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龍と謎と前世  作者: 夏蜜柑/甘楽
第1章。黒夜は前世の記憶を思い出す。
23/27

特別編、異世界で。

またしても長くなってしまった。

短く済ませようとしていたのにここまで長くなるとは・・・なんか悔しいです。


今回は精神戦が面白いです。

ぜひお楽しみに。


真っ白な空間、何もない部屋を彷彿とさせる。しかし実際にそこは部屋でも何でもなく、本当に何もない空間、いや世界と言うべきか。しかしとても心地よい感覚がする、普通はこんな真っ白の不気味な場所にいたら恐怖やそこ知れぬ不安感があると思うのだが、そんなのは全くなく包み込まれるような安心感を覚えた。


「ねえ、秘密の話をしようか」


突然俺の前に少年が現れた。不思議な少年だ、とても見たことがある様な気がする。しかしどこで見たかは思い出せない、そんなモヤモヤな感覚が続く。見た目の年齢的には17歳、そして何故か俺の姿は20ぐらいの姿になっていた。身長が高くなかなかなれない。

少年の目には俺が映っている。その姿で自分の状態を確認し、感覚で合わせた。そして彼の眼をじっと見つめる。

ああ、感覚的に目の前の少年が敵でないというのがわかる。だか俺の性格上そのまま見過ごすわけにもいかない。

しかしなぜだろう彼は俺に似てるという感覚を覚える。

直感的にだが、あまり探りを入れなくてもいい気がする。


「なあ、お前は何者だ?」


遠回りで回りくどい質問は何か合わないと、直感的に感じ取った俺は探りや様子見をすべて吹き飛ばし直球に聞いた、俺は遠回りな質問は嫌なため丁度いい気がするが。

相手の動きには常に目を向けておくが、そこまで警戒する必要はないと思う。どういった回答をしようかと悩んでる仕草が素人そのものだ。

しかし、本当の達人は自分力を完璧に隠すことができる。もしかしたらこの仕草はフェイクなのかもしれない。


長い間質問の回答を悩む。「う~ん、う~ん?」と俺を伺うように悩み続ける。


「・・・誰でもないかな?強いて言うなら君かな?」


全く意味のわからない回答。まさか俺を試しているのかもしれない、だからこそ俺は冷静に怒るでもなく呆れるでもなく答えの意味を考える。


「つまり、君のあり方は俺次第ということか。先ほど俺が自分に似ていると思ったから君は俺だと言ったんだな」


「うん、正解!」


その一瞬彼の眼には黒い影が映った。思わず反応しそうになったが気付かなかったふりをする。


「さすがだね!今の言い方は煽りも入れたつもりなんだけど、それに反応せず素直に言葉を考え、答えを導き出す!名推理だよ」


もしかしたら意味がないのかもしれないのに自然と思考していた。きっと意味があると確信に近いものを持っていた。

自分の中にいつもと違う自分を感じている、それが大きな違和感となって目の前の相手に油断を見せないようになる。きっと怖いのだろう、ペースを崩してくる相手が。

いや、その逆か。ぴったりと自分のペースに合わせて、会話のテンポ、息継ぎのタイミング、心臓の鼓動、すべて俺の心地よいタイミングに合わせてくるんだ。


「褒められるのは素直にうれしいが、この程度でべた褒めされるのは違う気がするぞ」


「そうなの?すごいと思ったから、すごいと言っただけなんだけどな」


不思議そうに首をかしげる少年、なんとも愛らしい動作だと思う。

その仕草に気を取られそうになるが、頭を振って正気に戻る。今のは完全に隙を突かれた一撃だ。俺の意識の穴をくぐり抜け精神に攻撃してきた。

しかし、そんなことではへこたれず、立ち向かう。


「まあ、すごいと思ってくれてほめたなら、それはそれでいいだろう」


すこし冷や汗をかいてしまったが、それを悟られないように会話を続ける。

相手の動作には呪、もしくは精神に直接揺さぶりを入れる系統の能力がかかっている。なぜこんなことをするのか理由は分からないが、とりあえず気をしっかりしないといけないことは確かだ。


