傍観少女と絶体絶命?
ずいぶん間があいてしまい申し訳ございません。
コツコツコツン。
トットットッ。
女子二人が無言で歩いている絵は、とてもシュールなようで、前を行く人々が道を開けてゆく。まあ、歩きやすいからラッキーよね。
「まだ、つかないの?ほかのお手洗いに行った方がいいんじゃないかしら?」
そう訊くと、キッ、と私を睨んで私の腕を強くつかむ。ああ、痣になってしまう。
「いいから、ついてきて?まあ、星南ちゃんは言いたいこと、もう分かってるかもだけど。」
ごめんなさい、あなたの期待には沿えてないわ。ぼーっとそう思っているうちに、お手洗いの前に立っていた。近くには宗太郎のグループがいるだけ。私はそれを横目にみてお手洗いに入った。いきなり六華さんが振り向く。何気に驚いてしまったわ。
「あんた、転生者でしょ!同じ転生者でも主人公と悪役!嫉妬したから、冬二に近づいて、逆ハールートを壊そうとした!そうでしょ?でも残念。この世界は私のためにできてるの!あんたは悪役にしかなれないのよ!」
自分が言うことはすべて正しいとでもいうように、高笑いをする六華さん。でも、転生って、何を言っているのかしら?それに、この世界は誰のものでもないわ、全ての意味が、分からない。
「あの、もしかして、生きる者はすべて輪廻転生するという考えをお持ちで?」
と聞くと、キッと私の事を睨んで、
「そこ、動かないで。」
地を這うような声で私にそういうと、その瞬間。
バシャッ!!!!!
予測できていたはずなのに。私の体は石のように固まって、動けなくなった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ドンっ!
「大丈夫?俺のせーな。」
やっぱり、いざという時に頼りになるのは、宗太郎だ。
「あ、あんた誰よ!」
と宗太郎に六華さんは話しかけのだけれど、
「は?てめえが誰だよ。つーかせーなに酷いことしてる時点でお前は死ぬべきだと俺は思うんだけど…
そこで一端言葉を切った宗太郎は、ほぼ三百六十度の角度でこちらを振り向いた。怖い怖い怖い。
「ねえ、せーなもそう思うよねぇ?」
私に聞かないでほしいわ。でも、口を開かなければ文句を言われるんだから、面倒くさいのよね。
「別に、死ななくてもいいと思うわ。私にとってはゲーム脳のお馬鹿さんでしかないもの。」
「は!?あんた生意気なのよ!ねえ、そう思いません?お名前が分かりませんけどぉ、イケメンなお方♪」
あ、これはまずい。そう思い、口を開こうとすると、
「てめぇ、いつまでなめ腐った演技してるつもりだ!俺の星南に、何てことしようとしてるんだよ!…ここで、殺してもいいんだぞ?」
と宗太郎がキレてしまった。ああ、宗太郎が怒るのも無理ないわ。私を庇ってくれたせいで、びしょぬれになっている宗太郎は、濡れている髪をかき上げながら、こちらを向いて、艶やかに言った。
「俺の愛しいせーな。君を傷つける者は、この世にイラナイ。」
そう言うと、いつものおちゃらけた顔に戻り、
「さ、授業に遅れちゃうから行っといで。二時間目なら間に合うよ。こいつは俺がどうにかするから、さ。」
申し訳ないけれど、お言葉に甘えて、私はまたコツン、コツン、とローファーで廊下を踏みしめながら、何度も何度も後ろを振り返りながら、教室へ向かった。