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第3話 冒険者になろう



 まだ太陽が建物の影に隠れているぐらいの時間。

アラームではなくて、チャイムの音で起きた。

うーん……ネムイ。凸られたのか?住所バレはや。

どうせリジェネの事で来たんだろうけど、普通の時間に来てほしいな。

それともなんかのニュース?マスコミ?

どっちにしても来ないでほしい。


 布団の中でスマホを弄り出した健人は、いきなりの来客を無視する事に決めた。しかし


ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。

来客はインターホンを何度も何度も押す。


 えー、こわ。なんなの?ヤバい人?

布団から出て、玄関へと向かう。

通報出来るようにスマホを片手に持ち、普段はしないドアチェーンを掛けてから扉を開けた。


「あの、何時だと思ってるんですか……」

「おはようございます!!朝ですので!」

「うわ!こ、こえ……」

「私たちには関係ないので。ほら、冒険者になりましょう」

「えー……」


 凄い迷惑な連中だな。

スターだからってこんな事許されるのか、冒険者。

ほとんどヤさんじゃん、昔の。


 大きな声に驚いた健人は、カラダをビクッと震わせた。その様子を見ても二人は動じない。無神経。神経質では冒険者なんて務まらないのかもしれない。


「迷惑です」

「なりたくないんです?冒険者」

「はい。なりたくないです」

「それは嘘なので。引き下がらないので」

「本当です、本当になりたくない」

「冒険者になってください、アナタの気持ちなんてどうでも良いので」

「……」


 あまりにも強引だ。というかなんだその語尾は。

全く違う星の人と話をしているみたいに、俺の常識とは違う事を言ってくる。職業選択の自由がある以上は、俺の気持ち以外にないだろ。


「家に入れてください。話はそれからです」

「あの、俺は今日も仕事なんですけど」

「ナシになったので。気にしなくて大丈夫なので」

「ナシ?」

「職場に連絡をしておいたので、行く必要はないです」


 五階建てマンションの203号室で、しつこい来客を追い払おうとしていると、階段から様子を伺う上の階の人の顔が見えてきた。


「あの、迷惑になってるみたいなのでお引き取りを」

「中なら良いので。これ外しますよ」

「ああ!あの、ちょっと!ホントに……警察呼びますよ!」

「呼べ!」


 甲冑を着ていた方がいきなり口を開いた。

あまりにも威圧的だったので、抵抗するのはやめ、二人を部屋の中に入れる。本当に冒険者の人なのか心配になってきた。ヤの人達だったらどうしよう、怖い系の団の人たち。


「お邪魔しまーす、ここ座りますので」

「はぁ……あの、なんですか?なんでこんな事を」

「どうせ無駄ですよ。抵抗しても無駄ですので」

「何がですか」

「私には少しだけ運命が見えるので、アナタが冒険者になっているところも見えてるので」

「はぁ?」

「運命には抗えませんよ?絶対ですので」


 説得するならちゃんと説得してほしい。

そんな運命とかいう良く分からない概念で説得をされたところで、心は全く動かない。図々しく、当たり前のようにコタツに入っているのはなぜだ。


「で、どうすれば良いんですか?どうすれば帰ってくれるんですか?」

「一回私たちに着いてきてください。冒険に出ましょう」

「はぁ?どういう……」

「今から出るぞぉ……」


 甲冑の男に無理やり手を引っ張られる。

その力はとても強くて、腕が引っこ抜かれた。と思った。


「【転移(テレポート)】!」


 彼女がそう言うと、地面に魔法陣が出現して、俺は青白い光に包まれた。その光に包まれて目の前が真っ白になったと思うと、広々とした草原に居た。わお。

映像で見ていた青空に、いつも見ていた不自然なほど緑色な草原。遠くには山も見える。あそこにはまた別のダンジョンだ。

ここは、『始まりの大地』?テレポートでここに?でも、俺が……


「本当は冒険者じゃないと入れないんですけどね。アナタは特別なので」

「え、ここって始まりの大地?」

「アナタの顔は嬉しそうですので。やっぱり私はアナタを冒険者にします」

「いや、あの、そんな事は」

「パンッ」

「え?」


 パンッ!女性がそう呟いた後に、腰に提げていた拳銃を空に向かって撃った。すると、そこにいきなりモンスターがポップアップしてきて、タイミング良く当たった。

ヨダレをダラダラ流したその鳥はやっぱりテレビで良く見た鳥だ。


「え、どうして」

「トリガーラッキーなので。知らないんですか?私の名前」

「いや、知ってますけど、でもどうして?」

「分かるので。《運命》が」

「運命が……」

「ドロアードがあの場所に出てくる事は分かってたので。だから撃ったんです」

「ど、ドロ?」

「ドロアードですので」


 トリガーラッキーは若手A級冒険者として、名だたる冒険者と共に『ガンナー』として冒険をしている。最年少でA級となった事から、S級への昇格も時間の問題であるという評価がされている。


「私はスカウトとしても優秀なので。分かります?」

「え?」

「成功する運命にある冒険者は我が社に欲しいので」

「俺の事ですか?」

「はい。ずっとそう言ってるので」

「でも、スキルが欲しいんですよね?リジェネが」

「それがあるのはアナタですので。なら変わらないじゃないですので」


 こんな広くて晴れ晴れとした場所に来てしまったら、心が揺れ動いてしまう。綺麗な青空だ。風がパジャマを膨らませる。それに、鼻を抜けていく草の香りも良い、風も気持ちいい。

もうここには来れないのかもしれない、冒険者ではない俺は。


 等間隔で流れていく雲を眺めて、冒険者になりたいという気持ちが蘇ってくるのを感じていた。


「転職にかかる手間は全部私たちがやるので。アナタはただただサインをするだけですので」

「ま、まだ冒険者になるなんて言ってないです」

「無駄なので」

「いやいやいや」

「そんなに拒絶する事じゃないので。誰しも冒険者を夢に見ます」


 そうだ。

 この世界の人間なら一度は冒険者を目指すんだ。

 そういう風になっているから、

 圧倒的なスターだから。

 俺は本当はどうしたいんだろう?

 本当になりたくないのかな?


「なります、冒険者」

「だと思いました。それじゃあ、こちらにサインを」

「えー、早いですけどはい」


そんなにトントン拍子で冒険者になっていいのか?

もっと色んな試練とかテストとかがあると思ってたんだけど、別にそんな事もないのか。

本当に冒険者。うーん、そんな人生もありか。


心地の良い草原で、俺は冒険者になる事を決意する。

人助けをするのも悪くないかぁ。


 ○○


 冒険者の仕事は任務(ミッション)をこなす事。

そうする事によって報酬が貰えるし、困ってる人を助ける事が出来る。冒険者として有名になれば、誰もが認める成功者になれる。お金持ちにもなれる。他にやりたい仕事があるなら支援してくれる。

引退したとしても、冒険者には特別な給付金があるし、あらゆる面で優遇される。

 ならない理由なんてなかった。



読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、どうか次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定です!

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