第94話 お前はお前
「アルダード。キングをあっためたげて。【召喚】」
「我にも役割が有ったか!任せるが良い!!」
今は生きてるけど、このまま放置してたら死んじゃうだろうから、俺はキングをアルダードの炎で温める事にした。
はぁ、改めてこの街並みを見てみると、本当に全部ボロボロだ。街路樹も薙ぎ倒されちゃってるし、そもそも水浸しだし。怒られたくないなぁ……
「ストーム……あの、前みたいに瓦礫とかのお掃除とか出来る?」
「もちろんだよぉー!アイアイサー!」
瓦礫の除去に関しては、ストームが全部終わらせてくれるだろうけど、その他の色々な事に関してはどうすんだろ?
賠償金とか払うんですかね?スッゴイ額になりそうだね。ね。
トリガーラッキーさんが提案した、召喚獣に復興を手伝ってもらおう、という案。この事も見越してたのかな?だとすると本当に怖い力だ。怖い怖い。
「羽山健人!!キングが目覚めたぞ!」
「お、良かった」
「……ハァ……ハァ……」
目覚めたキングは寝転んだ状態のまま深く息を吸い込み、自分が生きている事を確かめる。不思議な感覚だろうな。何にも見えない内に、何にも聞こえない内に倒れてしまっただろうから。
「聞かせてくれる?理由」
「……そう慌てるな……理由……」
「そういう約束だったよね」
「…………」
キングは倒れ込んだまま、空を仰ぐ。綺麗な空だ、虹も出てるし。
「……知っているだろう?シリン」
「そりゃぁまぁ」
「我の母親はアイツの手によって、デカゴブリンの肉体を胴体の一部に移植させられた。いや、正確には、我の母親は自分の肉体の一部をモンスターに変える事を望んだ。だから……」
「ふーん」
この身体の大きさってベーススキルの影響じゃなかったんだね。流石にそこまでは出来ないか、だって人間の肉体をデカくするって中々に難しそうだし。
ハットとキングが仲良さそうにしていたのって、そもそもキングの母親とハットに関係があったからなのかな?
「だから我は」
「ハットって実は良い奴だったりするの?」
「……良い奴?……」
「キングのお母さんとハット達に繋がりがあったって事でしょ?それでキングもあの人達と仲良くしていた……勘違いしてる?俺?」
うーん、ギリ許せないかもしれん。その程度の理由でハットに協力していたって言われても、ギリギリ許せそうにないな。
なんかもっと複雑な理由があるのかと思ってたんだけど、子供の頃からの付き合いって理由で守ってたんなら、ちょっとなぁ。
「…………お前は我の出自を気にしないか?」
「まぁ、クインとかと戦った事もあるし」
「そうか」
ハットに脅されてたとか?言う事聞かないとお前がモンスターの子供だって言うぞ。みたいな感じで。
……それなら許せるかなぁ。いやぁ、微妙。そもそも、ブラックさんもみんなもあの儀式に関与しちゃってるせいで、許す許さないのラインがガバガバだ。
よくよく考えてみれば俺が決める事でもないか。色々と事実が明らかになった後で、みんながどう考えるのか、が、キングとかハットの今後を決まるんだろうね。
「人間として生きられてるんだから良いじゃん」
「は?」
「モンスターとして生まれてたら権利すらないんだし」
「……我は敗者だ」
「それなら手伝ってよ。俺はモンスターが人間みたいに生きられる社会を作りたいんだ」
「我に何をしろと言うのだ」
「うーん、そう聞かれると困るけど、とにかく協力はしてくれそう?どう?」
ちょうど良いと言えばちょうど良いな。キングってみんなからも慕われている訳だし、俺とのイザコザをちゃんと解決しました感を出せば、モンスターの子?である事も利用出来そうだ。
……なんか悪い奴みたいになってるけど、それもこれも全ては約束を守る為、使えそうな物はなんでも使わないと。
「協力……」
「あらら?お二人ともお元気でしょうか?」
「あ、コッパーさん」
「見てましたよ?勝ちましたね?羽山健人さん」
「ありがとうございます。見てたんですか?」
「はーい。ずっと見てましたよ?」
あの大嵐の中ずっと戦いを見てたんだ。やっぱりS級冒険者は違うね。ちょっと一段上の能力を持っているみたいだ。
「おい。羽山健人」
「え?キング?」
コッパーさんと話していると、キングが無理やり身体を起こして俺の顔を、いや、目をキッと睨んできた。ん?何?
