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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
1st Stage
6/40

入学式

~友菜Side~






今日は入学式。






新しい制服を身にまとった新入生達の新たなスタートの日である。






どんな楽しい高校生活が待っているんだろなとワクワクしながら登校したことを今でも覚えている。






この学校に入学してから、2年が経った。






今は生徒会長として、新入生を迎える立場になっている。






一般の生徒は休みだけど、生徒会長の仕事であたしは学校に行かなければならないから、光ちゃんに会うことが出来ない。






早く光ちゃんに謝りたかったのにな…






幸いなことに、入学式の後は予定が入っていない。






光ちゃんのほうも、野球部の練習が午前中で終わると聞いていたので、帰りに会いに行くことができる。






野球部の練習が終わるのを待って、ちゃんと話をしようと思う。






学校に到着すると、唯香が校門で待ってくれていた。






「おはよう、友菜」






「おはよう、唯香」






「あれ?元気ないね?」






「うん…ちょっと、光ちゃんと喧嘩しちゃって…」






「あらら…早く仲直りしなよ?ずるずる行くと、長引いちゃうからね」






「ありがとう」






その後、準備を終えて、入学式が始まった。






「うわ~皆、若いね」






唯香が新入生たちを見ながら、つぶやいている。






「若いって言っても、あたし達と、2つしか年は変わらないんだけどね…」






「2年前は、あたし達もこんな初々しかったのかな?」






「そうかもね…そろそろ、入学式が始まるよ」






入学式が始まった。






この後、生徒会長としてのスピーチがある。






緊張で心臓がドキドキするのを感じながら、出番を待った。






その後、式は順調に進み、いよいよあたしの出番がやって来た。






[在校生式辞。在校生代表、坂本友菜]






「はい」






先生や保護者の人に頭を下げ、ステージに登る。






[新入生起立、礼、着席]






一礼し、話を始める。










「校庭の桜が咲き誇り、満点の青空が、皆さんの新たなスタートを祝福してくれているように感じます。






新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。






あたしはこの学校で生徒会長をしている、坂本友菜です。






今日から、皆さんの高校生活が始まりますね。






今、皆さんはどんな気分で、今日という日を迎えているでしょうか?






義務教育の期間も終わり、いよいよ自分で道を切り開いていくことを求められるのが、高校生だと思います。






皆さんに一つ言いたい事があります。






もし何かをするかしないかを迷う場面があったら、迷わずするほうを選んでみてください。






何もしないということは、自分自身を成長させるチャンスを逃してしまいます。






何をしたらいいかわからない時は、まず目標を立ててみましょう。






そして実際に実行してみましょう。






1番大事な事は、続けることだと思います。






何事も続ける習慣を身につけることが、これからの人生における大きな糧になると思います。






高校生活において、様々な壁にぶち当たり、苦しいこともたくさんあるかもしれませんが、そこを乗り越えた時にだけ得られるものが、必ずあると思います。






少しずつでもいいので、未来の自分というものを想像しながら、高校生活を送ってみてください。






そうしたら、自然と自分の進むべき道というものが、見えて来ると思います。






最後になりますが、皆さんの高校生活が充実したものになるよう祈っています。






そしてよりよい東舞高校になるように、あたし達在校生も含めて、一緒に頑張っていきましょう。






簡単ではありますが、在校生代表挨拶とさせていただきます。






ありがとうございました」






平成19年4月9日 東舞高校 生徒会長 坂本 友菜








あたしが、1年の時に、こうすれば良かったと思っていたことを、半分は自分に言い聞かせながら、読み上げた。






今からでも、遅くない。






高校生活最後の1年間で、何か将来への道筋を見つけたいと思う。






[新入生、起立、礼、着席]






パチパチパチ






大きな拍手を受けながら、壇上を後にした。






その後、順調に式は進み、やがて終わりを迎えた。






1つ大仕事を終えたが、あたしには今日まだやり遂げなければならないことが、残っている。






「やっと終わった~友菜は、これからどうするの?」






「光ちゃんと仲直りしたいから、野球部の練習が終わるまで待ってるよ」






「そっか…友菜とどこかに遊びに行きたいなと思ってたんだけど…」






「ごめんね…」






「ちゃんと仲直りするんだよ」






「うん、ありがとう!ばいばい」






「ばいばい」






こうして、唯香と別れた。






よ~し!頑張れ、友菜!






頬を叩いて気合を入れてから、グラウンドに向かう。






ちょうど練習が終わって、帰ろうとしている時のようだった。






光ちゃんは智紀君と笑いながら、こちらに向かって歩いてきている。






緊張してきた…






グラウンドの外まで、早く出てきてくれないかな…






そう思いながら、光ちゃんを待っていると…






「あっ!友菜ちゃんだ」






あたしに気付いた智紀君が、声を掛けてきた。






気まずい…






思わず目を逸らす。






「と…智紀君、お疲れ様」






しかも智紀君にだけ、お疲れ様って言ってしまった…






智紀君は、あたし達の微妙な空気に気付いてしまったようで…






「あれ?2人ともどうしたの?喧嘩でもした?昨日は普通だったのに」






「……」






「……」






しばらく、無言が続いてしまった。






このままじゃダメだ!






