第93話 神様の力
ゴロゴロゴロゴロと唸り出した空は、神様がそこに居るみたいだった。ピカピカと光って、その光が連なって、蛍光灯のように、太陽のように眩しくこの世界を照らす。
闘技場に溜まった水は空を反射してキラキラと光る。異常だ。この世界の終わりみたいな景色だ。
俺はそれを眺める。疲れ果てた王も空をじっと眺めていた。雨に濡れたキングは絵画のように映えていた。身長高いとカッコいいな。
「これは?」
「トールって職業のレベルを上げると習得出来るスキル。知らない?」
「知らない。ここまで、ここまで神々しい技を見たのは初めてだ」
神々しいかぁ。天候変えた上で空をピカピカ光らせてるんだから、神々しいといえば神々しいよな。
もし仮にこれが自然現象で起こったら、暗雲が空から光を注ぐようになったら神が現れたと感じるだろう。てか、このゲーム?ダンジョン?の制作者頭イカれてるだろ。こんな事やったらヤバいに決まってるじゃん。
なんか戦うような空気でもなくなったので、俺はただひたすら体力を回復し続ける。本当はキングは抵抗した方が良いはずなんだけど、そんな事をする元気もなくなっちゃったか。
「どうして」
「それは聞くな。もし仮に我が生きていたら、その時に改めて質問してくれ。言わなくて済むならその方が良い」
「オーケー」
それなら生きていてくれないと困るな。いや、俺が困る事なんてないし、トリガーラッキーさん曰く、キングは俺を冒険者として応援してくれるらしいから困る事はない。
ただ、運命ってスキルは本当に正しいのか?という疑問と、トリガーラッキーさんは俺に真実を言っているのか?という疑問がある。油断は禁物だ。背中は預けられるけど、全身全霊で信じる事はまだ難しい。
「戦いは?」
「我はもう満身創痍だ。お前の降らせた雨で風邪を引いた。おそらく重度の風邪だ。しかし、どうしてお前はそんなに元気なのだ」
「俺は鉄人化とかしてたし、防寒具も着込んでるから」
「我もそれぐらいの対策はしてある」
「うーん……そもそも、俺が持っているリジェネってスキルがそういうスキルなのかも」
元々が風邪を20年間引いていない事によって習得出来たスキルだから、それをゲットした時点でそういうのは罹らないようになるのかもしれない。
眠らなくても良いし、ご飯食べなくても良いってのは、それをしなくても元気で健康で居られるから、という不思議な事が起こっている故だ。
リジェネを手に入れた事で風邪を引かない身体にするってのも出来るんかな?こんなん出来る制作者なら出来そうだけど。
クインは瞳をモンスターの物と替えてたし、キングはなんか背が高いし、もしかしたら出来そう。
……キングが話したがらない事って身体の事?
「お、止まった」
「こんなスキルがあるなんて……雨が落ちてきた」
「雨止んだね。でも、そろそろスキルが発動するから、構えてた方が良いよ」
「我は天候を受け止めるのだ。もし仮に我がまだ生きていたらお前の負けで良いか」
「ダメ。生きてたらまたさっきの続きからだね」
「そうか」
俺は身体が引き裂かれそうなほど思いっきり右手を上空へと突き出す。関節が外れそうだ。脱臼とかしそうなほど伸びに伸びている。俺はストレッチマンだな。
そして、その伸ばした手の先に暗くて不気味な雲が集まってくる。その様子を見ているのはキングと俺だけ。みんな避難してしまった。
「お前は神の力を手に入れたのか?」
「……」
「残念だ。この光景を見ているのが我だけでなければ、お前の手のひらに向かって雲が集まっていくのを見ているのが我だけでなければ、すぐに世界は簡単に変わっていくのに」
どこまでも遥か遠くの空に影響を与える。どう考えてもどうなってんだ。
それはやがてハンマーの形になる。全てをぶっ壊す為のハンマー。闘技場は跡形もなく消え去るだろう。良い気味だ。
キングは生き残ってくれ。ちゃんと話を聞きたい。
