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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
5th Stage
36/40

東京

あっという間に、決戦の日がやって来た。



川越君は、あたしの家に一晩泊まった後、自分の家に帰って行った。



あれから、両親とどうなったのかは、聞いていない。



もちろん東京に帰るのかどうかも、謎のままだ。



でも今日は何も考えずに、突き進みたいと思う。



川越君とは、駅で待ち合わせ。



「ふぁ~」



手で口元を覆い、あくびを噛み殺す。



緊張からあまり寝付けず、眠たさMAXだ。



ダメダメ、気合を入れないと。



あたしは自分の頬を軽く叩いた。



「何やってんだよ…」



「か…川越君、おはよう」



「ああ。おはよう」



「眠そうだな」



「うん…緊張して眠れなかったの」



「ふ~ん」



そう言った後、あたしのことを凝視する川越君。



「ど…どうかしたの?」



「何かおまえ、いつもと違うな?」



それもそのはず。



お母さんに借りた新色のリップを付け、髪をアップにし、普段はワンピースなど、カジュアルな服装の多いあたしが、今日は白のショートパンツを履いている。



お母さんいわく[男は生足に弱いのよ]ということらしい。



スカートにしなかったのは、遊園地でスカートはまずいと思ったから。



川越君が人を見た目で判断しない人間だということは知っているけど、やっぱり好きな人には良く見られたいというのが、女の性だ。



「へ…変かな?」



「変じゃねえよ」



「良かった~」



変には思われてはいないようで、一安心だ。



一方の川越君は、黒のジャケットに、黒のデニムパンツ姿。



決して派手ではないけど、モノトーンが川越君には凄く似合っていると思う。



「じゃあ行くぞ」



「うん!」



あたし達は駅のホームに向かった。



舞亀市からは、電車で直接東京には行けないので、京都を経由して、東京へ向かうことになっている。



「川越君、荷物少ないね」



「日帰りだし、金だけあれば、なんとかなるだろ」



「ハハッ…」



「お前のカバンは結構でかいな」



「うん。お菓子がいっぱい入ってるからね」



「小学校の遠足かよ…」



「だって、川越君の好きなお菓子が分からなかったから…」



「お菓子に好き嫌いなんてねえよ」



「そっか。じゃあ、アメかガムだったら、どっちがいい?ちなみにあたしはガム派なんだけど。今、欲しいならあげるよ~」



「とりあえず落ち着け。電車に乗ってから、もらうから」



「うん…」



川越君に言われた通り、電車に乗ってから、カバンを開けて、お菓子を取り出した。



ガムを先に食べたら、他のお菓子が食べれなくなっちゃうから、後にしよ。



「アメかガムどっちがいい?」



「ミントのガムってあるか?」



「あるよ~はい、どうぞ」



「サンキュー」



川越君にガムを渡し、あたしはポテチを食べ始めた。



「おいし~い」



「あんまり食うと、昼飯が食えなくなるぞ」



「一袋くらい大丈夫だよ~」



「全部食うつもりなのかよ…前から思ってたけど、おまえって大食いなんだな」



「大食いかどうかは分からないけど、食べるのは大好きだよ~」



「あんまり食うと太るぞ」



「そうだね…太ってる女の子は嫌い?」



「別に嫌いじゃねえけど、お菓子の食べすぎは健康に良くねえぞ」



「川越君、優しいね」



「優しくした覚えがまったくないんだが…」



「だって、あたしの健康状態を気遣ってくれたじゃん」



「別に普通だ」



「ありがとう」



「ああ。おまえって、よく分からないタイミングで、ありがとうって言うよな」



「人に感謝されて、嫌な気持ちになる人はいないでしょ?」



「そうだな」



「だから少しでも人が自分の為を思って何かしてくれたら、ありがとうって言う様にしてるんだ。あたしの座右の銘みたいなものかな」



「いい心がけだな」



「うん。ありがとう」



よく人に何かをしてもらって、すいませんって言う人がいるけど、ありがとうって言ったほうがいいのになと思ったりもする。



そっちのほうが、言われた相手も嬉しいと思うんだけどな。



「早く東京に着かないかな~」



「まだ京都にも着いてねえけど…」



