〈山羊座〜宴に現れた招かれざる客〜〉
「そんなことよりも、君は向こうにいるヤギを見たかい?あいつは面白い奴でよ、天の川テュポーンが来た時に魚に化けて逃げようとしたのに、下半分だけ魚になって、上半分だけ何故かヤギなんだよ。どんだけ慌ててんだって。面白いからずっとそのままにしてやったよ。ははは。」
どうやら最初に辿り着いた天の川はよくテュポーンが遊びに来る場所らしい。
川で笑われた記憶が蘇る。
トラウマ、いや、トラヒツジ、ヒツジウマか。
ムートンはニュースで見るよりもゼウスが傍若無人な神と感じた。その言葉には全てを見下す傲慢さがあり、人の気持ちを考えるという余地は微塵も感じ取れなかった。
益々と妹の危険を感じたし、ゼウスの言う通りにしないと妹が絶対帰ってこない事も伝わってきた。これ程までに神の前では皆、無力になるのだろうか。
当のヤギは下半分魚という事を活かして見たことの無い踊りを踊っていた。その踊りに合わせて皆踊りながら、そして笑い者にしていた。
とても楽しそうなその姿は、この善悪の無い天界をユニークにする素敵な仕事となっていた。
しかし、よく見るとヤギは涙を流しており、今後一生そうして過ごさなければいけない辛い役目を務めてしまっている。もう彼に、どのように生きるかを選択するすべは無かった。
その涙は嬉し涙か、悲しみの涙か、もしゼウスに良識があったのなら、ヤギはどんな生活を願ったのだろうか。
少なくとも、ムートンの抱いたこう言った感情はこの町にはそぐわず、このままここにいるとジンギスカンになる未来が見えたので早々とヘラクレスを探しに立ち去った。
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付随音楽〈山羊座〜宴に現れた招かれざる客〜〉