ドガンッ!!!!!!その音の衝撃で身体が思いっきり揺れる。目を瞑っていたのに光が貫通してきて、瞼を開けたはずの瞳に視界が入ってこない。白しか入ってこない。
キングも似たような状況になっているのだろうか?今、この状況で世界に何が起こっているのだろうか?聴覚もない。
手の平は確かに雲を、間違いなく雲を掴んだ。状況は相変わらず理解不能だったが、それでも身体はしっかりと動く。
俺は自分の身体をまるでオモチャみたいにして、痛みや感覚のない人形みたいに扱って、ハンマーを振りかぶる前の状態を作る。おそらく今は身体から血が流れている。出血源は伸ばしすぎて裂けた皮だ。
しばらくすると、腕が捥げるほどに全力で、まるで誰かに操られているみたいに全力でハンマーを振り下ろす。
その後、肉体が地面から離れ、どこか遠くの方まで飛ばされてしまう。強風は俺を裂く。水飛沫と一緒に空中に居る。
視覚も聴覚もない世界で、その他の感覚は鋭くなる。2つ無くなっても、自分が宙に浮いているのが分かった。前よりも勢いよく飛ばされている事が分かった。
地面に打ち付けられると、身体が自由になる。ここはどこだ?アスファルトにいる気がする。ここは道路か?水溜りの中だ。全身がずぶ濡れ。
闘技場の外まで飛ばされたんだろうな……それにしてもいつになったら戻るんだろう。前よりは慣れたけど、それでも視界が全部白くなっちゃって、音なんかまるで聞こえなくてってなるとスゲー不安だ。こんな状態で一体何が出来るんだ?
視界が戻ると目の前に巨大なプールがあった。俺が今まで見てきたプールの中で1番デカい、直径100メートル手前ぐらいはありそうな丸くて深いプール。
泳ぐには水質が悪すぎる茶色く濁った水だが、さっきまで闘技場があったであろう場所には淵まで水が溜まったプールがある。
そこにプカプカと浮かんでいたキング……水死体?土左衛門?
周囲を見渡すと大惨事だ。空から光が差して、地面に大量に落ちている割れたガラスを反射させる。水の中でキラキラしていた。
倒壊してしまっているビルもあるし、車だったであろうガラクタもそこら中に転がっている。やりすぎました。
「ヤバい」
「どうかしてるな!!お前は力を制御出来んのか!」
「はぁ……どうしよぉ。これやったの俺?本当に?」
「現実から目を逸らすな!お前が出した被害だ!」
数億……数十億……数百億?数千……兆?
被害額が分からない。てか、闘技場をこんな都会に作らないでくれたまえ。周りに被害が出る事も……いやぁ、終わりだ。
被害者がいない事を祈るばかりだ。まぁ、あの超大嵐の中で平気で居られる人なんて居なさそうだし、ワンチャン誰も犠牲になっていない可能性……
「終わったぁー!!すご〜!」
「あ、ストーム」
「何これェ!!本当に神様の力だぁ!!」
「ちょっと凄すぎるね。凄すぎて困る……」
ストームも戻ってきた。さて、確認するのは怖いが、キングが生きているのかどうかを確かめなければならない。ただ、俺は泳ぎが得意じゃない。うーん、無理だね。
「ストーム。キングをここまで運ぶの出来る?」
「出来るよぉ!行ってきまーーすっ!」
明るくていいねー、俺の未来の明るいと良いんだけどもね。
ストームはプカプカ浮かんでいたキングをここまで運んできた。一応脈を触ってみるとドクンドクンと動いているのが分かり、生きていた事に安心する。
ただ、気絶をしていて、ちょっと触った程度では起きない。氷みたいに冷たい身体だ。ずっと雨に当たってたからな。
……なんかよく分からないけど、これは俺の勝ちで良いのか?誰も見ている人がいないので証明する事が出来ないが、一応俺はこの勝負に勝った。やたー。
読んでいただきありがとうございました!!
何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!
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