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十五夜
すっかり涼しくなり雲の1つもなくよく晴れた秋の日
スーツを着て歩くと西日が東へ影を引き伸ばす
忘れ物に気がついたふりをしてふと振り返るとき
足跡もつかない黒いアスファルトに僕の靴が着く
住んできたアパートは今さらのように取り壊しが決まった
だからという訳でもなくクリーニング屋は店を閉めた
検査の結果は悪くはなかったがもう薬を止めることはできない
古くなったものは最早建て替えるしか無いのかもしれない
知らぬ気に満月が蒼く輝いて塔は薄く影を落とす
比べ物にならないが僕にも影は薄く伸びる
高い塔と同じくこの世にあり何れ倒れるべきもの
だから明日も何かを犠牲にしつつきっと1日よく晴れる
でも雨具の用意は今のうちにしなければならない
予想によると秋の日のように台風が近づいている




