第41話 山を買おう
二人がイチャイチャしているのをただ見ていた、いや、出来るだけ見ないように心がけていた俺の所へ、アーローさんとメイルさんがやってきた。
こうして考えるとコッパーさんの到着って本当に早かったんだな。S級冒険者は違いますね!えぇ!
「大丈夫でしたか?大変そうだったので」
「まぁ、なんとか」
「すごいね。だってA級のボスだったんでしょ?私ですら一人だと直ぐなのに」
「耐えるのは得意だから。うん」
「ホントの天才だ。早くS級冒険者になるとこ見せてよ」
「うん。出来るだけ早い方が良くなった」
自分の影響力が強くなって、俺が言った事に賛同してくれる人が増えれば、いつかは必ずローズも街を自由に歩けるようになるはずだ。
今までと一緒だ。この世界は冒険者に対して甘いから、召喚獣と一緒に歩くっていう変な事をしていても受け入れてくれる人はいるはず。
そして、さらにその先には、みんなが人間のように、モンスターが自由に色々な場所を歩き回れるような社会がある。
まずはローズからだ。ん?いや、もしかしたら違うかもな。
「アーローさん。関係ない質問良いですか?」
「なんでもどうぞ。なんだか嫌な予感はしますけど」
「ゴーパー……金蜘蛛って街中歩いてても大丈夫ですかね?みんな好きなんですよね?金蜘蛛」
「キシシ?俺か?」
「貴方……あの、変な事は辞めてくださいね?本当に」
そういえばローズを探す時にゴーパーを街中で召喚していた。もし仮にそれが許されるのであれば、案外すぐにでも達成出来る目標なのかもしれない。
「ダメに決まってるじゃないですか。違法行為ですので。金蜘蛛が居たら嬉しいと思う人はいるかもしれませんが、それでもダメです」
……違法行為と聞いて冷や汗をかく。いや、俺さっきめちゃくちゃ召喚してたんだけど?大丈夫?
「ただ、はぁ……こんな事言いたくないですけど、私有地なら良いらしいですよ。なので、召喚獣を展示している動物園とかありますし」
「え!?私有地なら良いの?」
「はい。へ、変な事言わないでくださいよ?」
私有地なら召喚しても良い?それなら山買えば良いじゃん。山の中で……いやでもそれって本当に人間らしい生き方なのか?自由ではないよな?やっぱり俺がめちゃくちゃ偉くなるしかない……でも、まずはそこからでもいいのかな?
「山……山……」
「山?山買おうとしてるんですか!?」
「え?私山持ってるよ?別荘の」
「ホントに?」
買うのか?山?山買ってそこでみんな自由に暮らせるような場所をひとまず作ってみるか?なんじゃそりゃって感じだけど。
「売ろうか?私もう使ってないし」
「良いんですか?……アーローさんも大丈夫ですか?」
「……はぁ……私は秘書です。もし買うというなら手続きはします。それだけです言いたいのは」
「じゃあ……よろしくお願いします」
馬鹿みたいなノリで山を買ってしまった訳だが、これで本当に良かったんだろうか?まぁ、でも、思ったよりは早くみんな自由に暮らせる世の中になる可能性も見えてきた?分からんけども。
「キシシ!俺たちはそこに住むのか?」
「あ、そっか。みんなはどう?山に暮らすの」
聞くの忘れたわ。山買った後にやっぱりダメでしたってなったらあまりにも無駄すぎるからな。一回ちゃんと聞いておこう。
「我は燃えているからな!山火事になったら大変だ!」
「ここで終わりじゃないんでしょ?羽山くんはもっと先を見せてくれるんでしょ?」
「もちろん。将来的には山だけじゃなくてもっと色んな場所」
「え!!!!?待ってください!!ちょ、ちょっと待ってください!!ちょっと理解出来てません!よく分からないので!」
「え?」
アーローさんが目ん玉飛び出ちゃいそうなほど驚いた後、爆発でも起こったのかと思うほどの爆音がアーローさんの口から発せられた後、俺はまだ二人に報告していない事があるのを思い出した。
「あのーー、召喚獣になってくれました。話し合ったら。はい」
「嘘なので!本当ですか!?」
「まぁ、一応はい」
「ホントに……そんな、そんな事をお願いした訳じゃないので……いやぁ、不思議だなぁ、世界って。宇宙は広い」
突然変な事を言い出したアーローさん。確かに宇宙は広そうだ。宇宙は広いなぁ、海も広いし、青空は広い。うむ。
○○
その話を聞いた時、私の頭の中は完全に真っ白になった。
A級ダンジョンのボスは、下級のボスよりも仲間になりにくいはずだし、そもそも何度も、場合によっては何百回も挑戦してやっと使役できるようになるはず!
