第40話 ローズ
「どうするのだ!このまま話し合いで解決するつもりか?出来るのか!?そんな事が」
「ローズ。俺と一緒に……」
「どうせ!どうせ利用したいだけなんでしょ!?私の力が欲しいから!そんな事を……」
鎖で拘束されたローズは俺にダメージを与えてこなくなった。なので、ガードを解いてちゃんと話し合う事にした。どうすれば良いのかは分からんが、それでもどうにか解決の糸口は見えてきた。
「分かった。じゃあ、約束する。時間もないんだ、コッパーさんはきっと直ぐに終わらせるから」
「なにを約束するの?なにが言いたいの?」
「俺にはみんなを、モンスターを幸せにする事は出来ないし、ローズの代わりにダンジョンの中で寂しい思いをするエテルを救う事も出来ない」
「ふ、ふざけんなよ!!そんな事を言ってどうするの!?嘲笑ってるんでしょ!?私が抵抗出来なくなった途端にそんな!そんな事言いやがって!!」
俺は本当にダメだ。言っていい事と言っちゃダメな事の区別があんまり付かない。というか、ダメなんだろうな、って思いながら言ってしまう。でも、ローズにとっては絶対に悪い話じゃないはずだ。絶対。
「俺には人を救えない。でも、ローズに人間らしい生き方をさせる事は出来るかもしれない」
「私だけ幸せになれって……そんな事、そんな……」
「いつか、何年後かは分からないけど、俺がS級冒険者になって、それからもっと偉くなって、王様みたいになんでもかんでも自分で自由に決められるようになったら」
そしたら?俺がS級冒険者になる理由がここで生まれてしまった。諦める訳にも行かなくなってしまったという事だ。でも、別にそんなに難しい事じゃない。俺はいつまでも至って健康だ。
「ローズが自由に街を歩けるようにするから」
「…………」
「人間みたいに、自由に街を歩けるように」
問題は全然解決していないけど、でも、ローズにとっての幸せがもしあるのなら、それは自分が持っている悩みとは関係なく生きている意味が生まれるはずだ。
不幸と幸福の天秤。ローズの不幸を取り除く事が出来ないなら、俺はローズを幸せにする事を考えるべきだ。
「どう?ローズは」
「……」
「キッシシ!俺も」
「バカが!今は黙っておくタイミングだ!」
「バカー?俺がバカだってー?」
「そうだ!お前が!」
「【倒壊】」
スキルを発動すると、ローズの首元が歪むほど震え出して、最終的にはバン!と爆発した。
すると、スマホに連絡がやってくる。
『エテルが仲間になりたい、と声を掛けてきました。モンスターを使役しますか?』
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[モンスターを仲間にしますか?]
《はい/いいえ》
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戦闘が終了して、その表示が出たという事は、ローズは召喚獣になる事を決めたという事だ。
果たして何の為に説得していたのか?そんな事はもうすでに忘れてしまったし、元々なかったような気さえしてきたが、一応仲間になる事が出来た。
当たり前のように《はい》を押してみる。目的は達成した。
目の前にローズ、いやエテルが現れて、いつものように一言いう。
「わ、私で良いんですか?……こんな私で……」
これはエテルだ。ローズじゃない。きっと誰を仲間にしてもみんなおんなじ事を言うはずだ。
やらなければならない事が出来た。はぁ、絶対に大変だぞ。これは……ピコン!
『称号を獲得しました!スキルを解放する為にメールを開き、添付されたURLのサイトにアクセスしてください!』
ピコン!
多分エテルを召喚獣にした時に貰える称号だろう。ピコン!
さっきからピコン!ピコン!凄いな!
A級からいけるダンジョンのボスという事で、貰える経験値も凄いんだろう、後でちゃんと確認しよう。うむ。
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【エーテル】の称号を得ました!
おめでとうございます!
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これはエテルを召喚獣にした時の奴だな。名前からしてそんな感じがする。
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〈発動スキル【波紋化】〉
[スキルを解放しますか?]