「トランプでもする?」



「2人でか?」



「確かに2人じゃ面白くないよね…」



「おまえ、あまり寝てねえんだろ?京都に着くまで時間かかるし、寝ててもいいぞ」



「えっ…そうしたら、川越君が暇になるじゃん」



「別に俺のことはいい。それより、途中で体調悪いとか言われるほうが、迷惑だから」



「本当にいいの?」



「ああ」



「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」



あたしはゆっくりと目を閉じる。



そういえば、ライブで大阪に行った時も、寝ちゃったよな…



そんな事を考えながら、眠りに落ちた。



……





「お~い、着いたぞ」



「う~ん…」



「起きろ」



ガンッ



「えっ?いった~い!」



「目覚めたか?」



「頭を殴られたおかげで、ばっちり目が覚めたよ」



「フッ」



「ひどいよ…もうちょっと優しく起こして欲しかったな…」



「俺の肩に、頭を乗せてるから悪いんだろ」



「ごめんね。重かったでしょ?」



「別に。そういえば、よだれ垂らしてたぞ」



「うそ~」



最悪だ…



あたしは慌ててカバンからハンカチを取り出して、口元を拭う。



「嘘」



「……」



バシッ



あたしは無言で、川越君の肩にパンチを入れた。



「暴力女」



「嘘つき男!」



「俺の肩が上がらなくなったら、どうしてくれるんだ?」



「そんなに強くパンチしてないから、痛くないはずだもん!」



「おまえの家でくらった平手打ちは、マジで痛かったけどな」



「あ…あれは、本当にごめん…」



「冗談だよ。怒ってねえから、しんみりするな」



「うん!目も覚めたし、テンションあげてくよ~」



「立ち直り早いな。それより、早く降りねえと、俺達、車庫行きだぞ」



「本当だ!早く降りよう」



「おい!引っ張るなっての」



あたしは川越君の腕を掴み、外に出た。



「京都駅って広いね~これじゃあ、どっちに行っていいかわからないよ」



「案内板見たら、迷わねえよ」



「本当だ!都会の駅は、親切に案内してくれるんだね」



「都会のほうがいいだろ?」



「ううん。田舎は人が親切だもん」



「そうだな。それにしても、おまえの田舎愛には感心するわ」



「うん。田舎LOVEだよ!川越君は隣の家の人から、お裾分けしてもらったことないでしょ?」



「ねえな」



「あたしは何回もあるよ。うらやましいでしょ?」



「別に…」



「そういえば、近くに住んでたおじちゃんに、お菓子あげるから家においでって言われて、よく家に上がらせてもらってたよ」



「知らない人には、ついて行っちゃ駄目って教わらなかったのか?」



「確かにお母さんには怒られたけど…おじちゃん、元気かな~」



そんな昔話をしている内に、ホームに到着した。



あたし達は自由席なので、自由席の車両を探す。



すぐに見つかり、ドアも開いていたので、スムーズに電車に乗る事が出来た。



発車時刻まで、まだ15分くらいある。



「ちょっとお手洗いに行ってくるから、荷物見ててくれない?」



「ああ。迷子になるなよ」



「電車の中にあるのに、迷子になんかならないよ…」



「そうだな」



「じゃあ、行って来ます」



一旦外に出て、駅員さんにお手洗いの場所を尋ねたら、3両先にあるらしい。



今いる車両を記憶してから、お手洗いに向かった。



「ふ~」



お手洗いを済ませ、自分の車両に戻って来た。



もちろん迷子になる訳は無く、あっさり自分の席を発見した。



「ほら~迷子にならなかったじゃん」



自慢気に川越君の後姿に語りかける。



「……」



あれ?



いつもなら嫌味の一つでも返ってきそうな所なのに、全く反応が無い。



「川越君?」



前に回り込むと、目を閉じている川越君の姿が目に飛び込んできた。



どうやら寝てるみたいだ。



あたしは窓際の席なので、川越君を起こさない様に、慎重に横切った。



川越君の寝てる姿、初めて見たな。



あたしは川越君を観察することにした。



まつ毛長いな~



本当に端正な顔立ちで、寝ていても絵になる。



一通り観察した後、あたしの興味は喉仏に向けられた。



女の子には無い、男の子にだけあるもの。



ふと、どんな感触なのか気になった。



喉仏触っても、怒られないよね?



