馬鹿みたいだ。
みんなで鍋を囲んでいる。ローズさんも当たり前のようにご飯を食べている。もう完全に人間でしかない、俺には人間にしか見えない。というか、モンスターってご飯食べれるんだね。
「美味しいです!いやぁ、本当にありがとうございますー」
「いえいえ」
「あの、これ聞いていいかな?えっと」
ヤバい。2人はどんな関係なんですか?
その質問が来るのを予見した。しかし、それに対して俺がどうすれば良いのかは全く分かっていない。なんだこの状況は。マジで。
「2人ってどんな関係なんで」
「私は、私は羽山健人さんの『彼女』です。ね?」
「え……あ……」
俺は完全に放心してしまって、口から言葉が出なくなった。さっきまで俺が怖いと思っていた、人間とモンスターの恋愛の壁が取り払われてしまって、どうしたら良いのか分からない。
そんな俺の後ろにローズさんはやって来て、右肩に右腕をかけ、左肩に顎を置き、お腹を左腕で抱いて、本当に恋人みたいな感じになってしまった。おいおいおいおいおい!!!!
なんだこれ!!恋人じゃないか!!?良いのか!?
「ね?私たち恋人だもんね。健人」
「あ、まぁ、はい……そ、そうかも」
「おいおい。2人とも熱いなー」
柏木はまたまた嫌な笑顔を浮かべる。違う。なんか色々と違う。大丈夫なのか?これで。
え、え?俺はローズと付き合う事になったのか?俺はローズと付き合っているのか?まだ気持ちの整理が付かない。だって、そこまでは考えていなかったから。だって、ゴーパーもアルダードもそういうアレじゃなかったから。マジで。
頭が真っ白だし、全身の血の気が引いて来ている。俺は、俺は本当の話をするとローズが好きだ。でも、そういうことではないんです。
これは、俺の、俺の今までの人生の価値観の否定なんです。
……コレをみんなにやるのか?てか、もうローズがモンスターだって事言えなくなってんじゃない?だってもう今更。
今更すぎる。
そんな俺のスマホからはピコン!という音が聞こえてきた。嫌な予感。まだ全然準備出来てないよーー!心が全然整理付いてないよーーー。
「スマホ。取ってあげる」
「うん……ありがとう……」
画面には、
『称号を獲得しました!スキルを解放する為にメールを開き、添付されたURLのサイトにアクセスしてください!』
書かれていた。何?なにこれ、なんなの?分からん。なんの称号?モンスターと恋をするなんて、そんな称号ある訳ないよね?
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【愛情】の称号を得ました!
おめでとうございます!
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その文字を見た時に、俺はちょっと倒れそうになった。が、でも、なんか、普通に、コレで良かったんだ、と思う心もあった。
不思議なくらいに心はグラグラだ、このまま心臓が破裂して死ぬかもしれん。
読んでいただきありがとうございました!!
何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!
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