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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
1st Stage
4/40

再会

生徒会室は1階にある。






文化部の部室棟の突き当たりだ。





「唯香、早く~」






「生徒会長のあんたが階段を走ってどうすんの…危ないよ」






「大丈夫だって」






そう言いながら、曲がり角に差し掛かった。






その時!






ドン






左から歩いてきた男の子と、ぶつかってしまった。






「ごめんなさい…大丈夫ですか?」






「は…はい」






良かった…






ぶつかった男の子を見る。






なぜか顔を赤くして、うつむいている。






そういえば、この子どこかで見たことがあるような…






あっ、思い出した!






野球部の2年生の子だ!






「君、野球部だよね?」






「は…はい」






「やっぱり!お名前は?」






「す…すいません…失礼します」






そう言うと、逃げるように、猛スピードで去って行った。






「ほら、言わんこっちゃ無いでしょ。だから危ないって言ったのに」






「うん…でも怪我無くて良かった~」






「友菜は本当危なっかしいよね」






「よし!気を取り直して、生徒会室に行こう」






「ちょっとは反省しなさいよ…」






生徒会室の前に到着した。






ガラガラ






「失礼しま~す」






案の定、人の姿はなかった。






思ったよりも、中は広々としている。






3人で使うには、十分すぎる大きさだ。






近くの椅子に腰掛ける。






もうちょっとしたら、会計の子も来るだろう。






「智紀のやつ、相変わらずうるさいよね。文句ばっか言ってくるし」






「智紀君は、唯香にかまってもらいたいから、ちょっかいを出すんだよ」






「今年もあいつの相手しなきゃならないのか。めんどくさいな…」






実は唯香と智紀君は、高校に入ってから、3年連続で同じクラス。






さすが運命共同体だ。






そんな話をしていると…






ガラガラ






大きな音と共に、勢い良くドアが開かれた。






「遅れてすいません!」






そこに現れたのは、眼鏡をかけたおとなしそうな子だった。





「友菜先輩ですよね?お久しぶりです。僕のこと、覚えてませんか?」






「えっ?」






「昔、近所に住んでた松島勇気です」






松島勇気…






勇気君!






「思い出した!勇気君、久しぶりだね。眼鏡かけてたから、一瞬誰だかわかんなかったよ!」






「友菜、知り合いなの?」






「うん。昔、光ちゃんも含めて、良く3人で遊んでたんだけど、勇気君が小学校4年生の時に引っ越しちゃって…いきなりいなくなっちゃったから、連絡先もわかんなくて、それっきり会ってなかったんだよね」






