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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
5th Stage
39/40

エピローグ

「友菜、大変だよ!」



「どうしたの?」



ある日、家でくつろいでいたら、突然、唯香から電話がかかって来た。



「川越君が東京に行っちゃう!」



「えっ…いつ?」



「今日」



「うそ…」



「石原君情報では、19時にここを出るらしいから、早く行かないと、会えないまま離れ離れになっちゃうよ。それでもいいの?」



「そんなの嫌だ…すぐ行く!」



「東舞駅からの新幹線に乗って、京都経由で東京に行くらしいよ」



「わかった。ありがとね」



ピッ



時計の針は18時30分を少し過ぎた所。



お母さんがいないから車では行けないけど、自転車を飛ばせば、なんとか間に合う時間だ。



和馬君、あたしに何も言ってくれなかった…



その事実にショックを受けつつも、急いで東舞駅に向かった。



こんな時に限って、天気は雨。



「雨のバカ~」



なぜか雨に文句を言いながら、自転車を走らせる。



15分ほどで駅に到着した。



まだ新幹線は出てないよね?



あたしは慌てて和馬君を探す。



皆、ずぶ濡れになったあたしを不思議そうな目で見てくる。



でもそんなことを気にしている場合ではない。



周りを見渡す。



いた!



改札の前に和馬君の姿。



「和馬君!」



あたしは和馬君の名前を呼びながら、走り出した。



「友菜…」



和馬君は驚きの表情を浮かべている。



あたしは脇目も振らず、和馬君の胸に飛び込んだ。



「おまえ、ずぶ濡れじゃねえか」



「行っちゃやだ!」



「はっ?」



「和馬君、東京に行っちゃうんでしょ?」



「行くけど…」



やっぱり本当だったんだ…



「どうして、何も言ってくれなかったの?」



「はっ?」



「今からキャンセルとかって、出来ないの?」



「ムチャ言うな。前々から決まってたし、無理だな」



「ひどい!」



「はっ?」



「それなら、あたしの告白を受け入れないでよ!」



「ちょっと待て!」



「これから、お互いのこと知っていこうねって、約束したじゃん!」



「落ち着け!」



「落ち着けないよ!幸せがもう終わっちゃうなんて嫌だよ…」



「だから、俺の話を聞けって!」



「嫌だ。聞きたくない!」



「最終手段だな…」



和馬君はあたしの手を引いて、人気の無い駐輪場の裏に連れて行った。



そして…



「んんッ」



あたしの肩を掴み、キスをして来た。



「どういうこと?これは惜別のキス?」



「いい加減にしろ」



「だって…」



「おまえは、何か勘違いをしている」



「勘違いも何も、東京に行っちゃうんでしょ…」



「ああ。1泊2日でな」



「やっぱり!ってあれ?1泊2日?」



「明日、株主総会があるんだよ。親父にも立場があるから、いくら仲が悪いとはいえ、どうしても行かなくちゃいけねえんだ。せっかくの休日なのに、遊べなくて悪いな」



「いいの。ハハッ…良かった…良かったよ~」



あたしは和馬君に抱きついた。



「まったく…おまえは俺がどうなると思ってたんだ?」



「東京に行ったまま、帰ってこないかと思って…」



「誰から聞いたんだよ…」



「唯香に聞いたんだけど…」



「藤村?」



「うん…」



「あいつにそんな話をした覚えはねえな…」



「そうだよね…そういえば、唯香は石原君から、出発する時間を聞いたって言ってたよ」



「犯人は石原か…どうせ電車にはもう間に合わねえし、文句でも言ってやらねえと、気が済まねえな」



「ごめんね…あたしのせいで電車に乗り遅れちゃって…それと勘違いして、暴言を吐いて、ごめんなさい…」



「友菜は悪くねえよ。どうせ明日の昼までに着けばいいし、今から新幹線の予約を取り直しても間に合うから、気にするな」



「うん。ありがとう」



あたしはホッと胸を撫で下ろした。



「ちょっと電話かけてもいいか?」



「うん」



和馬君は、どこかに電話をかけ始めた。



きっと石原君の所だろう。



♪♪



「えっ?」



人気の無いこの場所に、携帯音が鳴り響いた。



[ちょっと石原君!何で携帯、マナーにしてないのよ]



[プライベートでは普通、マナーにしねえだろ?]



[とにかく早く止めろって]



[帰りてえ…]



誰かいる?



和馬君が、音の鳴っていた方に歩いて行った。



あたしも後をついて行く。



「おまえら、何やってんだよ…」



「げっ…バレた…」



「ごめんね、川越君。どうしても智紀が来たいって言うから…」



「お…俺のせいにすんなよ!元はと言えば、石原が面白い物が見れるから、19時前に駅に来いって言ったんだよ」



「やっぱり、おまえか…」



「こんなことになるとは思ってなくて…ごめんな、坂本」



「うん…ビックリしたよ」



「坂本が勘違いに気付いたところで、ドッキリ大成功って言って、2人の前に出て行こうっていう作戦だったんだけど…」



「石原、絶交な」



「それはご勘弁を…まさか和馬さん、かなり怒ってらっしゃいます?」



「当たり前だ。おまえのせいで、電車に乗り遅れたんだから」



「俺、帰っていいか?」



1人だけ、まったく興味がなさそうだった光ちゃんが、言葉を発した。



「光太、俺達を見捨てるのか?」



「小林~助けてくれよ」



「おまえらが無理やり連れて来たんだろ?用が済んだなら帰る。友菜」



「何?」



「俺がおまえの自転車を押して帰ってやるから、コンビニで傘を買って帰るか、美雪さんに迎えに来てもらえよな。後、帰ったら、すぐ風呂入って暖まれよ。じゃないと風邪引くから」