「(そのまえに、こいつの実力を見極めなくちゃ、戦いのときに素早い判断ができないか)って思ってるのばればれだよ」


「なっ!?」


さすがにこれは驚かされた、まさか、思ってることは全くそのまま言い当てられるとは。

これは不可能なことに思えるかもしれないが、相手をよく知っていて、尚且つ思考を誘導できればできないことはない技だ。それでも難易度はめちゃめちゃに高いが。


「あはは、君わかりやすいってよく言われるでしょ」


「そんなことはないんだけどな」


言われるかと記憶を振り返るが思い当たる節はなく首をかしげる。


「そっか、勘違いかな?」


そっけないしゃべり方だったが外れたのが悔しかったのかため息をひとつし、俯いて下を向いてしまう。その仕草に(やってしまったかな、遠慮する必要はないと思ったんだが)と少し後悔と罪悪感を覚えてしまう。


「でも、まあいいや」


直に気を持ち直したのか、今度は楽しそうな雰囲気が出ていた。言葉と同じ時に顔をあげた少年の顔色を窺おうと顔を見るがその口元は厭らしく歪んでいて、瞳は煌々と輝いていた。


「やっと隙を見せてくれたからね」


俺は、その輝いた瞳に目を奪われ、言葉が届いていなかった。そして・・・


「今の君は隙だらけだ」


・・・目があった。


その瞬間爆発的に嫌な予感がした、正確には俺の中の本能が煩わしい程に警告をあげていた。


「あ、うう」


首が締め付けられたように声が出ない。体も自分の言うことを聞かず指一本すら動かすことはできなかった、つまりは当然眼をそむけることもできない。

理性が少しずつ削られていき、めちゃくちゃな感覚が体中をめぐり、気持ち悪い程に思考を奪われ物事を考えられなくなっていた。

何かたまらないものが体中を支配し、脳内まで支配しようと入ってきている。

まるで蛇に全身をさらには脳までも絡み付かれてる感じだ。

そう言うと蛇好きにはたまらないかもしれないからもっと嫌な例えをしよう。そう、まるで、大量の黒光りして、羽根のついて、飛ぶことのできる……Gに全身を覆われている感じだ。

なぁ、たまらなく厭だろう?てか、吐き気がするだろう?


だがその気持ち悪さは次第に消え、かわりにとてつもないほどの無が脳を支配した。

そのせいかまともに思考できない。

ボーっとした脳内は次第に判断力を失わせ、気持ち悪さが無くなったから入ってくる何かに抵抗することもできない。

完全に白旗状態だ。


そうなってしまえばそこまでの時間は必要とせずに脳を支配させられてしまう。最後に残った理性も完全に乗っ取られてしまい本当に抵抗できなくなった。

すると少年の瞳は更に怪しげな光を発し俺にその光を送ってくる。


ドクンッと大きく心臓が鳴った、その音が俺の耳にまで聞こえていた。

息が苦しくなり、支配された思考が感情に入り始めた。当然ながら抵抗できるはずもあっさりと感情を変化させられる。何も考えられず無だった感情が愛情に変えられてしまった。いや歪められたというべきか。

