同調強化
早朝、レオンとミシェルは学園にある訓練場に移動していた。
「それで、レオン。 一日だけで強くなれる特訓って?」
問いかけてくるミシェルに対してレオンは「同調強化だ」と答えた。
同調強化、聞き慣れないフレーズにミシェルは眉根を寄せて首を傾げた。
「同調した状態で訓練する事で、お互いの戦闘能力を向上させるんだ」
ミシェル、とレオンは真剣な眼差しで彼女を見る。
「同調している間、お前の全てを俺に委ねてくれないか?」
淡く、甘い声音で頼んでくるレオンにミシェルは不覚にもときめいてしまった。
嗚呼、レオン。 そんなお願いをされたら断る訳にはいかないじゃないか……!
見事にレオンの虜になってしまったミシェルは恍惚とした表情を浮かべながら首を小さく縦に振ってそれを承諾した。
「ありがとう、ミシェル」
それじゃ、とレオンは同調石が嵌め込まれた指輪をかざす。 彼に合わせる様に、ミシェルも指輪をかざした。
「『同調』!」
その瞬間、二人は蒼い光に包まれ、一つとなった。
行くぞ、ミシェル。 とレオンは彼女に意思を送って体術を行う。
凄い……。 洗練された全く無駄の無い動き。 感覚が伝わってくる……。 僕にも……、出来る気がする。
ミシェルは改めてレオンがどれ程凄い戦闘能力を持ったパートナーであるかを実感した。
故に、彼女の中に眠る闘争心が沸き上がり、敗けられないと言う感情が芽生える。
それからレオンとミシェルの同調体は体術、魔法の訓練を続けたのだった。
あれから約二時間が過ぎた。
同調している状態のミシェルは段々コツを覚えてきたのか、レオンの波長に合わせられるようになってきた。
大分板についたようだな。 身体がいつも以上に軽いのが解る。 魔法の威力も上がった。
パートナーと一体になれたのが嬉しいのか、同調状態のレオンは口元を緩めた。
(ミシェル、大分良くなってきた。 これから本題に入りたいと思う) とレオンは彼女に意思を送る。
(本題って?) とミシェルは意思を送り返した。
(あの双子兄弟に勝つためにどうしても覚えて欲しい魔術があるんだ)
レオンはそう意思を送って、その魔術を使用した。
こ、これは……!? とミシェルは意思の中で驚愕するのだった。
翌日、午前一〇時を回った頃、上空に空砲が打ち上がる。
「レディースエンドジェントルメン! これより、魔闘祭、各学年の決勝戦を行います!」
歓声が沸き上がる。
「レオンさん、ミシェルさん。 頑張ってください!」
選手の控室にてフィリップはレオンとミシェルにそう言った。
「どうか、会長たちの敵を取って欲しい」とフィリップのパートナー、ジョニーが続く様に言った。
「敗けたら承知しないから!」と相変わらず高飛車に言うアンナ。
「あ、あのっ……、そのっ……。 が、ががっ、頑張ってください!」
アンナのパートナーのケイシーはあたふたとしながら頭を下げた。
「ありがとう、皆!」とミシェルは微笑んだ。
「頑張ってくるよ」とレオンは口を横に広げて親指を立てた。
行くぞ、ミシェル! とレオンは彼女と共に闘技場のステージへと向かっていった……。




