ハーメルンの子供たち
『ハーメルンの斑な笛吹き』を訳していて、連れ去られた「ハーメルンの子供たち」とは親を亡くした孤児のことでは?との思いが頭を離れなくなった。どういうことかというと、
君知るや我等ハーメルンの子、故郷離れて遠き空。
ポーランドからルーマニアまで、子孫は遠く散らばるを。
道を示すは笛吹き男、ハーメルンの地を棄てぬ。
語れば古きこと乍ら、1260年、我等父親失いぬ。
フルダ僧院我等を売りぬ、ミンデン司教区これを買う。
収まりつかぬは我等が親と、街を育てた
エーフェルシュタイン伯、年貢泥棒
許すまじ、ハーメルンの土地守らんと。
かくてぶつかるゼーデミューンデ、相手はミンデン司教軍。
市民軍士は命散りゆく、捕虜は敵地に引立てられて
儚く刑に処されたり。ミンデン司教区、年貢の半分
持ち掛ける、エーフェルシュタイン伯が敵
ブラウンシュヴァイク公、即ち我等が親の仇。
それまで街を慈しむ、エ伯も最早落ち目にて、
それから17年が経ち、遂に1277年、
彼また売りぬ、ハーメルン市の守護職を。
親の仇も取れずして、我等味方を失いぬ。
それからまた7年が経ち、見知らぬ男密かに来たり
我等が来し方知る者が、片手差し出し此の街出ぬかと。
仲間集まり鍵を開け、街を出るなら誰でも良し!
仇に任せる後始末、見知らぬ土地にいざ行かん!
後は誰もが知る如く、仇は慌てふためいて
我等が怨みに蓋すべく、笛吹き男のせいにした。
今や子孫も知らぬが仏、何処ぞの洞に湧いたとか。
怨みは募るハーメルン、遥かに続く蒼き空。