変化は直に訪れた、目の前の子どもは少年で、もし少女だとしても愛情や欲情なんて湧く筈が無いのだが・・・今の俺には目の少年がとても愛おしく見えた。

今すぐ手を繋ぎたい、ずっと一緒に居たい、抱きしめたいといった欲望があふれ出て止まるところを知らなかった。


「うう、ぐうぅっ」


口から出るのは呻き声、だめたと思うことができず手を伸ばし、ゆっくりだが足を進める。

気がつけば体は動いていた。

ゆっくりだが歩みを進める俺は飛べるすべを知らなかった、とてもゆっくりだがこのままいけば俺は少年にたどり着くだろう。


ああ、愛おしくてたまらない。今すぐ抱きついて頬ずりをして全身をくまなく確認して愛を確かめたい。もう止まらない止めることができない。愛おしくてしかたがない。

狂ったような思考が支配しても何の辛さもない。むしろそれが自然だと勘違い、もしくは錯覚してしまう。

『――くやくん?』

あまり聞き取れなかったが心地よい声が脳内に響いた。その瞬間、俺の脚は止まった。そこからはぴたりと動くことがなかった。


それを不快に思ったのか、少年の瞳はまた爛々と輝きを放ち俺を支配していく。今度は精神にまで手を伸ばし、快楽を強くしようとする。


そうすると一歩ごとに脳がしびれるような快楽が全身に駆け抜ける。

もう止まることはなく一歩一歩と少しずつ歩みを進めた。それは先ほどよりも早いペースの進みだった。今度は止まらないだろう厭らしい笑みを口にだし俺のことをじっと見つめている少年はとても機嫌がよさそうだった。

『こくやくん・・・黒夜くん!』

今度も心地よい声が脳内に響いた、先ほどと違って動きが止まることがないが歩みのペースはゆっくりになる。

しかし、快楽にはあらがえずまたペースが元に戻りそうなると『そろそろ起きてよ!本当に遅刻しちゃうよ!』必至そうに起こそうとしている声が響く。焦っている感じがまた心地よく、今度は俺の足を止める。


またしても止まったことにイラつきを隠せないのか少年は顔を歪めてそのイラつきを隠そうともしなくなった。


『ねえ、起きてよ!今日大学で大事な―――があるんでしょ。なら遅刻しちゃまずいじゃん!』

ああ、あと5分と言いたくなるが、それ以上に歩みを……快楽を邪魔する声に不快感を覚える。

『俺を止めるな!!カイラクがスグそこにアルンだぞ!ジャマヲするな!!!』


俺はなんとなく察していた、これが幸せな夢なんだと。今はもう届かない、決して戻ることのない夢の声なんだと。


『本当にいいの?遅刻したら今までのが無駄だよ?そんなのは、――――に迷惑だよ』


その聞き取れない言葉に俺は不快さを隠さずに顔をゆがめただろう。何も覚えていなくても強く心が乱れた。それに気がついたのか、自分でもまずいと思ったのか『ご、ごめん。つい…』と口ごもっていた。

『でも、本当に起きないといけないよ』

悲しそうな声で呟く声。それは最初と違い辛そうな声に変っていた。

しかし、今の俺には目の前の快楽に手が届くのだ。

『ウルサイ!ホットイテくれ!』


その言葉を聞いたわけではないのだろうが少女はとても悲しそうな声で謝る。


『そっか、ごめん』


今のも去ってしまいそうな声。俺はとても嫌な感じがした。後悔とでもいえばいいのか分からないが

とにかく今すぐ彼女を呼び止めたかった。

そんな気持ちのおかげか、またしても俺の脚は止まった。完全に止まった。


「なっ!?」


少年はあり得ないような声を出し、次はないよう完全に逃げられないように最後のとどめを刺すため目を光らせた。

最後は精神のさらに奥、魂にまで支配を伸ばした。

しかし今の俺はそんな場合じゃない。気が狂いそうな後悔と、自分で自分を殺したくなるような憎しみがどうしようもなく、俺を焦らせていた。

それでも魔の手は伸びる、魂まで支配させられれば完全に抵抗することはできない。それは直感で感じ取っていた。

だからこそ俺は全力でその手を払っていた。

あと少し、あと少しで声に手が届く。少年も支配もすべてを押し倒し俺は手を伸ばす。

『―――!!!』


パアンッ!と何かがはじかれる音がした。俺は倒れそうになる体に踏ん張りを入れ、目の前の少年から距離を置く。

自由に動く体を、感情を、思考を、確認しながら俺は少年と目を合わせる。

いまだに光る瞳に俺は何の反応も示さない。

堂々としているが今の俺は最後に叫んだ言葉が気になってしょうがなかった。するりと出た言葉、確かに声に向かって叫んでいたのは覚えている、しかしなんて叫んだのかは覚えていなかった。