あたしの手は喉仏に伸びて行った。



「おっ」



思わず声が出た。



自分の喉を触りながら比べてみると、喉仏の部分だけが固いのが分かった。



呼吸に合わせて喉仏が動く。



それが何か面白くて、ツンツンとつついてみる。



バシッ



「えっ?」



急に川越君に腕をつかまれ、あたしの腕は動かなくなる。



「何やってんだよ?」



腕を掴まれたまま、至近距離で目が合った。



「お…起きてたの?」



「おまえがいたずらするせいで、目が覚めた」



「ご…ごめんね…あたし、興味があるものを見つけると、触りたくなるの…」



「子供かよ…」



「反省してます…東京に着いたら起こしてあげるから、寝ててもいいよ」



「じゃあ寝るわ。もういたずらするなよ?」



「うん…」



川越君は掴んでいたあたしの腕を離し、再び睡眠体制に入った。



それと同時に、新幹線は東京に向かって出発した。



今度は川越君を起こさないように、窓の外を見ながら、時間を過ごした。



今更だけど、新幹線って速いのね。



景色があっという間に変わっていくから、目が回りそうだ。



それにしても、お腹すいたな~



ポテチは完食したけど、準備に手間取って朝食を食べ損ねたので、まだ物足りない感じがする。



でも川越君が寝てるから、スナック菓子は食べづらいし…



売り子さんが、たまにあたし達の横を通るけど、あたしだけ頼むのもなんだか悪い気がする…



仕方ない…



あたしはカバンからガムを取り出して、空腹を紛らわすことにした。



ガムをまとめて複数個、口の中に入れる。



そしてガムを舌で薄く伸ばして、膨らませ始めた。



「おっ」



久々に風船ガムを膨らませたけど、子供の時よりも大きく膨らませている気がする。



気分が良くなったあたしは、さらに大きく膨らませようと、思い切り息を吹き込んだ。



パンッ



「あっ…」



はじける音と共に、ガムが口の周りに飛び散った。



そして隣からは人が動く気配。



「ごめんなさい!」



睡眠を2度も邪魔されて、川越君、怒ってるだろうな…



呆れられても仕方ないか。



しかし、川越君の反応は意外なものだった。



「フッ、おまえ、本当に面白いな」



「えっ?」



意外な反応に思わず顔を上げる。



「そんな顔でこっち見んな」



「お…怒ってないの?」



「怒ってねえから、とりあえず、その顔なんとかしろ」



「ブサイクで悪かったですね。この顔は生まれつきなんで、どうしようも無いんです~」



「ハハハッ」



川越君が大爆笑している。



は…初めて見た。



「顔に付いてるガムを何とかしろって言ってんだよ。おまえ、マジで最高だな」



あたしは慌ててティッシュで、ガムを拭き取った。



「もう付いてない?」



「付いてねえよ」



「川越君が爆笑してる所、初めて見たよ」



「そうだな。こんなに笑ったのも、久しぶりだ」



「神崎君、笑うと可愛いね」



「それ褒めてんのか?男は可愛いとか言われても、嬉しくねえよ」



「そうなの?もちろん褒めてるよ~」



グゥ~



「……」



「……」



「おまえ、ポテチを丸々一袋食べたんじゃないのか?」



「うん。でもお腹すいた…」



川越君は呆れた表情を浮かべている。



時計を見ると、11時を過ぎていた。



「おまえのお腹が鳴り続けられても迷惑だし、飯にするか」



「ハハッ…そうだね」



新幹線の醍醐味は、何といっても駅弁だ。



「すいませ~ん」



「はい」



「お弁当2つくださ~い」



「はい。2000円です」



「俺が出す」



「いいよ~」



「チケットはおまえのおごりだろ?」



「あたしが用意したんじゃないんだけど…」



会話している間に、川越君はお金を払い、売り子さんは去って行った。



「ほら」



「ありがとう。いただきま~す」



あたしはメインの名古屋名物に、狙いを定めた。



「おいし~い。歯ごたえがすごくいいね」



名古屋コーチンハムは弾力があって、凄く食感がいい。



あたしは夢中になってお弁当を食べ、あっという間に完食した。



「ごちそうさま~」



食べ終わったあたしは、そろそろかなと思い、窓に体を向けた。



「外に何かあるのか?」



川越君があたしの動きに疑問を持ったのか、そう尋ねてきた。



「さて問題です。この新幹線は、今、どの辺りを走っているでしょうか?」



「そういうことか…」



川越君は勘づいたようだ。



「富士山だろ?」



「ブブ~正解は、静岡県でした~富士山を電車で走るのは無理だよ」



「んなこと分かってるっての…」



「だからそろそろ…あ~見えた~」



左手に見えた富士山。



霞んでいて、はっきりとは見えなかったけど、存在は確認する事が出来た。



「大きい~」



「当たり前だろ。日本で一番高い山なんだから」



「ああ…もう見えなくなっちゃった…」



「なかなか見れねえらしいから、見えただけでラッキーなんじゃねえの」



「そうなんだ!簡単に見れるんだと思ってた」



富士山が見れて、気分は最高潮。



写真を取れれば、もっと良かったんだけどな…



しばらくして目的を達成したあたしに、満腹中枢という名の睡魔が襲う。



再び意識を取り戻した時には、すでに憧れの東京に到着していた。



「すご~い。東京駅だ~」



「別に東京駅は凄くねえよ…」



東京に来ること自体が初めてのあたしにとって、東京に来たというだけで、テンションが上がる。



「夢の山手線だよ」



「ただの電車じゃねえか…」



「渋谷とか、新宿に止まるんだよ」



「当たり前だ」



「当たり前じゃないよ!渋谷とか新宿って、テレビの中の世界だもん」



「そうなのか?」



「うん!芸能人とか、乗ってるのかな?」



「いるんじゃね」



「本当に?川越君も一緒に探そうよ!」



「人が多すぎて、見つからねえよ」



「確かに凄い人だから、探すの大変だね…」



京都でも人の多さにびっくりしたけど、東京はさらに多い。



人の多さに圧倒されつつ、ぶつからないように歩を進めた。



「そういえば、東京のお土産って何がいいのかな?」



「今買ったら、荷物になるだけだろ…」



「今は買わないよ。目星だけはつけておこうかなと思って」



「東京ばな奈とかで、いいんじゃねえの?」



「東京ばな奈、おいしいよね~あんまり予算も時間もないし、東京ばな奈にしよう!」



「あっさり決まりすぎだろ…」



ロッカーに荷物を預け、身軽になったあたし達は、満を持して目的地のタイランドへ向かった。



途中で乗換えとかもあって、結構複雑なルートだったけど、1時間ほどで遊園地に到着した。



これからいよいよ本番を迎える。



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