《はい/いいえ》
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なんだろうこれ。そう思ったのでスキルを確認する。
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【波紋化】
自分と自分の周囲に一定の時間間隔でダメージを与え続けるようになる。自分に入るダメージは200で固定されているが、周囲に与えるダメージは攻撃ステータスを参照する。
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さっきのローズは周りだけじゃなくて自分にもダメージか入っていたのか。なかなか大変なスキルだが、コレ……あまりにも俺と相性が良すぎないか?
【鉄人化】と【波紋化】を組み合わせれば、勝手に相手が傷付いていく事になる。ピコン!
「羽山健人だっけ。名前」
「そう、羽山健人」
「で、イフリートは?」
「我はアルダードだ!」
「ちなみに俺はゴーパーだぜ?キシシ!」
「……約束は守ってよ?それのせいでここに居るんだから」
「守るよ。時間はかかるかもしれないけど」
ピコン!
「さっきから俺のレベル上がりすぎじゃない?何でこんなに上がるの?ゴーパーの時より凄いんだけど」
「コイツはA級のダンジョンの主だからな!しかも!奥地にあるレアダンジョンだ!きっと長生きをしているんじゃないか!?」
「2年ぐらいかな……私がダンジョンを守ってたのは」
「キシシ!それならおかしくなってもおかしくないな!」
2年も一人でダンジョンに居たのかな。やっぱりモンスターって大変そうだ。それも、俺には理解出来ないぐらいの大変さ。
レベルアップの終わったようなので、自分のステータスとかを確認しようかと思っていると、ここに強い風が吹いてきた。という事は、コッパーさんか?
「あらら?終わりましたか?」
「はい。おかげ様で」
「きっと神の御加護があったんでしょうね?お話は上手くいきました?」
「まぁ、一応。でも、やらないといけない事も増えちゃって」
「なんでしょう?聞いてもよろしい?」
これは言っても良い事なのか?モンスターが街を歩けるような社会を作る。そんな事を言っても良いのだろうか?
相手はS級冒険者。ここで変な事を言って干されたりしたらどうしよう。
「……私を歩かせてくれるんだよね?羽山くん」
「あらら?どこかで聞いた事があるような……」
「私はローズ。羽山健人に使役されたエテル」
「あらー!凄いわねー、貴方」
言われてしまった。となると、俺が言わなかったのがバカダサいじゃないか。うん、今からでも遅くない!俺も自分の口から夢を語ろうではないか!
「俺はエテルとか、みんなが人間みたいに生きてる社会を作りたいんです。それが出来るかは分からないですけど、頑張りたくて」
「わ、我らもだったのか!??
俺がそういうとアルダードはスゲー困惑したような声を上げた。どうせゴールを設けるならそれぐらい果てしない方がいい。それに、きっとみんなはそれを望んでいるんだろう。
「モンスターさんが?」
「はい。だって、みんな生きてるじゃないですか」
「あらあらら。凄い夢ですこと。神の祝福があると良いですね?ふふ」
……自分で言っといてアレだけど、こんなん本当に実現できるのか?ローズだけだったらまだなんとかなる可能性はあるけど、アルダードはヤバい。めちゃくちゃ身長高いし。
「あーー!!早いですよーー!!コッパーさーーん!!」
「アエク?来てくれたのね?」
「もちろんですよ!大丈夫でしたか!?」
「もちろんよ?ね?」
「分かってますよ!」
なんとなく分かった。「ね?」の後に見せたコッパーさんの、なんとも言えないような表情、多分好きな人に見せる表情を覗き見た時になんとなく浮かんだ。これからの展開。
そして、大きな声で「分かってますよ!」とアエクくんが言った時に確信に変わった。
……………………あぁー!こんな更地でキスするな!しかもめちゃくちゃ情熱的!
俺は、この二人の事を見ていたが見ないフリをしていた。あぁー!恥ずかしい!破廉恥だ!恋愛なんて!恋愛なんて破廉恥だ!!
読んでいただきありがとうございました!!
何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!
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