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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
5th Stage
33/40

告白

~和馬Side~



謎の田舎めぐりツアーから、数日が経った。



俺と坂本の関係に変化はない。



変わったことといえば…



「ねえ、川越君。飼い猫のちび太は元気?」



by藤村。



「神崎の飼ってる猫って可愛いのか?」



by杉山。



「うん。凄く可愛いんだよ」



by坂本。



「ブルドッグのほうが可愛いけどな」



by小林。



「和馬、名前を付けるセンスなさすぎ」



by石原。



坂本を中心にして、なぜか5人の人間が俺の周りに集まっている。



きっかけは藤村の一言。



「ねえ石原、川越君」



「何だ?デートのお誘いなら、いつでも受け付けてるけど?」



「違うわよ…近くの席になったのも何かの縁だし、休み時間に、一緒にお話ししようよ」



「俺は別にいいぜ。和馬は?」



石原が俺に話を振る。



隣の席の坂本が、不安そうに俺をじっと見つめてくる。



「別にいい」



そう言うと、わかりやすく坂本が笑顔になった。



こうして、6人のグループが出来上がった。



6人のグループができたといっても、俺が小林と杉山と直接話すことはほとんどない。



もちろん、小林が坂本の幼なじみだということは知っている。



杉山はともかくとして、小林にとって俺の存在は邪魔でしかないはず。



なんとなくお互いに牽制し合って、今日まで来ているといった感じだ。



「タイガース、最近やばいんじゃねえの?」



「そんなはずはねえよ!なあ光太?」



「ああ。巨人に負けるはずがねえ」



「言ったな。今日、阪神VS巨人だったよな?」



「そうだな」



「負けたほうがジュースをおごるってのはどうだ?」



「望むところだ!」



石原は小林と杉山と一緒に、野球談議を繰り広げている。



おまえが男の相手をしてどうすんだよ…



必然的に、坂本と藤村と俺という組み合わせになる。



女2人とかやりづれえにもほどがある。



「川越君、聞いてる?」



「何?」



「も~ちび太に会いたいなって話しをしてたの。ねえ友菜?」



「うん。あたしも会いたいな~」



「猫なら他にもいるだろ」



「だって知り合いに猫飼ってる人、川越君しかいないんだもん」



「野良猫だとすぐに逃げちゃうし。お願い川越君」



この様子じゃ、俺が首を縦に振るまでお願いされ続けるのだろう。



「今日の夕方に散歩行くから、会いたきゃ勝手に来れば?」



「やった~じゃあ、前にちび太と会った河川敷で待ってるね」



「ああ」



放課後、家に帰って玄関の扉を開けると、ちび太がこっちに向かって来た。



「出迎えなんて珍しいな」



「ニャ~」



疑問に思いながら、リビングまで行くと、異変に気付く。



誰かいるのか?



