隔離区画
どうしようもない人らの中でも、さらにどうしようもない人たちが、そこには集うという。
手野市で随一の危険地域、その中でもさらに危ないエリアが、隔離区画と呼ばれるところだ。
通称、負犬地区とも呼ばれ、他のところでいられなくなったような人らがここに集まってくる。
はじめは暴力団がここで経営していた風俗街だったが、次第に収拾がつかなくなり、今や形式上は暴力団の総元締めである河菱会が直轄しているが、実質的にはその2次団体である世古主基会が管理している。
世古主基会はここだけを縄張りにしている暴力団であり、この負犬地区全域をシマとしている。
河菱会の中でも、人道に外れた者と呼ばれる人らが集まって作った会で、それがようやくの治安の維持に貢献している。
当然、国は関わらないし、行政も何もない。
そもそも、危険地域に手野市は関わることができないことになっている。
ここではどんな違法行為も行われているとされているが、統計調査なんて誰も取ったことがないし、そもそも調べようとする人もいない。
ほんの0.5平方キロメートルほどの土地には、有象無象が大量にいる。
それが膨張をしながらも流出しているため、一定の面積を保ち続けているのは、ほとんど奇跡だろう。
それがずっとずっと続くことを、誰もが願っている。