以外と息を切らせており、「はぁはぁぁっ!」と息を整える。


「まさか、僕の支配からのがれるなんて……思った以上に優秀なんだね」


拗ねた口調で、妙に厭味ったらしく言ってくる。

だが、今の俺はあの時言った言葉が気になって頭から離れなかった。どれだけ思い出そうとしても全然なんて言ったか分からない。まるで理解できない言語で話した言葉みたいだ、しかし口の動きはちゃんと日本語だった。

悶々とした思考がぐるぐると回る。俺はわからない謎をぐるぐると考えてしまう癖があるみたいだ。よくないとは分かっていても気になってしまうのだ。しかたない。


「・・・」


「あらら?まさかぁ、無視ですか?さすがに僕でもカチンとしちゃうよ」


本当に怒ったのかこめかみに皺ができてる。


「でも、すごいのはホントだ。あそこまで支配されればもうレジストできないはず……つまりは耐性じゃなくて無効だろう、アノールといったところか」


無効……だから解かれた時にもう一度行った支配は掛からなかったのか。ちなみにだがアノールの綴りはannulだ。

これならもう掛からないと安心し息を大きく吐く。すでに呼吸も整えており、何の問題もなく動けるほどには回復していた。

だからこそ目の前の少年に、油断や傲慢、慢心を取り除いてしまった。


「・・・そんなことなら最初っから加減はいらないかな?」


その瞬間、豹変した。豹変したと言っても何がと思うだろうが、あえて言うならすべてが豹変した。色、空気、におい、音、視界、感覚、そして目の前にいる“なにか”の雰囲気が。

狸に化かされた気分だ。自分はここまでやばい相手と対峙していたなんて。

見た目は変わらないのに発しているオーラはまるで神だ。いや、まるでではなくまんま神のものだ。


「はは、そこまで怖がらなくても。・・・とりあえずは合格かな」


突然の合格発言と同時に目の前の“なにか”の雰囲気は元に戻る。


全く意味が分からず首をかしげていると、その考えすら読んで説明してくれた。


「今のは精神的な試練だ。かなり強く精神支配と精神魅了、そして心魂支配をかけたんだけど自力で解いちゃうとはね。一回ぐらい引っかかると思ってたんだけど……自信なくすなぁ」


ドや顔で説明し始めたと思ったら急に落ち込んだ。何だこいつ、情緒不安定なのか?


「なっ!?失礼だな君は!凹んでるのはホントだぞ、僕の精神攻撃は亜神にすら効くかなり強力なものなんだぞ」


急に新しい単語がでてきたぞ、やはりかなり知っていることがあると思っていいだろう。

それとは別に、一つ気づいたことがある。こいつの考えを読む能力は表面に出てる思考を読むというもので、龍神と同じ能力だとわかった。ならば対策もできる、むしろできなきゃ龍神には勝てていない。そういえば龍神も神だなとふと頭によぎった。


「亜神は後々わかるよ、たぶんだけど他の命題者が教えてくれると思う。彼等はかなり長い間現世にいた神様だからね、自分たちのことも、亜神のことも知ってる」


「もしかしなくても龍神ってかなり偉い存在?」


「その通り、君は単に『価値』の命題者と相性が良かったから勝てたのだ。『価値』は強いが、それを示していない相手には手を抜く。しかも『価値』自体あまり殺傷を行わないあまあまちゃんだったから勝てたのだ」


「それ龍神がきいたら起こりそうだな」


少し苦笑いをしながら答える。龍神と戦っていた時はまだ魔神でもなく、大人化すらできなかったため、普通だったら負けてたのは揺るがない確定した事実だろう。今思うと、確かに俺を殺さないようにしていたのは感じる、封印系の技も解除せず食らったままの状態だったし。

