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第44話 一人前の冒険者

 

 柏木と会う日がやってきたが、今日は投票日だったらしい。なので、柏木との飲み会?お酒を飲むかは決まってないから何会なのかは分からんが、柏木との用事は夜になってしまった。

 夜になってしまったが、柏木が事務所に来たいと言ったので、事務所で一緒に結果を待つ事になった。ローズさんは家でお留守番。お留守番?

 ローズさんにも今日の夜に柏木が来る事は言ってある。しかし、それ以外は特に言ってない。言えば良かった。普通に。


「よ。久しぶりだな」

「久しぶり。いきなりで大変じゃなかった?」

「もう全然問題なし。お前の代わりにきた奴が凄くてさ。優秀な奴って居るんだなぁ。って思ったわ」

「そう。でも、そういう問題でもなくない?俺がやってたやつは?」

「そこだけはな。でも、全体で見れば別にって感じ」


 どんな人が行ったんだろう。まぁ、きっと優秀な人が行ったんでしょう。うむうむ。


「ちょっと、写真撮影頼んでみても大丈夫かな?妻にサインとか頼まれちゃってさ」

「良いんじゃない?でも俺アレだよ?全然仲良くない人ばっかだよ。事務所」

「そりゃそうか。まだ入って間もないもんな」

「でも、頼むだけ頼んでみたら?」

「そうか……そうだな。頼んでみるか」


 そう言って柏木は席を立つ。うーん、一人になってしまった。

 さっきまでは柏木っていう、まぁ、言っちゃあ悪いけど普通の人の近くにいたから、あんまり変な事をしようとも思えなかったけど、一人になった途端、ここから抜け出すという変な事をしても良いんじゃないか?って気になってしまう。

 しかし、さっきから作業の傍ら、アーローさんが俺の姿を確認してくる。目が合うと凄い気不味いんだからー、うーん。


「今日はダンジョンに行かないのか!?前は行ってただろ!?」

「今日は良いかな……昨日も行ったし。朝まで」

「お前も遂に本気になってきたんだな!きっとS級冒険者にもなれるはずだ!!」


 ローズさんと二人で狭い部屋にいるのが不安だった。最初の日は筋トレで誤魔化していたが、昨日はダンジョンへと逃げ込んだ。まだ行った事のない『デザートデザート』というお菓子が沢山ある砂漠のダンジョンだ。

 おかしみたいなモンスターがたくさん居て癒された。マカロンとか、マシュマロとか、モンブランとか。美味しかった。

 そこで、俺はレベルが5上がった。それによって《一蹴(キック)》という攻撃スキルと、《毒微耐性》を手に入れたが、どっちも使わなそうだ。《状態異常耐性》はもう既に持ってるし。

 というか、俺って《状態異常耐性》持ってるのか。強。


「いくつか貰ってきたよ。意外と冒険者って優しいんだな」

「そりゃ意外とね。でも、変な人ばっかりじゃない?そうとはあんまり思わなかった?」

「そりゃ、こんな仕事してるんだからキャラクターは大事だろ。てかお前なんで本名なの?チョコ作ったら『羽山健人チョコ』になっちゃうじゃん」

「あぁ……成り行きだね」

「ウチもお前に広告頼もうか迷ってるんだけどさ。羽山健人って名前が入るのは変だっつって躊躇ってるよ。まぁ、躊躇ってる間に頼めなくなりそうなんだけどな。高くなってて」

「へぇ……」


 この世界には冒険者とコラボした商品が沢山ある。その時には必ずと言っても良いほど名前が商品名に使われる事になるのだが、羽山健人という名前を商品名に入れたいと思える人は中々居なかった。

 なので、羽山健人は冒険者という職業に集中する事が出来ている。


「羽山健人さん。そろそろなので。こちらへどうぞ」

「どちらへ?」

「みんなの前ですよ。主役なので」

「うゲェ……ここじゃダメですかね?」

「ダメです。貴方の為の場なので」

「お前絶対こういうの苦手だもんな?」


 柏木はニヤニヤ。やめろー。

 その笑顔が一番最初に思いついたんだよ。いやーーな、片方の口角だけ上がる、なんだか蛇みたいな笑顔。

 その懐かしい笑顔を見ながら、変わっていない柏木に安心する。俺は変わっちまいましたよ。


 それから俺が居ても居なくても良いような儀式的なやり取りがいくつかあった後、ネットのどっかのホームページに俺の票数が出た。

『30万票』相場は普通に分からなかったが、周りのみんなが目ん玉飛び出るくらいに喜んでいたので、おそらく凄いんだろう……いや、とぼける訳にもいかん!これは流石に多い!