「あの時は、すいませんでした…」






「いつ、こっちに帰ってきたの?」






「今年の1月に、帰ってきたんです」






「そうなの?じゃあ、声掛けてくれたら良かったのに」





「忘れられてたらと考えると、勇気が沸かなくて…」






「そっか~まあ今日こうして会えたから良かったよ!」





「はい。そういえば、光太先輩は元気ですか?」






「元気だよ~幼なじみとして、今も仲良くやってるよ」






「そうですか。やっぱり、"幼なじみ"なんですね…」






「うん?」






「いえ、何でもありません」






「そういえば、まだあいさつしてなかったよね。あたしは、副会長の藤村唯香。よろしくね」






「会計の松島勇気です。よろしくお願いします」






2人は、がっちり握手を交わした。






「勇気君、よろしくね」






「こちらこそ、よろしくお願いします」






あたし達も、握手を交わす。






「とりあえず、今日は顔合わせだけの予定だったんだけど、何か言いたいことある人~」






「何もな~い。いいんじゃない、そんなに焦ることもないだろうし」






「そうですね」






「これから本格的に活動するってことで…今日は解散!」






「先輩方は、これからどうされるんですか?」






「光ちゃんと帰る約束をしてるから、野球部の練習が終わるまで待ってるかな」






「あたしは友菜の付き添いで、一緒に待ってるよ」






「そうなんですか。じゃあ僕は、吹奏楽部に行ってきますね」






「勇気君、吹奏楽部に入ってたの?」






「はい」






「そうなんだ。頑張って来てね」






「ありがとうございます。それでは、お先に失礼します。」






「「ばいば~い」」






勇気君は生徒会室を後にした。






「結構イケメンじゃん。幼なじみの勇気君」






「勇気君のこと気に入ったの?」






「うーん…イケメンだけど、かわいい弟系じゃん。あたしはもっとザ・肉食系って感じのほうが、タイプなんだよね」






「そうなんだ」






「あたしじゃなくて、問題は友菜のほうでしょ?」






「あたし?」






「光太君に、ライバルが出現しちゃったか。光太君もこれから大変だよね」






「なんで、そこで光ちゃんが出てくるの?」






「これだから友菜は…友菜は勉強できるけど、恋愛の偏差値はかなり低いよね」






「ひどいよ~唯香」






「あんたは、もうちょっと、恋の勉強をしなさい」






「でもあたし、唯香みたいにモテないし…」






「まあいいや…本人が気付かないと意味無いし」






「ちょっと~教えてよ~」






「ほら、早くグラウンドに行くよ」






「待ってよ~」






グラウンドに到着。






マウンド上には、光ちゃんが立っている。






どうやら紅白戦が行われているようだ。






あたし達の通う東舞高校は、ごく普通の公立高校である。






光ちゃんや智紀君達が来るまでは、万年1回戦敗退のチームだったそうだ。






しかし光ちゃんと智紀君の大活躍もあり、昨年の秋の府大会で、ベスト4まで躍進を遂げたのである。






「集合~」






光ちゃんの声が響く。






どうやら、今からミーティングが始まるようだ。






「もうすぐ練習終わりそうだね」






「光ちゃんに、勇気君のことを話さなきゃ!」





ミーティングが終わり、各自バラバラに歩き出した。





光ちゃんに近づいて、声を掛けようとしたその時!






「光太先輩、お疲れ様です!」






突然、光ちゃんに話しかける声が聞こえてきた。






マネージャーかな?






