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第37話 怖がりなモンスター

 

 ゴーパーを追いかけながら街を走っていたが、とうとう観念したのかやっと俺の元へと戻ってきた。お互い大変じゃろう、追いかけっこは大変じゃ。


「キシシ!見つけたぞ、例の女」

「え!マジか。流石」

「さっきまでとは打って変わったな。まず最初に言うべき事があるだろー?」


 言うべき事。

 追いかけてごめん、か、見つけてくれてありがとうか。よく分からんし両方言っちゃおうか。


「追いかけてすまない。そして、見つけていただき感謝である」

「キッシシ!謝罪と感謝の気持ちを利用して、俺の要望を一つ聞いてもらうぜ」

「要望?」


 謝罪と感謝の気持ちを生贄にしたら何が召喚されるんだ?変な事じゃないと良いんだけど、まぁ、そこまでの事は多分言わないか。


「アイツの行方は誰にも教えるなよ?分かったか?」

「……えー、いや、今さっき報告せい!って怒られ?たばっかりなんだけども……」

「謝罪と感謝だぞ?ちなみに俺はお前をまだ許してないぜ、キッシシ!」


 嘘付け!どうせ楽しんでたんでしょ!?

 どうするべきかは少し迷ったが、ひとまずここはゴーパーの言う通りにしてみるのも手の一つなのかもしれない、と思った。

 理由は分からない。ただ、なんとなくそこそこ大事な理由がありそうな気がしてしまったからや。


「じゃあ、行こうか。多分誰にも言わない」

「絶対だな!?」

「てか、ずっと見てるから分かるはずじゃん。言ったら怒って良いよ、言わないけど」

「キシ!そうだったな!それなら着いて来い!」


 というわけでゴーパーの後ろをトコトコと歩いていく。太陽の光がキラキラと反射する金蜘蛛の身体はバリ目立つので、通行人はみんなコッチを見て不思議そうな顔をするのだ。

 そりゃそうじゃ。って感じだな。見られるだけなら良いけどね。


 歩いていると、街の外れの廃墟みたいな、誰も住んでないであろう草木がボーボーに生い茂った場所に辿り着いた。

 俺は普通に中には入りたくなかったが、ゴーパーが前に進んでいくので仕方なく入る。

 もう十数年は放置されているのだろうか?窓ガラスは割れているし、壁から謎のコードがぶら下がっているし、雨を流す雨樋も同様にぶら下がっている。二階建ての廃墟。

 俺も家建てるなら二階建てにしようかな、いつかはそれもあり得そうだし。

 当たり前みたいに俺は玄関へと入っていった。ただ、コレって実は犯罪なのでは?不法侵入者か?今?


「お邪魔しまーす」

「え?……どうして?」

「キッシシ!コイツは俺の使役者だ。安心して良いぜ、馬鹿だからな」

「オイッ!馬鹿ッ!って!誰か馬鹿だい!」


 戯けながらゴーパーに突っ込む。どう考えても、彼女が俺に、前に見た、水色の、作り物でサラサラの髪をしていて、どこかから投げ出している白いワンピースの女性。

 瞳の色は、ミルクティーみたいな色をしている。何故?