ガチャ



リビングのドアを開けると、親父とおふくろが、何か話し合いをしていた。



「おかえり、和馬」



「……」



「挨拶ぐらいせんか。まったく…」



「いいのよ。和馬をほったらかしにしてた私が悪いんだから」



「まあいい。おまえに重要な話がある」



「何だよ?」



「俺達、また東京で一緒に暮らそうと思う」



「はっ?」



「ごめんね和馬。私間違ってた。これからはいい母親になれるよう努力するから」



「いまさらそんなの信じられるかよ…」



「とにかく俺達は東京に戻るから。おまえは好きにすればいい」



「アホらしい…」



「おい和馬!まだ話は終わってないぞ」



後ろから聞こえてくる親父の声を無視して、ちび太と外に出た。



ガチャ



マジありえねえ親だな…



いきなりよりを戻すとか意味わかんねえし…



まあ邪魔者がいなくなってくれて、ありがたいけど。



これからどうすっかな…



「川越君」



「はっ?」



いきなり名前を呼ばれた。



目の前には坂本と藤村の姿。



そうか…



坂本は俺の家知ってたんだった。



「待ちきれなくて来ちゃったよ~」



「ちび太、久し振り~」



「ニャ~」



ちび太は一直線に坂本の所に向かっていった。



ちび太は坂本のことを気に入ってるらしい。



「相変わらず可愛いな~」



「ほらちび太。あたしの所にも来て」



藤村が手を伸ばしている。



ちび太は藤村の事をチラッと見たが、すぐに坂本に視線を戻した。



「こらちび太!友菜にばっかりかまわないでよ」



「まあまあ落ち着いて」



「今日中に絶対仲良くなってみせる!」



「ハハッ」



そういえば前会った時も、藤村にはあまりなついてなかったような気がする。



やっぱり猫にも好き嫌いがあるんだな。



「噂には聞いてたけど、川越君の家ってすごく大きいんだね」



「そうか?前住んでた家は、この家より大きかったぞ」



「うそ~信じられないよ!家政婦さんとかメイドさんとかはいないの?」



「いねえよ。いても邪魔なだけだし」



「残念。家政婦は見た、メイドさんとの禁断の恋とか期待してたのに~」



「唯香、それはドラマの見すぎだよ…」



「もしいても好きになったりしねえよ…」



「じゃあ従妹のお姉さんとの禁断の恋?」



「はっ?」



「4月ぐらいに、年上の女の人と一緒にフランス料理屋さんに行ったでしょ?」



「なんで知ってんだよ…てか従兄弟のお姉さんなんていねえし…」



「じゃあ誰と行ってたの?」



「お袋」



「え~お母さん?どう見ても、20代にしか見えなかったけど…」



「若作りなだけだろ」



「あんな高級そうな店、頻繁に行ってるの?」



「行ってねえ。あの日はお袋の男を紹介されただけ」



「お袋の男?」



「浮気相手だよ」



「メイドじゃなくて、母親と浮気相手の禁断の恋だったか」



「唯香、そこは冗談を言う所じゃないよ…」



「ごめんごめん」



「まあ今は親父とよりを戻して、東京に帰るとか言ってたけど」



「えっ…それなら、川越君も東京に帰っちゃうの?」



「さあな」



……





~友菜Side~



「えっ…それなら、川越君も東京に帰っちゃうの?」



「さあな」



曖昧な答え。



まさか川越君、東京に帰っちゃうつもりなのかな?



