〈ふたご座〜カストルとポルックスの犯した罪〜〉
そこへ目の前に現れたのは、王の子カストルと神の子ポルックスという、勇敢な戦士の双子だ。
彼らは大きな争いにおいて無敗の伝説を持つ英雄の兄弟である。血は繋がっていないが兄弟、天界では当たり前の事であるし、血の繋がりよりも大切なことだってある。
「サソリさんよ、助けておくれ。カストルが戦いで傷をおってしまい、もうダメかも知れねぇんだ。俺はコイツといつも一緒だった、どんな争いだってコイツと乗り越えてきたんだ。」
「争いにいってりゃ、いつかはそうなるのはわかってたんだろう?散々人を殺しておいて、助けてくれとは、なんとも情けねぇ事を言いやがって。」
「俺達は争いが好きな訳じゃねぇんだよ、ただ、戦場ではお互いに頼らなきゃならねぇ、そうでもしないと、俺達は何のために生きてるのか分からないから、折角の兄弟だからいつだって信頼し合っていたかっただけなんだよ。俺達は死んでも一緒に居たいんだ、、。」
サソリは依頼書を無言でめくる。そこに書かれていたのはゼウスからの依頼でカストルを、と書かれていた。
「丁度そこのカストルさんを殺せと依頼が来てるぜ、まぁ俺が手を下すまでもなさそうだがな、、」
「何だって?!誰がそんな依頼を、、、!」
「ゼウスに決まってんだろうが。」
「あんまりだ、争いが上手く行かなかったから俺達をバラバラにしようとしてるんだな。一緒に居られる事が幸せというのをわかってて引き裂くんだ、なんて酷い事を。そうだ、サソリさんよ、俺も殺しておくれ。どのみちもうカストルは助からねぇ。俺が依頼する。俺を殺しておくれ。」
「しょうがねぇ、依頼を断る訳にはいかねぇからな。まぁ、同時に手を取り合って死ねばいい。いくぞ。」
サソリはエイッと毒針で2人を順番に刺した。カストルを抱えるポルックスは懸命に手を握っていた。
もがき苦しむ顔はやがて安堵の表情に代わり2人は星座となった。もし別々に死んでいたら、離れ離れの星座になってしまっていただろう。そうすると、2人は悲しみのまま星になってしまうが、サソリは殺しのプロ、同じ星座になるように殺めたのだった。
2人は無事、天界でも永遠に一緒に暮らせる事になった。
殺し屋には変わりないが、サソリの心遣いは慈愛に満ちていた。
「おい羊、てめぇゼ◯スにチクんじゃねぇぞ、気分が良くてつい2人も殺っちまったんだぜ。」
「それ以上いい気分になって僕が3人目にならなくて良かったメァ〝よ」
サソリは毒針を手入れしながら言った。
「ずっと一緒に暮らせない苦しさより、一瞬の苦しさの方がマシさ。だからお前も牧場からココへきたんだろう?」
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付随音楽〈ふたご座〜カストルとポルックスの犯した罪〜〉