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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
1st Stage
7/40

けじめ

~光太Side~






「これからも、ずっとお前のそばにいてやる」






「ありがとう」






友菜の必殺技である鈍感スルー能力は、今日も健在のようだ。






これでも、結構踏み込んだつもりだったんだが…






仲直りの勢いで、告白まがいのことを言ってみたが、失敗に終わった…






友菜に気持ちを伝えるには、好きって言って抱きしめるか、キスでもしないと気付かないんだろうな…






恋愛は、タイミングが命だとよく言われる。






あるタイミングではお互いを好きあっていても、様々な人間関係の中で、気持ちが変わってしまうことがあるという意味だろう。






普段から俺達は一緒にいて、良い雰囲気のシチュエーションになりにくいから、告白のタイミングは難しい。






いつチャンスが訪れるのだろうか。






まずは喧嘩の原因になった清水のことに、明日けじめをつける。






はっきり言うことが、お互いのためになると俺は思うから。






この問題をすっきり解決してから、次こそはっきりと好きだって伝える。






でも正直怖い気持ちもある。






告白したら、どっちに転んだとしても、今のままの関係ではいられなくなる。






例え付き合えたとしても、もし別れてしまったら、もう幼なじみとしてもいられなくなる。






それなら、友菜の1番の男でいられればいいと思う時期が、ずっと続いてきた。






でも俺は、東京の大学に行く。






そうすると、もう今みたいに頻繁に会うことができなくなる。






だから、今年中に決着をつけなければならない。






翌日






プルルルル…






「もしもし、光太先輩から電話を掛けてきてくれるなんて、初めてですね。もしかして、デートのお誘いですか?」






「いや。ちょっと話がある」






「へぇ~あたしにとって、良い話ですか?」






「……」






「悪い話ですか?」






「さあな」






「いいですよ。何にしても、光太先輩に誘われたら、断る理由はありませんし」






「15時にイオンの中にある、マックに集合でいいか?」






「15時にマックですね。わかりました。それでは失礼します」







翌日






マックに到着すると、すでに清水は来ていた。






「先輩、女の子を待たせるなんてダメですよ」






「悪い」






「とりあえず、なんか頼みましょうか」






「ああ。今日は、俺が金出すから」






「優しいんですね。普通の女の子なら、勘違いしちゃいますよ」






「俺が誘ったんだから、俺が金を出すのは、当たり前だろ?」






「じゃあお言葉に甘えて、おごってもらいますね。アップルパイと、オレンジジュースでお願いします」






「わかった。先に席取っておいてくれ」






「了解で~す」






清水に席を取らせ、列に並んだ。






お金を払って、商品を持ち、清水の元に向かう。






「お待たせ」






「ありがとうございます」






席に着く。






「それで、先輩のお話って何ですか?」






「何で、俺なんだ?」






「へっ?」






「毎日練習が終わるたびに、話しかけてくるだろ」






「そんなの、光太先輩が好きだからに決まってるからじゃないですか」






「その気持ちは、1人の人間としては、すごくありがたいことだ。でもその思いは決して報われることはない」






「…坂本先輩のことが好きなんですか?」






「そう。俺は物心ついた時から、ずっと友菜のことが好きだ。だから、清水の気持ちに答えることはできない」






「そんなの、今は好きでも、気持ちが変わるかもしれないじゃないですか?そうしたら、あたしにもまだチャンスがあるってことですよね?」






「絶対に気持ちが変わることはない。俺は友菜のことしか見えてねえから」






「でも坂本先輩は、光太先輩のことを、1人の男としては見ていないと思いますよ?」






「だから、近々告白しようと思ってる」






「そんな確率の低い賭けに出るんですか?」






「たとえその場ではフラれたとしても、俺を異性として意識させることで、気持ちが変化する可能性があると思ってるから」






「へ~ずいぶん強気なんですね」






「まあな。俺は絶対友菜と付き合いたいって思ってるから」






「光太先輩の気持ちはよくわかりました。でもあたしだって、光太先輩を運命の相手だと思ってるんで」






「どういうことだ?」






「それは言えません。とりあえず今日の所は引き下がりますけど、まだ光太先輩をあきらめた訳じゃないですから」






「ちょっと待てよ。まだ話は終わってねえぞ」






「おごっていただいてありがとうございます。失礼します」






清水は一方的に話を切り上げて、この場から立ち去った。






俺の気持ちはわかったと言っていたが、納得している様子ではなかった。






もうどうすればいいか、俺にはわからねえ…






「あれ?光太君?」






「唯香ちゃん。どうしてここに?」






「お母さんと一緒に買い物に来てたの。光太君こそどうしたの?」






「清水とマックで話をしてた。友菜のことが好きだから、清水とは付き合えないっていう話をしてたんだけど、逃げられちまった…」






「そうなんだ…でもあの子には何言っても無駄だと思うよ」






結局、清水を説得することは出来なかった。






もし無理やり説得して、俺と清水の関係が悪化したら、個人の問題だけではなく、野球部の皆にも迷惑がかかってしまう。






なぜなら上級生のマネージャーが卒業してしまって、今は清水が1人でマネージャーをやっているからだ。






もし清水がマネージャーを辞めるなんてことになってしまったら、マネージャー不在のまま、練習を続けていくことになってしまう。






そうなることだけは、絶対に避けなければならない。






せっかく府大会ベスト4まで行って、皆のやる気が出てきているのに…






ここで俺は、1つの決断を下すことにした。






最後の夏の大会は、勝ち進んだとしても、8月には終わる。






8月までは野球に集中し、友菜への想いは封印しようと思う。






俺個人の問題と、チーム全体の問題。






どっちが大事かなんて、わかりきっていることだ。






今はキャプテンとして、チームを甲子園に導くことが最も重要なこと。






「そうだな…今は野球に集中することにする」






「うん。あたしもそれがベストだと思う。そういえば、友菜と喧嘩したんだよね?」






「ああ。ちょっと清水のことで…」






「やっぱり…でも友菜には悪気がないと思うから、許してあげてね」






「分かってる」






「ところで、勇気君がこっちに帰って来たの知ってる?」






「ああ。生徒会の会計してるらしいな」






「あたしの勘では、勇気君は友菜のことが好きだと思うんだけど…」






「唯香ちゃんから見て、そう見えたんなら間違いないな…昔からずっと友菜のことが好きだったし」






「ライバル出現だね」






「俺の方が友菜と長い間一緒にいるんだから、絶対渡さねえけどな」






「友菜は、光太君のこと好きだから、大丈夫だよ」






「でもその好きは、俺の好きとは違うんだけどな…」






「同じ好きでもLoveとLikeだからね…」






「唯香ちゃんこそ、智紀とはどうなの?」






「智紀?」






「智紀と出会って5年だろ?そろそろ関係が進展してもいいんじゃねえかなって思うんだけど」






「智紀のこと、友達としては好きだけど、恋愛対象には見れないんだよね。今の関係が心地いいし」






ドンマイ、智紀…






「そう言えば、唯香ちゃん、だいぶ長話してるけど、時間大丈夫?」






「やばい!お母さんのこと待たせてるんだった。じゃああたし、そろそろ行くね。あたしは、友菜と光太君がくっついてくれることを、願ってるから」






「サンキュー」






「ばいば~い」














友菜への想いを、一時封印することに決めた光太。






しかし光太はこの決断を、後に後悔することになる。






タイムリミットは、もうすぐそこまで迫っていたのである。






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