そのまま、喋り始めてしまった。






「またあいつ、光太君に話しかけてるよ…」






「唯香、あの子のこと知ってるの?」






「何で知らないのよ…あの子は2年の清水飛鳥。光太君が好きで、マネージャーになったってうわさの子よ」






「へぇ~そうなんだ」






「そうなんだ~じゃないでしょ…」






清水さんは、楽しそうに光ちゃんと話しをしている。






「ほらっ!早く光太君を呼ばないと」






「えっ…でも邪魔しちゃ悪いし」






「もう友菜はこれだから…お~い、光太君~」






唯香が大声で、光ちゃんを呼んでいる。






光ちゃんは気づいたみたいで、清水さんとの話を終わらせて、こっちに向かって歩いてきた。






「光ちゃん、お疲れ様~話の途中じゃなかったの?」






「別にたいした話じゃねえから」






「お~待っててくれたのか」






智紀君もあたし達に気づいたみたいで、こちらにやってきた。






「あんたなんて待ってないわよ。光太君を待ってる、友菜の付き添い」






「まあいいや、早く帰ろうぜ」






「じゃあ、帰ろうか」





「光太、清水さんと何を話してたんだよ?」






「別にいいだろ」






「あたし、あの女嫌いだな。性格が悪いって評判だし」






「そう?いい子そうに見えるんだけど…」






「友菜は、ほんと人に対して好き嫌いがないよね。まあそれが、友菜のいい所なんだけど」






話をしている内に、いつもの分かれ道にたどり着いた。






「ばいばい」






「また明日~」






2人と別れ、あたし達だけになった。






「そういえば、会計の奴どんな奴だった?」






「聞いてよ~昔、近所に松島勇気君っていたでしょ?」






「松島勇気?懐かしい名前だな。昔良く一緒に遊んだよな」






「なんとその勇気君が会計の子だったの!びっくりしたよ!」






「あいつ、こっちに帰ってきてたのか?」






「今年の1月に、帰ってきてたみたい」






「そうか。でも1回も勇気の姿を見てねえな」






「今は違うところに住んでいるから、会わなかったみたい。でもまた3人で遊ぼうね」






「そうだな」






「良かったよ。光ちゃんが心配したような変な人じゃなくて」






「まだわかんね~だろ。あいつが引っ越してから7年もたってるんだし」






「メガネ掛けてたから、見た目は少しおしゃれになってたけど、優しい雰囲気は昔と全然変わらなかったよ」






「雰囲気だけじゃなくて、7年前と気持ちも変わってなかったとしたら、俺としては見知らぬやつよりも、タチが悪いかもな…」






「気持ち?」






「お前は気にしなくていいんだよ」






「そういえば、野球部のマネージャーさん、清水さんって言うんだね」






「ああ」






「清水さんっていい子だよね?」






「まあ野球のことをちゃんとわかってマネージャーやってくれてるから、そういう意味ではいい子なんじゃねえの」






「そうだよね。何で唯香は、あんなに悪く言うんだろうね?」






「さあな」






「光ちゃんと清水さんって仲良しなの?」






「別にそうでもねえよ」






「そっか。もし清水さんに告白されたら、付き合っちゃうの?」






「…お前には、関係のない話だろ」






「関係ないってひどいよ…そんな言い方をしなくてもいいじゃん!」






「そんな話はしたくねえんだよ。じゃあな」






「えっ…ちょっと待って!」






バタン






光ちゃんは、話を一方的に切り上げて、家の中に入って行ってしまった。






光ちゃん怒ってたな…






しばらく、呆然と光ちゃんの家の玄関を眺めていた。






「ただいま…」






沈んだ気持ちのまま、玄関の扉を開ける。






「おかえり、友菜。学校どうだった?」






「うん。光ちゃんも唯香も智紀君も、一緒のクラスだったよ」






「良かったじゃない!でもその割には、あまり嬉しそうじゃないわね」






「嬉しかったよ。でも帰りに、光ちゃんと喧嘩しちゃったんだ…」






「あらら…原因は何だったの?」






「清水さんって言う野球部のマネージャーをしている子がいるんだけど、光ちゃんと仲良さそうに話してたから、もし告白されたら清水さんと付き合っちゃうの?って聞いたの。そしたらおまえには関係ないって言われて、あたしを置いて、自分の家に帰っちゃったんだよね…」






「なるほどね…これはどっちが悪いとかじゃないんだけど、光太君の気持ちも少しは分かるな」






「そっか…」






「例えば、逆の立場に立って考えてみるのよ」






「逆?」






「友菜が男の子と一緒に話してて、それを光太君に見られてたとするでしょ」






「うん」






「その男の子と付き合うのって光太君に聞かれたら、友菜はどう思う?」






「う~ん…うまく言えないけど、ちょっと寂しいかも…」






「光太君も、そんな気持ちになったんじゃない?」






「そうなのかな?明日、光ちゃんにちゃんと謝ってみる」






「うん。きっと光太君も許してくれるよ」






階段を上がって、自分の部屋に戻った。






[友菜は鈍感だから、光太君も報われないわよね…いつになったら、光太君の気持ちに気付くのかしら…]






お母さんの独り言が、あたしの耳に届くことは無かった。






部屋でのんびり雑誌を読んでいると、ご飯の時間になった。






下に降りると、香ばしい香りが広がっていた。






今日の夕食は、どうやらカレーのようだ。






「いただきま~す」






「いただきます」






「お父さん、お母さん。昔、近所に住んでた、松島勇気君って覚えてる?」






「もちろん覚えてるわよ!懐かしい。勇気君が引っ越した後、友菜ずっと泣いてたわよね」






「勇気君がどうかしたのか?」






「うん。勇気君がこっちに戻ってきてて、今日会ったの!」






「良かったわね!」






「うん!でも眼鏡かけてて、最初に会った時、誰だかわかんなかったよ」






「あの時から7年経つのか。時が過ぎるのは早いわね」






でも勇気君と7年ぶりに会ったのにもかかわらず、違和感なく話すことが出来たから良かった。






「ごちそうさま」






自分の分の洗い物を済ませ、部屋に戻る。






塾の宿題をやって、お風呂に入った。






「お父さん、お母さん。おやすみなさい」






「おう、おやすみ」






「おやすみ、友菜」






ベットに入って、考え事をする。






今日は、ジェットコースターのような1日だったな…






クラス発表






唯香と光ちゃんと智紀君と同じクラスになることが出来て、凄く嬉しかった。






渡辺先生も面白い先生で、学校生活が楽しくなりそうな予感がする。






生徒会






勇気君と7年ぶりに再会することが出来て、凄く嬉しかった。






帰り道






光ちゃんと喧嘩した…






光ちゃんのことなら何でも分かってるつもりだったけど、あたしの知らない光ちゃんの想いがあるのだと知った。






今日は良いこともあったけど、悪いこともあった。






でも占いで12位っていうほど、悪くはなかったような気がする。






言葉って難しい…






そう痛感した1日だった。



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