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青春の一コマ

作者: 齋藤 一明

”旅のはじめに


夜もふけて 訪のふ声に 出でたれば 憎きともがら みんなこぞりて


都会には珍しい、澄んだ空

四人仲間で星を観にゆくことがあった

年に一度、きまって冷え込む夜だった



”小さな旅


めざすはいつもの、寂れた砂浜

車を乗り捨てた四人は、賑やかだった

民家がないのを良いことに、

遠足にでも行くようだった


堤防を越えると、濃さの違う夜だ

右も左も、上も下も

まだ生乾きの闇がみっしりと積み重なっていた


闇の中にほころびがあった

目の高さのほころびが、ゆっくり横へすべってゆく


空にも虫食いの穴があった

四人は、その虫食いを観にきたのだ



”彼方の光


ひとおもい 水を満たすか 大柄杓


思い思いに三脚を立て、双眼鏡を据えた

倍率をいっぱいに下げて

少しでも弱い光を見るために


打ち上げられた木切れがメラメラ燃えて

羽虫のように火の粉が散った


餅だ、スルメだ、生芋だ

焚き火で焼いて腹の足し

じっと星空を見上げたまま、語り合ったものだ

耳の先を赤くしながら、議論はいつも熱かった


また来年来れるだろうかなんて、誰も言い出さない

しかし、いつまでも続けられないことをわきまえていた

だからこそ、議論が熱を帯びたのだった



”忘れない街



砂浜の 焚き火の跡の 赤とんぼ


四人はやがて無口になった

天空を巡る星に見とれ、寄せる波音を聴いていた

赤と緑の燈火をともし、次々に港をめざしている


ほの白く水平線が浮かび上がる

遙か沖合いを、巨大な船が流れて去った。


砂浜の、焚き火の跡は あかとんぼ

そろそろ家路につく時刻だった



”旅の終わりに


意地と張りとが ぶつかりあって やがて無口な 北斗星


熱い心はどこになくした?

豊かな時間をどこに忘れた?

ただ安穏なることを願うようになるとは


伸ばした爪をどこに落とした?

尖った牙は抜けたのか?



ーーーーーーーー


今回は、比較的馴染みのある曲を選びました。

全部で五曲、すべてNHKの番組挿入曲です。

まず、有名な『旅のはじめに』

そして、『小さな旅』

次に、『彼方の光』

さらに、『忘れない街』

最後は、『旅の終わりに』


曲名だけで思い出せなくても、you-tubeに収録されているので聴いてみてください。

皆さんは、曲からどんな場面を連想するでしょうね?


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― 新着の感想 ―
[一言] 「仲間」っていいな。何気なく集まって何気ない場所で何気なく一緒に何かをする「仲間」。いいですよね。
2016/10/13 22:40 退会済み
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