闘っていた時はわからなかったため、一様成長してるんだなと感じ軽く微笑む。

しかし次の言葉でその微笑みは吹き飛ばされた。


「龍神如きに怒られたってどうってことないよ」


俺は一瞬その言葉を受け入れきれず頭が真っ白になった。きっと顔もポカーンとしていたと思う。むしろその顔以外にどんな顔をすれば良いんだろう。

あまりの意外さに否定することができなかった。それ以上に本当に本心から言っていることがわかり言い返せなかったのだ。


「亜神如きが脅威になるわけない」


「亜人?」


ここで、先ほど気になった単語が出てきた。いや、むしろ俺の疑問に答えるべく遠まわしな会話をしたと考えるのがあってるだろう。


「そそ、玩具箱の中にある位で神に至ったものを亜神と呼ぶんだよ」


ああ―神のほうね。

納得していると追加で新しい単語が出てきた。内容からなんとなく察することはできるが、それでも確信するのはもっと絶対的な証拠が欲しい。


「玩具箱とはなんだ?」


「神達がお遊びで作った世界、そしてその世界が発展し神達に見聞という娯楽を与えられる世界のことを指す」


「娯楽?見分が神にとって娯楽なのか。たしかネバーレフィス王国でもかなり有名な宗教があったはずだ。それらの神様は普段俺らを見て楽しんでいるってことか?」


それならなんと趣味の悪い神様だろうか。他人の経験したことを盗み見て楽しんでいるなんて、くるってるとしか言いようがない。


「それは違うよ。彼ら…神たちの名誉にかけて言うがそういうことではない。盗み見てるんじゃなくて、もともとは暇を解決させるための、いわばシュミレーションゲーム見たいなものなんだ。そこで作ったキャラが意思をもって行動し始めただけであって、最初からそれが目的だったわけではない。むしろ神たちは被害者側だよ。仕事を増やされたんだからな」


やはり神様はそれだけ信者がいるから忙しいのだろうか。


「それも違うよ」


「えっ?」


まさかの否定で驚かされた、何か解釈が間違っていたのだろうか。


「君の世界の人々が信仰している神はもとは至高な存在なんかじゃなかった。地球でもそうだっただろう、八百万の神だってイエスキリストだって元はただの器でしかなかった。それが成長して、周りに影響力を示し始めて、やっと魂が昇華したんだ。それと同じで、君の世界の信仰亜神はただの最弱種族の人間だった。それだったのだが魔種王や邪種王や自然種王などを味方につけて、ついには世界にルールを決めた。それほどまで強大なことを決めたため魂が昇華され神とあがめられる存在になったのだ」


そんな秘密があったなんて・・・普通じゃしれないことであろうになぜ俺みたいな奴に教えてくれるのだろう。


「そんなの先ほど言っただろう。君は僕の試練の一つに打ち勝った、だからこそ教えたんだよ。もし乗り越えられなかったらすぐさま現実に戻していただろう」


「そ、そうだったのか」


まあなんとなく察しはついていた。が、どうしても確認しておきたかったのだ。これが気まぐれであったら本当に聞きたいことは聞けないかもしれないから。


「最後に質問いいですか」


「ああ、なんでも聞くと言い。なんなら君の母であるマリアという人間の昔やっていたやんちゃを教えてもいい」


うっ!それはとても気になるが、今はもっと大事なことを聞きたかった。先ほどから会話をしててずっと違和感だったのだ。彼は俺たちが知ってる神を亜神と呼んだ、それはつまり純粋な“神”がいると言ってもいいだろう。そして・・・



「あなたは、この世界の外。つまりは宇宙すらも創り異世界すらも創った純粋な“神”という存在なのでしょうか」


「それは正解でもあり間違いでもあるかな。正確には元人間で、今では亜神上がり。“神”という定義で間違いはないんだが純粋かと言われれば間違いだ。まあ、俺は例外中の例外。普通、亜神では外のことすら認識できないんだが、俺は最初からそとの存在を知っていたからな。さらに上に目指せたわけだ。当然生半可な苦労じゃなかったがな」