話し合いたいって言わなきゃ!






「光ちゃん、話があるの」 「友菜、話がある」






意を決して話し始めた瞬間、光ちゃんも同じタイミングで言ったので、見事にかぶってしまった。






「じゃあ、お邪魔虫はこれで去りますよ~諸君の健闘を祈る」






「悪いな」






「ごめんね、智紀君。ばいばい」






智紀君が去り、あたし達が取り残された。






「どうする?」






「ゆっくり、話し合える場所に行こうぜ」






「じゃあ、いつもの公園にでも行く?」






「そうだな」






あたし達の家から、徒歩1分の所に、公園がある。






小さなベンチと、2つのブランコと、砂場と、滑り台しかない、小さな公園だ。






2人でベンチに腰掛ける。






「昨日は悪かったな。いきなり怒ったりして」






「あたしこそ、ごめんね…」






「いや…俺が一人で怒ってただけだから、お前は何も気にしなくてもいい」






「光ちゃんがそう言ってくれるなら、あたしはいいんだけど…」






あたしが話を切り出す前に、光ちゃんが謝ってくれた。






「子供の頃、よくこの公園で遊んだよな」






「うん。なつかしいね」






子供の頃に、靴飛ばしが流行っていて、ブランコに乗りながら、自分の履いている靴を、どちらが遠く飛ばせるのかということを競っていた。






お互い靴を飛ばしては、道路を超えた畑まで、けんけんで靴を取りに行ったことを、今でも覚えている。






「何で人と人との関係って、変わらずにはいられないんだろうな?」






「う~ん…それが大人になるってことじゃないのかな?」






「それなら、大人になりたくねえな」






光ちゃんが、弱音を吐くなんて珍しい。






「確かに一生子供のままのほうが、楽しいかも」






「おまえは今でも子供だろ」






「そんなことない!あたし高校生だよ?」






「見た目だけはな」






「じゃあ精神年齢が子供ってこと?」






「よく分かってんじゃん」






「ひどい!」






「付き合わねえから」






「へっ?」






「昨日の質問の答え。清水とは、付き合わねえ」






「うん」






「これからも、ずっとお前のそばにいてやる」






「ありがとう」






「どうせ、意味わかってねえだろうな…」






「へっ?」






「まあいっか…この話はもう終わり。腹減ったし、そろそろ帰ろうぜ」






なんだかよくわかんないけど、光ちゃんはもう怒っていないようだ。






でも結局なんで怒ってたのか、聞きそびれちゃったな…






だけど、もう話を蒸し返すなって雰囲気だったし…






公園から徒歩1分、お互いの家に到着した。






「明日は学校休みだから…月曜日は朝練あるの?」






「ああ」






「そっか。じゃあ、月曜日にまた学校でね」






「じゃあな」






「ばいばい」






こうして光ちゃんと別れ、家に帰った。






「ただいま」






「おかえり。光太君と仲直りできた?」






「うん。なんとかね」






「良かったじゃない」






「ありがとう」






部屋に戻る。






「あっ」






携帯を開くと、メールが来ていた。






From 唯香






あたしの予想:光太君が謝って、あっさり解決。






完全にあたし達の行動を読まれてる…






確かに喧嘩をした時は、光ちゃんのほうから謝ってくれることがほとんどだった。






あたしがすねちゃったときも、客観的に見てあたしが悪いかなって時でも、いつもあたしに歩み寄ってくれる。






そんな広くて優しい心を持っている光ちゃんを、あたしは尊敬している。






「友菜、ご飯よ~」






「は~い」






下に降りると、なぜかさっき別れたはずの光ちゃんの姿があった。






「あれ?光ちゃん、どうしたの?」






「美雪さんに呼ばれた」






「お母さんが呼んだの?」






「そうよ。今日は仲直り記念で、友菜と光太君の大好物、ハンバーグよ~」






「やった~」






昔は週に1回は、お互いの家を行き来して、ご飯を食べていた。






しかし最近では誕生日の時くらいしか来てなかったので、今日来てくれて驚いたけど、子供の時に戻ったみたいで嬉しいな~






その後、お父さんも帰って来て、久々に4人で晩ご飯を食べた。






お父さんと光ちゃんは、お互いに野球が好きで、タイガースファンのため、話が合う。






今もテレビの野球中継を見ながら、語り合っている。






お父さんも、光ちゃんが久しぶりに来てくれて嬉しいのか、珍しく饒舌だ。






ひたすら2人で語りあって、光ちゃんは帰って行った。






「お父さん、お母さん、おやすみ」






「ああ、おやすみ」






「おやすみ、友菜」






こうして、激動の1日は終わりを告げた。



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