なのに、どうして?どうしてこの一回だけでエテルを召喚獣として使役出来ているんだ?
今、今のS級冒険者の中にも似たような事をしている人はいる。大小数えて何百という召喚獣を従えている人。
きっとコツがあるんだと思う。何かコツが。でも、貴方は、羽山健人はもう既に《リジェネ》っていう武器を持っているはずなのに、それなのにどうして召喚獣まで手に入れようとするの?
どれだけの物を手に入れようとしているの?神様は平等じゃないのか?
望んでいたはずだった。私は新しい冒険者が昔の冒険者を淘汰するところが見たいと思っていたはずだった。それなのに、実際にこうして目の前で見た時に、どうしても絶望してしまうのだった。
彼が今も着ている、5億グルもする鎧はきっとお似合いだ。私にはもったいない。私には似合っていない。
○○
俺は今カジノに来ていた。理由は簡単。
ここならゴーパーを自由に歩かせる事が出来るという事を思い出したからだ。というか、そんな感じの事をアーローさんに言われて思い出した。
もうすぐ選挙もあるからついでに行ってこいだそうだ。そして、俺はついでにカジノで遊ぶ。
なので、アーローさんの車がここに到着するのをボケーッと待っていた。
「いらっしゃい!!丁半博打にようこそ!」
「キシシ。サイコロなら勝てそうだな?」
「お客さん!!コイツァ金蜘蛛ですかぁ!?金ピカで縁起が良いね!こりゃ!」
カジノには様々な賭け事がある。その全てに称号が付いていて、どれを遊んでも勝てばスキルが貰える。
本当に冒険者の為にあるような施設だ。もちろん、一般の人も入れるが、その場合は入場料がバカ高くなるらしい。
俺の横には自由なゴーパー。ここで生活する事になったので、俺とは一時的にお別れだ、悲しい。
「どう?ここは」
「キッシシ!悪くはないな!金々してるし」
「お兄ちゃん!賭け事の前に少し拝ませてくれよぉ!その金蜘蛛様をよぉ!」
「大丈夫?」
「キッシシ!!拝みたいなら好きなだけ拝みなァ!占いなんかよりもよっぽど意味があるぜ!?」
全体的に和風な雰囲気のあるこの場所には、正直めちゃくちゃヤクザっぽい人が沢山いて怖い。今話しかけてくれた人は何故か上裸だし、刺青入ってるし。うむ。怖い。
「さぁさぁさぁ!!お客様方目を見開いて!コイツァ、タネも仕掛けもねェ只の賽だ!それをこの樹齢数百年の木で出来た随分と立派なカップに入れる!良いかい!?」
カップにサイコロが二つ入り、それをディーラー?的役割の人がカラカラカラカラと、入念に何度も混ぜる。当たり前だが中身は見えない。
「さぁ!お客様方!この国一番の大賭博場!!カジノブラックへようこそ!さぁ!丁か半!何にも難しいこたぁいらねェ!丁か半か!どちらに賭けるんだい!?」
「ゴーパー。どっち?」
「丁だな」
「へぇ、なら丁にでも賭けようか」
俺は丁にコインを賭けた。どうやら席を移動する必要があるらしくちょっと立ち、半の位置に移る。
「それでは!勝っても負けても恨みっこなしだ!!勝負!!!」
カップの中にあったサイコロの目は4と4だった。
「スゴ。丁だよね?」
「キッシシ!縁起が良いね!」
何で当たるの?普通に考えてゴーパーヤバいな。
そんな感じで俺はカジノを遊び続けた。200,000グルぐらい儲けました。やったーー!!!
読んでいただきありがとうございました!!
何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!
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