傍観少女と孤独な家族
今回は星南の"家族"についてです。
「ただいま帰りました。」
私の言葉に答える者は誰もいない。
私の家族は皆、孤独だ。
母は私と父の事を置いて、行方知れず。父は私の事を心配しているという様に見せているが、家に帰ってくることなんて一か月に一回あるか無いか。お弁当作戦を教えてくれたおばあちゃんは、病院にいる。
皆が皆、他の道を歩んでしまっている。皆が皆、たまにしか寄り添おうとしなかった。父は家に帰ってきたとき、必ず
「すまないな、お前は一人で大丈夫だろう。いる物はないか?」
と訊いてくる。そのたびに私は、「お父さんとの時間がほしい」と言いたい気持ちをこらえ、
「ないですよ。お気遣いありがとうございます。」
と答える。だって父に我儘を言ってしまったら、父は困った顔をしたながら、こう言うだろう。
「それ以外にしてくれないか?お父さんは忙しいんだ。」
と。それくらいなら、言わない方がましだ。
ピコン♪
「あ、LAIN。海里かしら。」
内容は、明日一緒に学校に行きたいから家の場所を教えてというものだった。
とっ、とっ、とっ。ポコン♪
「よし、送ったし、料理作りましょう。今日は親子丼!」
~料理中~
「いただきます。」
ぱくり。肉と卵って、何でこんなに相性がいいのかしら。今日はとっても上手にできたわ。
「お父さんにも、食べてほしかったわ。」
決めた。今日、もし父が帰ってきたら、私は自分の気持ちをすべて曝け出す。こう思えたのはきっと、皆のお陰だ。だって皆、自分の気持ちをきちんと、言っている。そしたら、私って、なんて小さい事で悩んでいたのかしらって。確かに私たち家族は孤独だ。でもその孤独は、私の一歩だけで、どちらかが歩み寄るだけで、かき消すことが出来る孤独なんじゃないか。そう考えられるようになった。
ガチャリ。
ひゅっ。息を吞んだ。やっぱり私は、怖がっていたのかもしれない。でも、覚悟を決めよう。
「おかえり、なさい。」
そこにいたのは、想像通り、お父さん。
「ただいま。ご飯、あるか?」
無い訳無いって分かってるくせに。私はいつも、父がいつ帰ってきてもいいように、少し多めに毎回作っている。そんな父に軽く微笑んで、
「ありますよ。今日は親子丼です。」
「そうか。準備しておいてくれるか?」
「はい。」
食べ終わったばかりだから、軽く温めなおすだけでいいわね。
ことっ。
「よし、これで完了!」
そうつぶやくと、部屋着に着替えた父が来た。
「おいしそうだな。いただきます。」
「召し上がれ。」
一口。口に含み、咀嚼する。どう、かな。父が水を飲み、私の方を向き、次の瞬間。
「いつもより美味しいな。やっぱり星南は料理が得意だな。」
真顔でそう言った後、
「いつもすまないな、お前は一人で大丈夫だろう。いる物はないか?」
と訊いてきた。勇気の一歩を踏み出そう。皆、私に前を向くことを教えてくれてありがとう。
「私は…私は、お父さんとの時間がほしい。」
声が震える。父の顔が、見れない。
「…そうか。ごめんな。」
やっぱり、駄目だった。仕方ない事だと分かっていても…
「お父さん、そんなに星南が寂しい思いをしていたことに、気づけてなかったよ。そうだ、今度一緒に、旅行でも行こうか。」
本当に?夢じゃない?聞きたいことはたくさんあったけれど、私の口から出たのは、この言葉だけだった。
「お父さん、大好きだよ。」
それは子供の時以来初めて、私がお父さんに敬語ではなくなった瞬間だった。
その後私たちは、夜中まで語り明かした。
家族と一緒にいて初めて孤独が無くなった。
幸せだと感じることが出来た。
泣きながら、ありがとうという事ができた。
自分の気持ちを曝け出すことが出来た。
私たちはもう、手を取り合って生きていける、幸せな家族だ。
なんか結構ご都合主義^^;すみません、精進しようと思います。