そんなに悪い事言った?やってしまいましたか?
「お前には俺の悩みは分からないか」
「モンスターの子供だって事?」
「そうだ。俺はこの事実にどれだけ悩んだと思っているんだ。これによって人生がどれだけ左右されてきたと思っているんだ」
難しい話か?めちゃくちゃ正直な話をすると俺にはキングの悩みがあんまり分からない。だって分からないし。
でも、ここで正直に分かりませんっていうのは間違ってるんだろうなぁ。どうしよ?返事に困る。
「うーん……」
「どうなんだ!!オイ!」
「あららー?大丈夫かしらー?」
「コッパーは黙っていろ!!オイ!聞いているんだ!」
「そうだなぁ。まぁ、なんだろ。正直俺にはよく分からないけど、みんなキングを慕ってるよ?みんなキングの事好きだと思うよ?」
「私もキング好きですよ?ふふ」
「俺も好きになったよ。ちょっとしか一緒に居ないけど」
悩みが、とか、正直よく分かりません。人の気持ちなんて理解出来ません。
それだけだとあまりにも不誠実過ぎるからそれっぽい事を並べてみたけどどうじゃろ?刺され!キングの心に刺され!
「そんな事を話しているんじゃないんだ。そんな事は」
「お前は自分を受け入れろ!!我らは自分を受け入れてるぞ!!」
「アルダード?」
さっきまで黙っていたアルダードが口を開いてくれる。この問題はアルダードの方が良い感じの事言ってくれそう。
「イフリートが我に」
「黙れ!!人は他人にはなれないのだ!我らは我らとして生きていく他に道はない!!等身大の自分を見つめろ!!等身大のお前は惨めなのか!?」
「俺は……惨めだ」
「これからも自分は惨めだと思いながら生きていくのが等身大のお前なのか!?」
「……」
「お前はこれからも自分を惨めだと思いながら!!どれだけ成功したとしても他人に成り代わりたいと考えながら生きていくのか!!?」
「…………」
「それならその姿がお前の等身大だ!受け入れろ!!」
うーん、なんか酷い事言ってない?止めた方が良いのか?あんまり強く言いすぎて協力してくれなくなっても困るんだけど、どうやってこの空気を変えれば良いのか分からない。
「我は気高い。我は気高き王だ。自分を惨めだと思い続けるような器ではない!」
「それならそうだと最初っから言え!!お前はお前だ!!」
「そうだ。我は、我にいかなる背景があろうとも、我が我である事に変わりはない!」
「あらら?立ち直ったのですね?」
「……キング」
「なんだ羽山健人」
立ち直ってくれてありがたい。アルダードの言葉のどれがキングの心に刺さったのかは分からないが、何かしらが刺さってくれてありがたい。
「俺を助けてくれてありがとう。そして、もう一回ちゃんと頼むよ。俺に協力してくれ。モンスターが人間みたいに生きれる世の中を作ってくれ」
俺はキングが前に俺にしたように、土下座をして協力を頼み込んでみた。どうせ誰も見てないし、それに相手は王様だから土下座ぐらい……うん。
「……良いだろう!!お前が望むように、我もモンスターが人間のように生きられる世の中を目指すとしよう!……我自身の為にもな」
「ありがたや〜」
はぁー、これでやっと終わりって感じ。
読んでいただきありがとうございました!!
何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!
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