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第24話 ブラックジャックで脳内バースト

 

 カジノは音がうるさい。そして、目がチカチカするような装飾がギラギラで、俺に相応しくない場所である事を教えてくれる。


「せっかくなので遊んでてください。有益な称号もスキルも得られるので。ルールが分かるゲームはありますか?そもそも来た事は?」

「来たことはないです。まぁ、でも、ルールが分かるのがいくつか」

「そうですか。それなら私はブラックさんと会ってきます」

「あぁ、じゃあ、えー、待ってれば良いんですかね?」

「はいそうですね」


 どうせ会うなら俺も一緒に行った方が良いのでは?

 俺がここにいる理由は、至ってシンプルなモノで、選挙に協力してくれたお礼をする為だ。

 結果的には大勝してしまったので、お礼も単なるお礼じゃダメだ!みたいな事をアーローさんがここに来るまでの車内で悩んでいたが、どんなお礼をする事になるのだろうか?

 握手なら出来るけど、サインは出来ない。自分のサインみたいな物は作ってないしな。


「あ、すみません、ブラックジャックってどちらでしょうか?」

「案内しますよ。こちらです」


 カジノの中で明らかにディーラーみたいな格好をした人に話しかける。俺はブラックジャックぐらいしか知らないし、それで良いか。みたいな感じで話しかけた。

 というか、なんか、カジノのあちこちに蜘蛛みたいなのが書かれている?どうしてそんな物を書くのか不思議だ。もしかして、これも金蜘蛛?


 この世界には金蜘蛛を信仰している。

 モンスターの金蜘蛛は遭遇率こそ低いものの倒せば高い経験値が貰えるし、運が良ければ価値のある心臓を落とすという理由で、次第に祀られるようになったのだ。

 このカジノの要所に金蜘蛛の細工が施されている。金の蜘蛛のオブジェ、金の蜘蛛の巣、絨毯の蜘蛛、金蜘蛛がドロップする、金卵などなど。


 色々な人がいるカジノ。なぜかパンイチの人もいるし、見るからに高そうな装飾で全身を着飾っている人もいるし、スーツ姿のサラリーマンみたいな人が大量のコインを持っていたりする。謎の空間だ。狂気に満ちている。


