表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/107

第18話 闘技場で祀られている金蜘蛛とはなんだ

 

「こちら闘技場のエントリー会場です!お客様は初めてのエントリーでしょうか?」

「あ、はい。そうですね」

「それではですね!住所とご氏名をこちらに記載いただけると助かります!」


 俺は言われた通りに書類に住所と名前を書く。

 これだけでエントリー出来てしまうのだろうか?冒険者の証明書とか要らないんですかね。

 この前にアーローさんから手渡しされた冒険者証明書。

 運転免許証みたいな形をしていて、俺の顔写真とか生年月日とかいろいろ書いてあるカード。

 お店で見せると割引される事があるよー、みたいに言ってたけど、ここでこそ必要になるのでは?


「お時間取らせてしまって申し訳ありませんでした!お客様が冒険者である事の確認が取れましたので、どうぞ!」

「あ、ありがとうございます」

「装備はこちらでご用意されて頂いてますので、更衣室の方でお好きな武器防具をお選びください!鍵はこれです。22番目ですね」

「分かりましたー。ありがとうございましたー」


 よく分からないが、もうすでになんかに登録されているらしい。

 名前と住所を言っただけて冒険者だと分かってくれたという事は、つまりはそういう事だろう。

 そっか。そういえば書類を整理している時に死ぬほど名前と住所を書きまくった覚えがあるな。それか?

 病院の廊下みたいに簡素な道を歩いていると、更衣室がズラーッと並んでいる。

 俺は22番目の鍵を持っているから、割りかし歩く事になりそうだ。

 なんて思っていたら、目の前には22があったのでそこに入る。


 羽山健人は自らの足で進み始めた。これから先に待ち受けている運命の事も知らずに。運命とは不幸ではない。

 でも、成功は幸運ではない。


 着替えが終わってしばらく待っていると、「準備が整いましたら控え室までお越しくださーい。場所が分からなければ近くの人に聞いてくださーい」

 との声が聞こえてきた。

 控え室まで向かっている、なんだ?

 そういえば俺は人と戦うのは初めてかもしれない。闘技場というと観客もいるのだろうか?

 いつものように時間を掛ければ絶対に勝てるはず。しかし、時間を掛ければ掛かるほど周りの人間には嫌われそうだ。

 闘技場に来る人なんて血気盛んな人しかいないだろう。


「はぁ……いやだー」


 メンタルを回復する為に愚痴を呟く。これは実際効果的。

 控え室に入ると、数十人ほどの人が素振りなどをしてその時を待っていた。女性、男性、マッチョ、細い人、魔法使いみたいな人、なんか謎に露出の多い女性、とほとんど裸の男性。

