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短編集

怪物としての銘は食人鬼

一番古い記憶は母の子守唄。

母は穏やかに微笑みながら全てを呪っていた。

呪いのように紡がれる唄は、怒りと憎しみの猛毒を俺に染み込ませていった。

どんな理があるのか、どんな途を辿ったのか。少しも知らないけれど。

汚れた生まれは悪たれと願われ厄と成った。

人を食らわなくては生きていけない鬼。

それが俺だ。

母の子守唄を聞きながら微睡みの中で母を生きたまま食べる俺を、変わらぬ微笑みで母が祝福した時。食人鬼はその産声を高らかにあげたのだ。


怪物である俺の生涯は波乱に満ちていた、と思う。

しかし、思い返せば運命を変えるような出会いはたった四度しかなかった。


一度目は深い森の中。俺は青年期を迎えていた。

絶えぬ飢えと渇きを覚えながら動物達と暮らしていた俺は遂に彼らと出会うことになった。

狩人というには何処か堕ちた雰囲気の彼らは、おそらく密猟者と呼ばれる者達であったのだろう。

獲物を求め森の深くまでやってきた彼らを見て、俺は初めて自分の()を知ったんだ。


それから俺は餌を探して歩き回るようになった。

初めは森の浅い所へ。次第に森の付近まで。そして半年経つ頃には少し離れた村にまで。

村の人間を食い尽くした俺は第二の運命の出会いを迎えた。

俺の父親である呪われた怪物、不死王(ノーライフキング)に。


夜の支配者、常軌を逸脱した超越者。

災厄とされる人型の化生が俺の父だ。

どんな意図で母に種を落としたのか知らない。

確かなことは、父である男は子である俺に欠片も関心を持っていないことだけだった。

それでも俺に知識を授けたのは、どんな気まぐれだったのだろう。

兎に角そうして俺は人並みの知能を持つに至った。


態度や関係を除けば、あの男は間違いなく良い親であったと思うよ。

狩りに必要な卓越した身体能力は男譲りであるし、男が教えてくれた戦略的思考や知識は生涯役に立った。

怪物としての雛形を作ったのが母であるなら、それを精錬し完成へと昇華させたのは父といえよう。

父が俺の元から去った後、俺は後世に名を残す伝説の怪物として歩み始めたのだ。


三度目はそれから二年経った頃。

噂程度に有名になってきた俺を、某国の王子が騎士としてスカウトしてきたのだ。勿論俺が人食い化け物と知った上での行動だ。正気じゃない。

王子は人を殺す大義名分と安定した生活を。俺は比類なき戦闘力を。利害は一致していたが、我ながら口車に乗せられた感が否めない。

そもそも普通化け物相手に対等に交渉しようとする奴などいないだろう。

やはりあいつは頭がおかしい。


騎士として俺は名前が必要になった。

母は勿論父にも名前を付けて貰っていなかった俺は名無しであった。(食人鬼は種族名だ。化け物に名前はない)

だから俺の名付け親は実は王子だった。

名付けだけは普通で良かったと心から思う。それほど破天荒な男だったよ、王子は。両刀だしな。


ごほん。王子の話になるとつい感情的になってしまう。

人としての俺の大半はあいつと共にあった訳だから仕方ないかもしれない。

そうだな、そもそも人として俺を掬ってくれたのは王子と言えるだろう。


最後の出会いの話をしようか。

俺を人にしたのが王子なら、彼女は俺を人としていかせてくれた人だ。

アーストレア・ユグノ。

俺が最後に食べた人で、一番美味しかった人だ。

誰もが崇める聖女様に俺は心底惚れていた。

「自分を食べるまで他の人を食べるな」

酷い約束と思わないか?

食人鬼に対して人を食べるなだなんて酷いだろう。

何より彼女は俺が初めて食べたくないと思った人だった。


その癖最後には「食べて良いよ」ときた。

酷い話だよ、本当に。結局あれから俺は人を食べてないんだから。


おっと、騎士団のお出ましか。

それじゃぁ化け物はさっさと闇に消えるとしよう。

しかしあんたも相当正気じゃないね。

助けて貰ったとはいえ、化け物に襲われた後で化け物に取材するか?普通。

あの王子の同類がいるとは世界はやっぱり広い。


そういえば名乗り忘れていたな。

俺はゲオルギウス。ゲオルギウス・レーベンへイムだ。


読んで頂きありがとうございます。


ここから登場人物小話。


・ゲオルギウス

初めこそ気取って語り出すものの、gdgdいえ話し言葉になっちゃう主人公は基本的にお馬鹿さんです。人並みとは何なのか。

半人なだけで不老不死の化け物です。

別に飲まず食わずで生きていけるという。

実際、聞き手と会うまで数百年の時が流れている設定。伝説上では死んでいますが。


容姿は、三下ヤンキー風イケメン。

騎士服が似合わない騎士団長として後世に残ってしまっている。当然着崩す。

身体能力は人外なので雑魚風ボス。


・王子

馬鹿と天才は紙一重。王子はどちらかというと馬鹿。

主人公雇用理由は「なんか波長が会う気がした」。とんでも理由で鬼才を呼び込む天才。

彼の幸せが周りの幸せに繋がると言われるほどの幸運の持ち主。それは勘違いされるレベルである。

後世の評価は賢王だが城の問題児であった。


容姿は、何処にでもいそうな凡人。

ただし言動は破天荒。

派手に動く地味メン。


・聖女

おれのかんがえたさいきょうのヤマトナデシコ。

晩年には肝っ玉母ちゃん化した。

初めは主人公に怯えてた。

実は主人公と両思いだったがすれ違った。

と色々設定はあるが既に思い出の人物である。


容姿は、黒髪ロングの美少女。

聖女という評価に違わぬ穏やかなオーラを纏っている。

無乳。


・パパン

現在も健在です。

唯我独尊天才男は基本闇属性だと作者は思う。

ママンのことは好きだけど、ちょっと領土問題で離れてた→帰ったら息子に食われてた。

息子を八つ裂きにしなかったことが奇跡。

化け物の癖に天に召される前代未聞を起こす予定。でもまず死なない。

ちなみにドジっ子。


容姿は、銀髪オッドアイの厨二好みの美形。


・ママン

開幕発狂してるママン。ちょっと情緒不安定になってただけだよ!

人間嫌いになる前はぽややんとしたおっとり女子だった。

苛めは人を変えるのです。

パパンと息子の事を愛しすぎてるヤンデレ。


容姿は、美人ではないが可愛い女性。


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