「そうだったのですか、亜神では純粋な神にはなれない」


「別にそういうわけではないんだが・・・君も記憶が戻ればわかるはずだ。君が魔神になって焦っているのはわかる。精神的に乗っ取られそうなのだろう、強大な力に」


ギクッ!と思わず体をはねてしまった。

事実その通りであり、俺は魔神化ができない。これは、できるがやらないのできないだ。

一度魔神化を使い戦闘を行ったが、あまりの強さと戦闘に対する高揚感で自分を見失いそうになる。むしろ喪失してしまいそうな感覚に陥いる。それからは数回、力の操り方がないか探るために魔神化したが、すべて完膚なきまでに失敗してる。それだけじゃなく、一歩間違えれば無差別に攻撃をしていたかもしれない、それが怖くてなかなか魔神化の練習に踏み出せないのだ。


「確かにその通りだがそれの何が悪いいんだ」


「べつに悪くわないさ、ただ臆病風吹かせていざと言う時に何もできないのは嫌いな展開なんだ。だからわざわざこうして観象してきたんだよ」


「はぁ、やっと本題か」


何も無い空間で進まない会話、これも試練の一つだったんだろう。相手の話に我慢できずうやむやにするか、最後まで付き合って本題を聞き出せるか。


しかし、ここで俺は大事なことに気がついた。


「ちょっと待て、その言い方を過大解釈していいなら、―[俺が鍛えてやる]―って聞こえるんだが」


「ああ、その解釈で間違いない。この・・・・の僕が君を特別に鍛えてあげよう」


自信満々に胸を張る子供は突如俺と同じ姿になった。しかし、俺の内心では先ほどの不自然な聞き逃しが気になった。まるでノイズでかき消されるように聞き取れなかった言葉は一体何だったのか、どうして聞き取れなかったのかが、疑問が俺の中に渦巻き魅了していた。

それともう一つ、あの時俺は顔を見て話を聞いていたのだが、あの一瞬ほんと一瞬に顔が変わったように見えた……気がする。

うまく認識できないことがここまで不可になるとは、知らなかった。


「煩悩にとらわれている場合じゃないぞ。今の言葉もいつかは聞けるようになるから忘れな」


まるでせかすような言い方だ。せかしてるのかもしれないがその真相はどこにあるのか知らない。

なので、言われたとおりに準備をする。

準備と言ってもせいぜい心構えをする程度だが。

いや、でももしかしたら何かすべきことがあるかもしれない。周り一面真っ白だけど。

とりあえず聞いてみることにした。


「なあ、俺は何を準備すればいいんだ?」


その言葉に一瞬[しまった!]という顔をするがすぐに考えはじめる。


「じゃあ、今自分に一番合ってる武器を想像してくれ。この空間であればその想像が実体化する」


なんともすごい空間だ。まさしく夢だな。

そんなことを考えながら自分あった武器を思い浮かべる。

(煉刀や清水刀は俺に愛用武器ではあるがなんか自分に合ってるかと言われれば難色を示す。かといってナイフは論外な気がする、残りは消去法的に刻淵か。しかしあんまり使ってないし。まず自由に出し入れはできない品物だ)


そんな風に渋っていたが、仕方ないと高をくくり刻淵を想像すると自分でも驚いたが、何の抵抗もなくするりと想像することができた。)

疑問に思いながらも結果オーライだ、と直に意識を戻す。


「確かに武器が出てきました・・・」


そう言って振り返った先にいたのは、強力なオーラをまき散らしていた俺だった。



この真っ白い部屋では時間が分からない、しかし体感時間で既に二時間は経過していた、と思う。

正直そこまで覚えていない、俺はこの二時間必至で死なないようにしていたから時間を数える余裕がなかったのだ。

一歩でも間違えれば死ぬような戦いを俺達は繰り返していた。俺に制限はなく、それこそ魔神化してもいいのだが、扱いきれる気がせず直に飲まれていまうか、ぎりぎりまで使って解除した月にこらされるの二択だ。

なら、使わずに凌ぎ切るを選択する、それ以前にそうせざるをえないのだ。

不安定に身を任せたら後には破滅しかないと俺は思っている。そんな破滅を迎えるよりは、しなないギリギリで安全をとる。

だが、それではジリ貧。終わらない思考と何ら変わりわない。

ずっと体がもつわけでもない。当然のようにそんだけ激しくギリギリな戦いをしていれば精神はすり減るし、体力もかなり早いペースで減っていく。

もう後に引けないぐらい体力と精神が減ってやっと焦り始めた。この作戦で行くと決めた時、相手もすぐに体力が切れるだろうと思っていたのだが、まっさかここまで粘るとは思ってなかった。