 まぁ、とりあえず俺はE級冒険者からD級冒険者へと昇級出来た事が分かった。これで一安心だ。


「万歳してください!ほら当選したので」

「えー……」

「万歳!万歳!」

「ば、ばんざーい、ばんざーい」


 思いっきり大きな声を上げて、そんな事をしているアーローさんは大人だと思った。普通にこういうの好きじゃなさそうなタイプなのに。

 それから喧騒の中で身を任せていると、次は絶対にサボってやるという気持ちが湧いてくる。

 全然自由じゃない。ローズが求めるような人間らしさとはなんなんだろうか?これは俺である必要があるのか?

 そもそも人間という者はそこまで人間らしくないのかも。のかものかも。


「お疲れ様でした。最後にコチラにサインを」

「昇級の奴ですか?」

「はい。前と同じなので」


 俺はアーローさんに渡された紙にペラペラと自分の名前を書く。うむ。これでワシもデー級じゃわい。


『称号を獲得しました!スキルを解放する為にメールを開き、添付されたURLのサイトにアクセスしてください!』


 前と同じように称号がもらえる。この前は転移(テレポート)っていう便利なスキルだったけど、今度はどうだろう。


 ________________



【一人前の冒険者】の称号を得ました!

 おめでとうございます!


 ________________ 


 Dまでいくと一人前って認められるんだね。やったー!そして、それについていたスキルは、【転生(リスタート)】。

転生(リスタート)】。どんなスキルなのか良く分からなかったので、スキル確認ページを開こうと思ったが、結構めんどくさかったので、アーローさんに聞いてみる。



「【転生(リスタート)】ってどんなスキルなんですか?」

「あぁ、レベルが1に戻る代わりに、別の職業が選べるようになる奴です。それを繰り返さないと上位職が解放されない事もあるので、ようやく一人前と言った感じですね」

「上位職……『ハンマー使い』の上位職って……あるんですか?」


『ハンマー使い』ってめちゃくちゃマイナーな職業だって話を最初に聞いた覚えがある。そんなスキルの上位職なんて本当にあるのだろうか?


「私も調べてはいます。しかし中々見つからないので」

「へぇ……自分で探すしかない感じですかね?」

「ただ、S級冒険者に職業マニアがいるので。その人の元へと訪ねてみるのもいいかもしれません」

「出来るんですかね?」

「貴方がA級冒険者になったら十分あり得ると思いますよ。冒険者っていうのは本来集団で動くものなので。私の方からもアプローチしてみますので」


 コッパーさん以外のS級冒険者。あの人は相当な人だったけも、他のS級冒険者はどんな感じなんだろう。

 普通の人って事はないだろうなぁ。流石に。


「その人の名前は?」

「ジャックです。聞いた事はありますよね?流石に……」

「あ……はい……そうですね……」


 本当は無かったけど、あるように見せかけておいた。誰?ジャックって全然知らない人の名前なんだけど?


「知らないなら知らないでいいので。それと、もう今日はお休みですよ。予定も勝手に入ってましたし」

「あ、すみません……」

「今度からはちゃんと連絡してくださいよ?意外と大変なので」

「はい……反省します……」


 俺は、微かに反省しながら柏木と合流して我が家へと向かう。家にはローズさんが待っている……待っている?

 ……マズイ。段階的にモンスターの話をしていこうと思っていたのに、いきなり本題に入るしか無くなっている。

 頭の中で色々と会話のシュミレーションをしてみたが、どれもこれも自分に都合の良い事ばかりだったので辞めた。

 モンスターだって喋ったら普通の人間でしかないから、柏木みたいな普通寄りの人だったらきっと分かってくれるはずだ。


読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!

ランキングに乗りたいのでブックマークや評価などしていただけると嬉しいです!他の人に広めてもらえたりなども嬉しいです!


ブックマークや評価等とても嬉しいです!ありがとうございました!

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