 彼らは皆俺を見る。そしてビビる。

 なぜビビっているのか、俺にはよく分かっていなくもなかったが、その内の屈強な男が呟いた言葉で確定的になった。


「ハンマー……」


 明らかに引かれているのを感じる。

 この場所にハンマーで来るなよって思われてそう。


「ねぇ」


 それだけだったらまだ良かったが、ついに絡まれてしまった。

 話しかけてきたのはクレイモアのような剣を持った重装備の女性。

 兜を頭に小脇に抱えていたので、綺麗な金髪がよく見える。あと、死んだ魚の目も見えた。


「はじめまして。どうかしました?」

「どうしちゃった?ハンマーなんて持ってさ」

「仕立て屋に勧められただけですよ。元々冒険者志望じゃなかったので」

「ん?ていうか、アレ?リジェネの人?」

「あ……まぁ、そうですね。おそらくそうだと思います」

「なんか珍しい、ていうか本名で活動してる人だよね?なんだっけ?あんまり思い出せない。普通の名前だよね?」

「羽山健人です。あなたの名前は?」

「私はメイル。知らない?」

「すみません、あんまり冒険者詳しくなくて……」


 名前を聞かれたから普通に聞き返しちゃったけど、冒険者に名前を聞くのって地味に失礼っぽいな。

 人気商売だろうし、同業者なんだから知らないなら知ってるフリしとくのが良いっぽい。


「ふーん、とりあえずよろしくね。面白そう」

「僕の戦いはつまらないですよ」

「……面白そうじゃん」


 変に期待しないでほしいな。

 実際マジでつまらない戦い方しかしないから、変に拍子抜けされるのも嫌だわ。

 彼女は小脇に抱えていた兜を頭に被る。そして、俺から離れていった。

 それからしばらくすると始まりのゴングがなり、部屋の中から二人が闘技場へと出て行く。

 本当に始まるみたいだな。もし仮に《リジェネ》が手に入ってなかったら、俺はここで逃げ出してたかもしれないな。


 せっかくなので初戦の二人の戦いを見ていると、中々発熱して見物としてはそこそこだったが、簡単な駆け引きで勝敗が決まってしまったのを見て少し萎える。

 みんなせっかちなんだな。


「あの、羽山健人さん。出番です」

「あ、僕?対戦相手とかって」

「それはステージに上がるまで教えられません。さぁ、こちらへ」


 俺はスーツ姿でサングラスをかけた男の後ろを歩く。対戦相手はさっき話したメイルだろう。

 なぜなら、俺と同じようにスーツ姿でサングラスをかけた男に話しかけられていたからだ。

 普通の剣を使う相手であれば相性が良い。ガード、もしくは【鉄人化(スティール)】を使えば勝てる。


「大変お待たせいたしました!次のカードが決まりました!次の戦士は闘技場の王!メイル!!」

「「うぉーー!!!」」

「そして、その次。新進気鋭の冒険者!羽山!健人!!」

「「……」」


 シーーーン。

 こんなにサービス精神ない事ある?知らなくても、嘘でも盛り上げといてよ。

 そんなことを思っていた俺の耳に、大衆のクスクスと言った笑い声が聞こえてくる。

 余所者を嫌う空間か。

 受け入れられていない。

 なるほど、それなら気兼ねなくガードし続けられるな。俺が勝つまでクソつまらん試合を見せてやる。

 ステージに上がって、兜を被ったメイルと対峙する。もう既に剣を構えて臨戦態勢って感じだった。


「勘違いするなよ。アイツらが笑っているのはお前のせいじゃない」

「え?」

「本名で冒険者登録する奴なんて見た事がないからな。見た事がないから受け入れられないんだ」

「……へぇ、そうなんですね」

「せめて試合で取り返せ。この場所はそれが全てだ。痛みを背負う覚悟は出来ているか?」

「いや、まぁ、よろしくお願いします」


 さっきまでの空気とは違う。

 張り詰めている。殺意を向けられている。

 なるほど、確かにアルダードやデリビーはAIだったんだな。これだけヒリつく感覚は初めてだ。

 俺もハンマーを構える。すると、クスクスとした笑い声はさらに大きくなった。

 やっぱり俺を見て笑ってるな。名前がどうとかじゃなくて。

 まぁ、別にいいんだけどさ。めんどくさいな。


「それでは両者!目をつぶって!金蜘蛛(かなぐも)に祈りを捧げなさい!」


 金蜘蛛とはなんぞだ、と思いながら目を閉じる。

 試合が始まったらまずはガードをする。もし、攻撃出来る隙があったら最小のリスクで攻撃をする。

 ダメージを喰らいすぎたら【鉄人化(スティール)】をする。

 そういえば、アルダードを召喚する事って出来るのだろうか?

 俺が【鉄人化(スティール)】している間、アルダードに戦ってもらえばそれは無敵なのでは?


「辞め!両者見合って!」


 俺は目を開ける。

 見合って。とか言われたが、メイルさんは兜を被っていて瞳が見えない。


「一言!」


 一言?なにそれ、なんか謎の作法がたくさんあるんだな。闘技場って。


「ここで死んでも悔いはない」

「……」

「君も一言!」

「まぁ、出来る限り頑張ります」


 また笑いが起こる。これは、笑ってもいい奴だと思われてそうだな。

 それが良いのか悪いのかは分からないけど、有名になるとはそういう事だろう。

 そういうリスクとかあんまり考えずに冒険者になっちゃったなぁ。はぁ……


「それでは!二人に金蜘蛛の祝福がありますように!はじめ!」


 ゴーン。と大きなゴングの音が鳴った。


読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、どうか次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定です!

ランキングに乗りたいのでブックマークや評価などしていただけると嬉しいです!よろしくお願いします!


ブックマークや評価等とても嬉しいです!ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