 前に見た時は子供だと思っていたような気もするけど、今見ると思ったよりも大人だ。というか、モンスターっていうよりも人間だ。どう考えても。


「こ、怖い……怖い!!辞めて!」

「え、あ、ごめんなさい。馬鹿ってそういう事じゃなくて!」

「黙って!!どうしよう!どうしよう!!」


 彼女が、自分の身体を世界から守るようにギュッと小さくなり、「消えて!!」と言った。

 その言葉の後、俺は自分の身体に攻撃が当たった事を確認する。それは運良くゼロダメージだった。

 しかし、玄関のガラスはバリンバリンに割れてしまう。その音はきっと遠くまで聞こえているのだろう。


「ヤバい!装備しないと!」

「キッシシ!報告する必要なんてなくなるかもな!」

「そんな事を言ってる場合か!!バグっているんだ!力を制御出来ていない!」


 俺は5億グルを纏う。そしていつものようにガードの体制を取っていたが、彼女はそれでも尚まだ周囲にダメージを与え続ける。

 床の板は剥がれ、壁に飾ってあったカレンダーは紙になり宙を舞い、天井の照明も落下し、とにかくめちゃくちゃだ。

 ガードをしている俺には時々数百のダメージが入ってくる。ガードしているのにこんなにダメージがあるのか。


「消えて!消えて!消えてーー!!!」

「健人!ここは一度この家から出て行こう!ゴーパー!落ち着かせられるか!?」

「キシシ!出来るかどうかは運任せだ!出るなら早く出て行け!」

「ごめん!それじゃあ、落ち着いたらまた!」


 俺は急いでこの家を抜け出す。騒音は外にも響いてきて、何かあった雰囲気を出している。

 幸い、幸いにもこの周辺にはあまり家屋が建っていない。寂れた街だ。まだ、まだ報告しないでも自分達でなんとか出来るかもしれない。


「いやぁ、大変な任務(ミッション)だ」

「本来ならもう終わっている!S級冒険者に報告するすれば良いだけだからな!それに!お前ならアイツも倒せるんじゃないのか!?」

「今の感じで言うと出来そうだけど、街中であんなのやったら大変な事になっちゃうよ?だって数日間も戦闘続ける事になるんだし」

「報告はしないのか?それが一番楽だぞ!」


 ゴーパーと約束してしまったから。それはあるが、シンプルに下衆な好奇心で、あの人がどんな感情でここに居るのか?また、どんな感情でダンジョンを抜け出したのか?それが気になる。

 というのも、俺にはモンスターが分からなくなってるからだ。あまりにも出来過ぎなAI過ぎて、俺には生き物にしか感じない。ちゅうか、普通に人間だ。


 それでも彼らを倒す気持ちはある。理由は分からない。それでも俺はそれをする。

 でも、もうちょい理解した上で戦いたい。このままじゃ、目を閉ざしているだけだ、いや、目を背けているだけ。


「報告はしない。どうせいつかバレるから、俺はこのままここで戻るように説得してみる」

「そうか!」

「うわぁー!はぁ……はぁ……」


 アルダードと会話をしていると、瀕死になったゴーパーが俺の所へと帰ってきた。どうやら運が悪かったらしい。


「また明日だ……明日になったら落ち着いてるってさ、キシシ」

「話せたの?」

「キシシ!俺はラッキーだからな、なんとでもなるんだよ」


 すごい……めちゃくちゃ頼りになるじゃねーか、流石神様的なヤツ。

 ゴーパーのおかげでなんとかなりそうな雰囲気を感じて、俺は一度みんなの所へと帰る事にした。これはまだまだ長引きそうだし、みんなに見つかる前に俺がなんとかしてあげないと、大変そうだったし。


 ○○


 ーー私は、私はとんでもない事をしてしまっている。

 本来の場所から外れ、人間がたくさんいる街の中で。

 だから、人間が私の所へ来た。

 でも、そんな当たり前に動揺してしまった。


 落ち着いた私はもう一度自分を省みる。私は、私は本来は人に殺されるのが仕事のはずだ。

 それなのに、どうして自分から逃げようとしているんだろう。


「♪きの〜おの〜きお〜くを〜わすーれさーせて」


 空虚なボロボロの部屋で私は歌う。理由は、現実を忘れる為。どうしてこんな私になっているんだろう?

 もっと非情で人間じゃないみたいな私だったら、当たり前のように、人間なんかに憧れを持つはずがなかったのに。

 私の姿はあまりにも人間だ。だから、私は人間になりたい。


読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!

ランキングに乗りたいのでブックマークや評価などしていただけると嬉しいです!他の人に広めてもらえたりなども嬉しいです!


ブックマークや評価等とても嬉しいです!ありがとうございました!

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