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第6話 アッシ!

 

「これからどうするんですか?」

「これからですか?まずは冒険に出てみましょう。そこでボスを倒して、それから先はまたトレーニングですかね」

「ボス?」

「最初のダンジョンのボスはデカゴブリンです。私もラッキーも初見で倒したので、貴方も倒れるはずです」

「……いや、俺はゴブリンすら倒せないよ?前にやった事あるけど」

「その時は無職だったんでしょ?無職はゴミみたいな能力ですからね」


 言葉つよ。

 それにしても急展開すぎて困るなぁ。なんでそんなに生き急ぐんですか?まずは普通に冒険するだけでもいいはずだ。

 もちろん、俺が冒険者としてスタートを切ったのはあまりにも遅すぎる。けれども、そんなにいきなりボスと戦ったりして死んだりしないか?

 どうにかして逃げられないか。


「あの、冒険者って死んじゃったりとかもあるんですかね?あんまりそういう話は聞かないですけど」

「基本的にはないですよ。瀕死になればモンスターは攻撃を止めてくれます」

「へぇ、なんでですかね」

「そういう風になってるんです。この世界は」


 そんな事あるか?

 この世界には良いモンスターしか居ないという事か?


「じゃあ、【転移(テレポート)】!」

「う、あわあぁー!」


 いきなり過ぎるんだよ!なんだ!はぁぁ!

 俺は前と同じように青白い光に包まれたと思ったら、例の始まりの場所に辿り着いた。前と違って武器を持ってるし、ちゃんと冒険者になっている。

 戦っていいんだな、ここでモンスターと戦ってもいいんだ。はぁぁ!緊張してきた。


「お、あちらにスライムが出てますよ。準備運動がてら見せてください」

「はい。え、でも、僕はハンマー経験ないんですけど」

「それも含めてです。あまりにもセンスがないなら別の職業を探しましょう」

「それもダメだったら?」

「あり得ませんよ。トリガーラッキーさんには運命が見えてるので」


 ずっと思ってたけど、運命が見えてるってなんなんだ?敵が出てくる前に銃を発砲していたのは見ていたけど、それによって運命が、っていうのは分からん。

 青空の下の草原。いやぁ、良い場所やなぁ、はい。


「運命ってなんですか?」

「さぁ?でも、まぁ、見えてるのでしょうがないですね」

「はぁ……」

「どうでも良いので。早く戦って来てください」


 背後を叩かれるようにして、前へと進んだ。まぁ、一応スライムを倒した事はある。最弱だし、子供でも倒せる。

 せっかくだしスキルでも使うか、どんなのがあるのかは知らないけど。

 一歩前に進む。瞳も顔もないから視線が分からない黄色のスライムもコッチに進んで来た。


「【圧死(アッシュ)】!!」


 そう言いながらハンマーを上から振り下ろす。随分と物騒なスキル名だ。

 その物騒なスキル名が似合うような状態になったスライムを見て、少しビビる。あぁ、モンスターを殺してしまった……


「強いですね。でも、これだとリジェネが活きませんね」

「まぁ、これ、死んじゃったんですかね?」


 子供の頃は得意だった虫を、大人になると苦手になるみたいに、子供の頃はなんとも思わなかったモンスター討伐も、大人になると罪悪感が湧いてくる。

 殺生はいけませんよ、うーん、可哀想に。とか思ってみたり。


「死んでも命の元はどこかに行くそうですよ?」

「そうなんですか?」

「だそうです。まぁ、モンスターの事ですからね。深く考える必要なんてないですので」


 ナムサン。圧死したスライムの無念を弔うように、心の中だけでお手手を合わせてそう唱えた。

 しかし、それにしても簡単だったな。運動してなかったから衰えてると思ってたけど、思っていたよりも体力があるんだな。

 ちょっとだけリジェネの力を試してみたいような気持ちもあったんだけど、痛いのは嫌だからまぁいいか。


 健人の振りかざしたハンマーはその辺にいたスライムを、消滅させた。

『ハンマー使い』。それはハンマーを相手に思いっ切り叩きつけるだけの職業。タンクとしては低い防御の値と、アタッカーにしては低い攻撃の値。

 もちろんヒーラー的な役割も出来ない。仲間にバフをかける事も出来ない。

 どうしてこんな職業があるのか、それは冒険者の中でも長年の謎だった。


「まぁ、これだけ出来るのなら十分ですね。後は進みながらレベルを上げていきましょう?」

「レベル……俺って今何レベですか?」

「自分でステータス見てくださいよ」


 そう言われたので、道を進みながら自分のステータスをスマホでもう一度確認してみる。

 基本的なステータスはさっき見たから、詳細なステータスの画面を開くと、そこには知らないスキルが沢山載っていた。


 ________________


【攻撃スキル:圧死(アッシュ)

【攻撃スキル:(プッシュ)

【攻撃スキル:破壊(デストロイ)

 ________________


 随分と物騒な名前だな。こんなんだったっけ?冒険者のスキルって。もっとキラキラしているイメージだったけど、全部なんか怖いんだけど。


 ________________


【補助スキル:カイフ】

【ベーススキル:リジェネ】

【ベーススキル:筋力増強】

【ベーススキル:一人でお仕事】

【ベーススキル:体力増加】

【ベーススキル:MP増加】

【ベーススキル:状態異常耐性】

 ________________


 なんだ最後のスキル。補助スキルで回復のカイフがあるのは嬉しいけど、いや、リジェネがあるからそれすら要らないのか?

【一人でお仕事】というスキルをタッチしてみると、その説明が出てくる。


 ________________


【一人でお仕事】

 一人でクエストを受注した時や、パーティに仲間ががいない時に自らの全てのステータスが二十%上昇する。

 ________________


 スゴ。二十%って相当な上がり幅だけど、そんなに上がっちゃって良いのかな?でも、一人でやらないといけないのに二十%って普通に弱くない?

 だって、仲間がいたら合計ステータスは二倍にも三倍にもなるわけだし、行動回数も増えるんだから、強そうで弱いスキルな気がする。


「それで?何レベルだったんですか?」

「あぁ、それは忘れてた」


 ________________


【羽山健人:26歳】

【レベル:2】

 ________________


「レベル2でした……」

「まだその職業になったばかりですからね。それに、元々の分の上乗せもほとんどなかったようですね」

「まぁ、冒険者じゃなかったんで」

「さっきの戦闘でレベルが上がったようです」


 普通に考えてレベル2でボス戦うなんてあり得ないと思うんだけどなぁ。

 めちゃくちゃだなぁ。とか思いつつ、もうやるしかないという気持ちに切り替えた。


 ○○


「我々の力は強大だ!それをもってして世界を征服する!」


 とあるダンジョンに住まう落第冒険者の集団。彼らは怪しげな話をずっとしていた。


「このままでは無限に戦いを続けるだけだ!帰って寝る為に、頑張って世界を征服するぞ!支配構造を変化させるぞ!」


 落第冒険者には、ダンジョンへと出て行く資格がない。それなのに彼らはダンジョンに居た。

 街に帰っても捕まるだけの彼らには、安らかに寝る為の場所もない。


「出来もしない事をペラペラペラペラ!!さっさとメシでも集めてこいよ!」

「あ、ごめんなさい……アルミアさま」


 アルミアという肌の露出が非常に多い女性。赤い髪型と、胸と腰にだけの付けた最低限の防具が輝く。

 彼らの夢は街に帰る事。ダンジョンで人畜無害にただひたすら生きているだけの落第冒険者達だった。



読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、どうか次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定です!

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