しかし、ここまで戦ってわかることがある。

奴は必ず魔神化で戦ってくる。それは絶対条件として戦っている。

何度も打ち合ってれば、さすがにわかる。だが、それは逆に言えば打ち合わなきゃ分からない。見た目じゃ何も分からないのだ。

見事なまでの変化。俺に観察の時間を与えながら、一切悟らせないほどの見事さ、見抜かれないという圧倒的な自信。

まさか、ここまで厄介な相手だと話思っていなかった。正直舌を巻く現状だ。

指一本叶わないが、それでも相手が縛りプレイをしているなら勝ち目がある。

魔人化は強い反面、理性的な考えができなくなる。ならば余りある搦め手を使って隙を作りそこにすかさず攻撃をたたきこむ。


「これなら…」


厭らしく歪んだ口元から、彼がどれだけ卑怯な手を使おうとしているのかがわかる。

しかし、それに気づきながらも偽黒夜は笑っているだけだった。



縄、糸、引っかけ、囲い、地雷、暗器、光、猫だまし、竹槍、泥、落とし穴、トラバサミ。

他にもたくさん罠や搦め手を使ったのだが、すべて読まれていたのか簡単に避けらてしまった。

むしろ慣れない搦め手で隙が出て、異常なまでに疲れた。良かれと思ってやったことが裏目に出たときほど凹むことはない。

もう本格的に逃げ道がなくなった。逃げる気は元から無かったが、確実に後には引けなくなった。

そんなギリギリの状態で考えていたことは、どう戦うかよりもどうして魔人化しても理性的な考えができるのかということだ。先ほどは俺の張った罠がどこにあるのかわかるような感じだった、ということは俺の思考を読んでどこに罠を仕掛けるか読んでいたということだ。チょかっんでよけているならもっとギリギリになるはずだし、罠の第一条件として直感じゃ避けられないものを多く作った。それ以前に直感だけでそんな避けられたらたまったもんじゃない。


つまりは魔人化には何か条件と言うより本当に使うために必要なことがあるはずだ。

それ以前に何か制御しきれるだけのコツがあるはずだ。

それはなんだ?偽俺を見ていても俺と同じく魔のオーラを体に覆っている。

・・・いやちょっとまて、体から魔のオーラが出てるわけではない。オーラが出てるのは角から。しかも今はもう出てない、体のオーラは一切の無駄なく纏っている。

少しどころかめちゃくちゃ気になったため、魔眼を発動させる。

能力は見通す目にして発動。

俺の目に映ったのは偽俺の体を覆う闇のオーラなのだが、それ以上に内側から発せられる光に目が潰れそうだ。


急いで目を閉じ、考えを加速させる。偽俺が準備を開始しているということはもう少しで訓練が再開されるということだ。

だが今はそれすべてを思考から落とし、あの謎の光ついて何なのかを考える。


まぶしすぎてよく見えなかったが、あの光は体から出ていた。そして光の本質は聖、つまりは魔の反対であり天敵だ。そんなものを同時に扱うということはどれほど難しいのか想像がつかない。

うん?あれ?魔神化に行った手はそれほど難しくないんじゃないのか。

思い節があった黒夜は直に立ち上がり、魔人化を試す。

立ち上がったところを見た偽黒夜が近づいて話しかけてくるがその声は直に消えた。


「おい準備ができたのか?それでももう少し休ん……なっ?!君それは魔人化!?こんな疲れた状態で行ったら間違いなく暴走するぞっ!!!」


しかしそんな声は吹き荒れる力の前ではかき消される。操りきれない力の暴風で偽黒夜は後ろに下がる。顔を腕で守りながらも必死に叫ぶが暴風の中心である黒夜に声は届かない。それ以前に今のコクヤは荒れ狂いいまにでも自分を食ってしまいそうな力の押さえつけで忙しい。


