魔王様と七人の悪魔王
あるところ、とある異世界に二人の大魔王がいた。
一人は邪神を崇拝する邪教の大魔王。そして
もう一人は、かつて魔神として恐れられた者から生まれた
暗黒の大魔王であった。
創造神を打倒するという目的を持つ暗黒の大魔王は、
天使軍と相対し、戦い、傷つけあった。
そしてさまざまな神や大天使と『天魔大戦』を繰り広げてきた暗黒の
大魔王であったが、そのうち力は衰えやつれていくに至った。
幼き邪教の大魔王はその様子を見て、少しずつ暗黒の大魔王の領地へ
侵食していった。
……暗黒の大魔王は、時に暴走することさえあった。
・・・・・・。
『魔王城上空』
「ぬぐぐ……。」
そのお方は膨大な魔力を纏っていた。
われら『七大悪魔王』はそのお方に仕える身であるため、
これにはあまり無視できるものではなかった。
……空間が歪んでいく。
このままでは、大陸どころか世界が壊れてしまう。
『陛下』のお力はそれほど凄まじいものなのだ。
私も家族がいる身なので死にたくは無いが、こればかりは
どうしようもない。
……私たち七人は陛下に仕えている中で一番強いから。
「この魔力と覇気、凄まじいの。わたしたちじゃいけそうにないの……。」
七番目の悪魔王マミが、ロケットが装着されたダンボールから
顔を出しぼやく。
「いやぁ~ねむたいねぇ。ボクのおひるねタイムにこんなのないよぉ~。」
六番目の悪魔王ナグラが、眠たそうにあくびをひとつする。
「この体維持するの大変なんだから、早くやっちゃうわよ!」
五番目の悪魔王フラットが、血でできた体を揺らし戦闘モードに入る。
「ケケケケッ。久しぶりに陛下とやりあえるなぁ。え?」
四番目の悪魔王サイドスが、巨大なペンチをつくりだしながら不敵に笑う。
「……陛下はどんな刑がお好みだろうか。……じっくりいくか。
いや、あえてざっくりいくのもいいな……ブツブツ。」
三番目の悪魔王マルデスが、静かに陛下と戦う策を練り上げる。
「おいお前ら!俺様が陛下を静めたら一人ずつ1シルバーだしやがれ!!」
二番目の悪魔王ハリスが、近くにいた野次馬達に条件付で金を要求する。
「はぁ……。こうなるといつもこうだな。」
そして一番目の悪魔王グレンが、紅蓮に燃える髪をなびかせ
ため息をつく。
陛下がお怒りになると、いつもお祭り騒ぎになる。
まるで闘技場でバトルロイヤルが行われているように。
……だが、こんな状態でも一大事なのは確か。
「貴様ら……。ごちゃごちゃと騒ぎやがって……。」
群衆の声に苛立ちを覚えた陛下は……ついに行動を起こす。
「こんな世界、私が木っ端微塵にしてくれるわあっ!!!」
陛下が禁術の時空魔法最上級の技を放つ。
……そう、私たちの目的はこれを阻止すること。
「皆、準備はいいな?」
「「「「「「おう!!」」」」」」
そして私たちは特大のバリアをはる。
「くっ……。なんて凄まじいパワーなの……。」
「そこ!ぼやくんじゃなーい!!」
「こんなの弾き飛ばしたら問題ないぜ!!」
「いくぞ、皆!!」
そして私たちは最大の力をこめる。
「「「「「「「いっけええええええええええ!!!!」」」」」」」
そして……
・・・・・・。
『魔王の部屋』
(ぅ……ぐぅ……。)
体が軋むように痛い……。見ると、手が吹き飛んでしまって
いる。胸にも大きな傷が。
「これくらい……なんだ。」
体じゅうに包帯が巻かれていたが、私はそれをはずし
回復魔法をかける。……完治。
もう問題ないだろう。
「……パパ。起きた?」
「あぁ……。アリナか。」
すると私の娘が部屋にはいってくる。
「パパ。やつれてるからって無茶して……。なにが世界滅亡よ。」
「……すまんな。毎回毎回。」
私はいつもこうだ。自分の怒りや絶望などの負の感情に支配されて
ああなってしまう。
「パパはこの国の魔王様なんだから。しっかりしないと。」
「…………。」
正直、私がこの国を守れるかと聞かれたら、すぐには『はい』と
答えることはできない。
実際、幹部たちにひどい迷惑をかけている。
今月も城の復旧作業が長引くこととなるだろうな。
「それでも……。」
「?」
それでも私はやると決めたのだ。
この国を豊かにし、創造神を打倒すると。
そんなこと他に誰がやる。
「私はやるぞ。アリナ。」
「お?なんか今日はやる気じゃん。」
「馬鹿言え。私を誰だと思っている。」
私は、魔を統べる暗黒の大魔王……
「『ルルカス・ブラックネス』だからな。」
フラット「それで何シルバー貰えたのよ。」
ハリス「あれだけ頑張って10シルバー(一万円)
しかもらえなかった(泣)」
全員(十分だろ。)