12/23
夏の帆
帆掛け舟などというものも見かけなくなったのに
ホタテ貝は今日もパックに詰められ店先に並ぶ
炒めるべき鍋も処分して引っ越した新居にて
帆を降ろすように身をすり下ろす日々
せめて夏の帆のように白くありたいのに
ボードレールの旅人ほど遠く去る先もなく
一休和尚のような死の覚悟もなく
門松など見るまでもなく旅ゆく毎日
こういうと貴女は笑うだろうか
帆を張るならば塵芥おのずと集まるもの
いつまでも何事もなく終える舟はなしと
そんな事とは解っていてもただ望んで止まぬは
あの夏の日に輝ける白いばかりの帆
雨ばかり降るこの黒い山の彼方に走り行けと