「とりあえず、急いで、聖の力を体から引き出し、体内に巡らせる!そしてあとは勝手に魔の力が体を覆う!」


魔の力は角から出た瞬間体を覆い、内側である血管やましてや魔力を司る零体までもを覆い尽くそうとする。だが俺の内側は聖の魔力により守られており、覆う闇を近付けず逃げさせずとしている。

魔の力は自然と抑えられていき出力は一定まで来た。そうしてやっと俺は自由に動け回れるようになった。

俺の見た目は肌の色が茶色くなっており角も普段より長く出ている。

いかにも魔人といった感じだ。しかし体の中はそうでもなく、視ることのできる人が視れば、その内側から発せられる光で目がやられてしまうだろう。


「ふう~この状態になればもう安心かな。それにしても今の俺ってかなり邪悪じゃね?はたから見たら化け物だな」


自虐をネタを放って自分を冷静にする。成功したことで気分が高まっていたようだ。

しかしすぐに気が抜けたように力が抜け座り込んでしまう。


「あれ?おかしいな」


「いや、おかしくはないよ。君はまだ完璧には使いこなせていない、それなのに無理やり保っているような状態。角からも力を吸われ、聖の力を発揮するためにも力を吸われてそんなに力を吸われていたら消耗も早いはずだ」


なるほどこの疲れはそういうことかとわかり、急いで魔人化を解除する。


「さて練習を再開しないとな。魔人化で戦ってみたい…し。あれっ?」


いざ立ってみようとすると膝に力が入らず立ち上がれない。ひどい眠気も襲ってきて瞼が落ちそうになる。


「もう君は限界だよ、今日も寝な。安心していいよ今日のことを忘れることはない。俺と言う存在は忘れてもらうが行った訓練は忘れない。だけど気を付けるんだ。魔人化できるようになったのは意味がある、あんまり使いすぎないように」


偽俺が何か言っている気がするが眠すぎて理解できない。

あまりの眠気に俺はあらがいきれず、気絶するように眼を閉じ倒れた。


「じゃあね、コクヤクン。いつかまた会おう」



ハッと気がつき状態を起こす。


「ここは俺の部屋?今のは夢なのか?」


俺は妙に体を触り訓練でできた傷を確認するがそんな物はなかった。


「あれ?俺がひたすらに“魔物”と闘って魔人化の使い方を覚えたのは夢?だけど明確なアドバイスがあったような?・・・まあとりあえず寝よ」


起きたのはいいもののまだ疲れが残っているのか眠いコクヤはその思い状態を下ろし、二度寝入る準備をした。

思った以上につかれていたかコクヤはすぐ寝ることができた。

魔人化の訓練は後でにするかと、新しいものは試さずにいられないコクヤらしくない思いが出た。しかしそれにコクヤ自身は気がつかないのであった。



すみません、オチがグだってしまいました・・・。

まさかここまで長くなるとは思っておらず少し自分でも混乱してしまいました。

実は今回出てきた謎の存在は私が没にしたお話の主人公です。

そのお話と言うのも黒夜が主人公の作品なんですが、なんやかんやありこの世界とは別の世界に進むコクヤのお話です。つまりはIFです。


そして別世界の黒夜の発言からわかる通り、彼は本当の神様になってこの世界に干渉したのです。どうしてそんなになったのかは、昔発売した本を持っていた人にしか知らないことでしょう。

いつかそちらのお話も『なろう』に投稿したいなと思っています・・・あまりにも内容が過激なのでもしかしたら投稿しません。


それは別として今回のお話はどうでしたか?

珍しく書き方を変えてみたのですがおもしろかったですかね?

私自身あまり書きなれない書き方だったので混乱するところがありました。

ですが思った以上に楽しく書かせてもらったのでありがたかったです。


それでは次回こそ本当に二章のプロローグです。

しょっぱなから重大な伏線を仕掛けるつもりなのでお見逃しなく。

またプロローグで会いましょう。

では、ごきげんよう~


ちなみに裏話はありません。作ったのですがネタばれになるのでやめました。

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