「こちらがブラックジャックです。次のゲームからの参加となります」

「はい、ありがとうございます」


 ブラックジャックのルール。

 たしか、貰ったカードの数字を合計した時に『21』に近い方が勝ちのゲームだ。対戦相手はディーラー。

 ディーラーは17以上の数字になるまでカードを引き続ける。

 キング、クイーン、ジャックの三つは10として扱う。エースは1か11のどちらかとして扱う。

 その他の数字は全部見たまま。スペードの5なら5。ただし、『21』を超えてしまうと、その時点で負けてしまう。


「それではお客様、コインをお賭けください」

「あ、そうか……そうですよね、はは……ちょっとコインに換えてきます」

「こちらでどうぞ」


 そう言われて目の前に差し出されたのはお会計の時に使う謎のタブレット。

 それにいつものようにスマホをかざすと、いくらコインに換えるのかの入金画面へと変化した。

 どれぐらいが相場なのかは分からなかったので、ひとまず10000グルを100コインと交換する。どうせこれぐらいならすぐ稼げるはずだ。冒険者だし。

 さっきデータで交換したコインがディーラーさんから俺の手へと渡された。

 男性の手だったが、ネイルサロンにでも行ってなければあり得ないほど綺麗な爪をしていて、なんとなく圧倒される。ここは本当にカジノだ。


「それではカードを配ります」


 俺以外に4人座っているテーブル。それぞれに2枚カードが配られる。周りに見えないようにカードを親指でグニャリと曲げ、数字だけを覗き込む。

 それはダイヤの2とクローバーのジャックだった。

 つまり、俺の今の数字は『12』となる。普通に考えればこのままの手札で勝てるはずがない。

 ただ、もし仮にジャック、クイーン、キングのどれか、つまり絵札が手札に来てしまった場合、数字が『22』になってその瞬間負けてしまう。他にも10でも負けてしまう。


「コインをベットしてください。そちらの方から」


 あら?そういえばそうだ。

 俺が知ってるブラックジャックは、最初にベットを済ませ、その後はただカードを引くか引かないかの二択を選ぶゲームだ。

 今回はカードが配られた後に選択する事になっている。それだけの違いであればまだ良いが、これ以外にも俺の知識と違う部分があったらどうしよう。

 ゲームのルールがよく分からなくなり悩んでいると、隣の貴婦人が100コインをベットする。

 しかし、その奥のサラリーマンが200をベット。奥の奥の主婦も200、その奥も200。俺の番だ。


「お客様は100コインをお持ちになっています。増やしますか?」

「コレって増やした後でも降りられるんですか?」

「もちろんです」

「なら増やします」


 さっきと同じ作業をしながら、俺は自分の手札が勝てる手札なのかどうかを確かめる。

 大前提として、俺がバーストする可能性はそこまで高くない。山札の内、絵札プラス10とそれ以外だとそれ以外のカードの方が多いからだ。

 高くはないが普通にあり得はするな。

 カードは何度でも引ける。次のカードがエースだったとしても、可能性は残る。

 というか、そもそもこれはブラックジャックが引けるまで勝負を降り続けたら絶対に儲からないか?あまりにも勝負から逃げ続けるとテーブルに付かなくなるとか……今はそんな事はいい。


「どうなさいますか?」

「うーん、じゃあ、ベットします」

「分かりました。それでは皆様カードをオープンしてください」


 俺はついさっき手に入れた200コインをディーラーの方へと差し出しながら、みんなの手札を見る。

『18』、『19』、『19』。

 どれも強い。みんなはカードを引かないだろう。というか、これは勝ってもあんまり美味しくないかもしれないな。

 普通にディーラーがバーストすれば良いんだ、それに、冒険者ならお金はいくらでも貯まる。その分頑張ればいい。


「それではカードを引かれる方はテーブルを叩いてください」


 俺以外の人はみんな静止している。ただ、俺はテーブルを叩いた。はぁ、緊張して吐きそうだ。

 するとディーラーから新しいカードが配られるそこに書いてあったのは、ハートの4だ。つまり、俺は『16』という数字を持っている事になる。

 これではディーラーがバーストするのを祈る以外の手がない。次のカードでバーストする可能性は跳ね上がっている。

 引くのか?それとも、祈るのか。


「カードを引かれる方はテーブルを叩いてください」


 その言葉を聞いた俺の指は反射的にテーブルを叩いていた。そして、またディーラーからカードが配られる。

 はぁ、こんなのマジで初めてだ。ずっと逃げてきた緊張だ、高揚だ!頭がおかしくなりそうだ!

 配られたカードを捲る。そこには、ダイヤの5が描かれていた。


 うわぁ……うわぁー!ヤバい!ヤバいヤバい!!鳥肌が!な、なんか泣きそうだ、涙が込み上げてきた!!!吐く!

 ヤバい!おかしくなりそうだ。

 異常な状態の俺とカードを交互に見たのはサラリーマン。少しニコッとしたのは何故だ、面白いか!!見ものか!!ならとことん見ていけ!!


「カードを引かせていただきます」


 ディーラーはカードを引いていく。ブラックジャック以外!『21』以外!よろしく!お願いします!神様!あと、金蜘蛛様!!

 知らず知らずに手は前へ。

 握る掌は自分の片手。

 後戻りはもう出来ない博打。

 不思議なほどに幸福な時。


 ディーラーの一枚目、それはダイヤの10。もう考えられない。でも、エースは来ないで。本当に来ないで!!

 勿体ぶったディーラー。そのディーラーが捲ったもう一枚のカードは。


「ダイヤのキングです。お客様、おめでとうございます」


 ……頭が真っ白になった俺は、両方の腕を空へと突き上げていた。ヤバい、ヤバい、ヤバい。馬鹿になるわ!こんなんやってたら!!!!馬鹿になってしまう!!

 異常な興奮の中で、俺はまた一つこの世界の事を知った。

 これが、これが『ギャンブル』なのか……



読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!

ランキングに乗りたいのでブックマークや評価などしていただけると嬉しいです!


ブックマークや評価等とても嬉しいです!ありがとうございました!

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