「わかった。光ちゃん、ありがとね」



「ああ。それじゃ」



光ちゃんは帰って行った。



「さすが気が利く男だね~」



「過保護とも言うけどな…」



「いいな~あたしもあんな風に、女の子扱いされてみたいな~」



「俺がしてやろうか?」



「気持ち悪いから止めて」



「即答ですか…」



「それにしても、お熱いラブシーンを見ましたな~」



「うん。情熱的だったね!」



「言わないで~」



あの時は夢中だったから、何も感じなかったけど、よくよく考えると、唯香達に全部見られてたってことだよね?



そう考えると、一気に恥ずかしさがこみあげてきた。



「坂本、和馬ってキスうまいの?」



「えっ…そんなの分かんないよ…」



「石原、いいかげんにしねえと、マジで絶交するからな」



「ごめんなさい…和馬様、お許しを」



「まったく…」



「こら~川越~」



「今度は、おまえかよ…」



「友菜ちゃんの唇を2度も奪うなんて、絶対許さねえからな!」



「2回じゃなくて、4回だな」



「くぅ~一発殴らせろ~」



智紀君は、和馬君に向かって行った。



パシッ



「あら?」



智紀君のパンチは、あっさり片手で止められていた。



「ザコ」



そう言いながら、和馬君は遊園地のナンパ男を撃退した時のように、思いっきり智紀君の手を握った。



「やめろ!参った。ギブアップ!」



「……」



和馬君は、無言で智紀君の手を離した。



「イテテテッ、川越の握力、ハンパねえな…」



「だっさ~」



「うっせ~よ」



「川越君に、顔も身長も性格の良さも全部負けてるじゃん。おまけに、喧嘩も勝てないなんて、男としてどうしようもないね」



「男としてどうしようもなくても、好きな女に振り向いてもらえれば、それでいい」



「「えっ」」



あたしと石原君の声がハモる。



「ちょ…ちょっと!いきなり何を言ってんのよ!」



唯香が、真っ赤になって抗議している。



いつもなら、[あんたにそんなセリフ似合わないわよ]って言い返しそうな所なのに…



智紀君も、今まで見たことがないぐらい真剣な顔で、唯香を見てるし、2人とも様子が変だ。



「唯香、智紀君と何かあったの?」



おそるおそる唯香に訪ねてみる。



「別に何も無いよ…」



「友菜ちゃんに隠し事するのか?別に言ってもいいだろ」



「それはそうだけど…」



唯香は顔を赤くしながら、言い淀んでいる。



「気になる~何があったの?」



「そ…それは、また今度教えてあげるね。ほら智紀、帰るわよ」



「引っ張るなっての。友菜ちゃん、また明日学校でね」



「うん。智紀君、バイバイ」



「じゃあね、友菜」



「うん。また明日」



唯香と智紀君は仲良く?帰って行った。



「じゃあ俺もそろそろ…」



「おまえには、俺の説教タイムが残っている」



「ひぃ~和馬様~お許しを」



「石原君も反省してるみたいだし、許してあげたら?」



「仕方ねえな…今日の所は友菜に免じて、許してやるよ」



「和馬がこんなに女の子に甘い男だとは思わなかったよ」



「別に甘やかしてるつもりはない」



「そんなことないよ。和馬君、凄く優しいし、甘いと思うな」



「ノロケですか…これ以上ノロケ話を聞いてても、惨めになるだけだから、帰る」



「さっさと帰れ」



「このリア充め!」



捨て台詞を吐きながら、石原君は帰って行った。



「あいつは、何なんだよ…」



「石原君はきっと、和馬君に構って欲しいんだよ」



「男に好かれても、気持ち悪いだけだ」



「ハハッ…石原君が聞いたら、泣いちゃうよ?」



「そうだな」



「和馬君」



「何だ?」



「今日は一時的だとしても、近い内に東京に帰るとか無いよね?」



「ああ。卒業するまでは、帰らねえよ」



「良かった~」



「でも卒業したら、俺は東京に戻るかもしれない」



「うん…」



「遠距離になっても、仕方がないという覚悟が無いなら、今の内に辞めておいたほうがいいかもしれねえ。もう心音の時の様には、なりたくねえし」



「ううん。距離が離れていても、心が繋がっていれば、きっと大丈夫だよ!」



「そうだな」



「和馬君、これからも、末長くよろしくお願いします」



「何か、結婚の挨拶みてえだな」



「け…結婚?」



「今は無理だけど、将来的にはそういうことも考えていかなくちゃいけねえな」



「う…うん!」



人生山あり谷あり。



これから楽しいことだけじゃなくて、つらいことや苦しいこともたくさんあると思う。



でもどんな時でも、感謝の心を忘れずに[ありがとう]を言い続けたいと思う。



ありがとうは、人を元気にさせる魔法の言葉だから。



あたしと、和馬君の恋物語は、まだ始まったばかりだ。



ロイヤルロード(上) [完]



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