そんなのあんまりだよ…



やっと自分の気持ちに気づけたのに…



「さあなって…どうするか決めてないの?」



「今さっき聞いた話だからな」



「そうなんだ…」



「嫌だ…」



「へっ?」



「そんなの絶対嫌だ!」



「唯香?」



「友菜」



「何?」



「川越君と話がしたいから、2人きりにさせてくれない?」



「う…うん」



「ごめんね…すぐに終わるから」



「分かった。じゃあちび太と、そこらへんブラブラしてるね」



「ありがとう」



川越君と唯香は近くの河川敷の石段に腰を下ろし、あたしは河川敷沿いの道を歩き始めた。



2人きりにしてと言った時の、唯香の決意に満ちた目。



親友のあたしにはわかる。



きっと唯香は川越君に告白する。



「ちび太、君のご主人様は、きっと今からあたしの親友に告白されるよ」



「ニャ~」



「ちび太は、東京に行きたい?」



「ニャ~」



「これからどうなっちゃうんだろうね…」



ちび太が答えを返してくれるはずもなく、あたしの独り言がしばらく続いた。




~和馬Side~



俺の隣には、うつむいて黙ったままの藤村。



「何か話があるんじゃねえのか?」



仕方なく俺から話題を振る。



「川越君」



藤村はいきなり顔を上げたかと思うと、こっちを見た。



「何だよ?」



「あたし、川越君の事が好き。大好きなの!」



「はっ?」



「はっ?じゃないよ。好きなの」



「ああ」



「川越君があたしのこと眼中にないのは分かってる。でもこのまま何も言えずに川越君が東京に行っちゃうのが嫌だったの!」



「……」



「1%でもあたしを好きになってくれる望みはない?」



「悪い…」



「そっか…こうなることは予想してたけど、実際に振られるとショックだな…」



「……」



「……」



しばらく沈黙が続いた。



「川越君」



「何だよ?」



「川越君は、友菜のことどう思ってる?」



藤村がポツリと口を開いた。



「さあな」



「はぐらかさないで、ちゃんと答えて!」



「見てて飽きねえ女だなって思う」



「それだけ?」



「まあ優しいんじゃねえの」



「他には?」



「信頼できる女」



「……」



妙な沈黙。



藤村は何か考え込んでいる。



「川越君ってさ、どうして女の子のこと嫌いになったの?」



「別に理由なんてねえよ」



「もしかしてお母さんが関係してる?」



「さあな」



「友菜なら、大丈夫だよ」



「はっ?」



「友菜は、絶対、川越君のことを裏切ったりしない」



「……」



「あたしが保証する」



「何が言いてえんだよ?」



「教えな~い。友菜にはあたしが連絡を入れとくから。じゃあね~」



「おい!」



藤村は走り去って行った。



何なんだよ、いったい…



このまま帰ろうかと思ったが、今、家には両親がいることを思い出した。



どうせちび太をほっといて帰るわけにもいかねえし、坂本を待つしかねえか。



「川越君、ごめんね。待たせちゃって」



しばらくして、ちび太と一緒に坂本が戻ってきた。



「別に」



「……」



「……」



沈黙。



坂本が俺のほうをちらちら見ては、また視線を戻すということを繰り返している。



何か言いたいことがあるのが、丸分かりだ。



「藤村に何か言われたのか?」



「ち…ち…違うよ…」



図星だな。



「何て言われたんだよ?」



たぶん藤村が俺に告白したことを、坂本に言ったのだろう。



そのことをわかっていて、あえて聞き返す俺はSなのかもしれない。



「えっと…」



「……」



「言わなきゃダメ?」



坂本は困った表情で、小首をかしげながら言った。



「ああ」



「唯香のこ…告白をどうして断ったの?」



「気になるか?」



「べ…べ…別に…」



動揺しすぎ。



「気になる奴がいるから」



「えっ?」



坂本とばっちり目線が合う。



「もしかしてあ…あ…あたし?」



「誰もおまえなんて言ってねえけど」



「そ…そうだよね…」



あからさまに落胆の表情を見せる坂本。



「でもおまえじゃねえとも言ってねえ」



「じゃあどっちなの?」



「さあな」



「期待させない…で…よ…」



坂本の声が震えている。



そして坂本の目から一筋の涙がこぼれた。



泣かせてしまった…



女の涙を見て、生まれて初めて罪悪感を感じた。



「あれ?なんであたし泣いてるんだろ?」



「……」



「ごめんね。涙が止まらないや」



坂本は涙がこぼれないように、上を向いている。



「藤村に告白された時」



「ヒック…えっ?」



「お前の顔が一瞬頭に浮かんだんだよ」



「……」



「それって、気になってるってことじゃねえのか?」



「ヒック…あ…あたしに聞かれても…わ…わかんないよ」



「……」



「でも…」



「……」



「凄く嬉しい」



涙で顔を濡らしながら、満面の笑み。



その時の坂本の笑顔は、これまでで一番輝いて見えた。



不覚にも一瞬ドキッとした。



「どうしたの、川越君?」



「何だよ?」



「顔が赤いよ」



「暑いからだろ?」



「今寒いぐらいなんだけど…」



「夕日に反射してるだけだ」



「本当だ~夕日綺麗」



西園寺が鈍感で助かった。



「お前にお願いがある」



「何?」



「ちび太を一晩預かっててくれねえ?」



「家としては大歓迎だけど、どうして?」



「親父とお袋が家にいて、帰りたくねえから、ちび太の行き場所がねえんだよ」



「う~ん…でも、良く話し合いをしたほうがいいと思うよ?」



「顔も見たくねえ」



「そっか…じゃあ、川越君はどうするの?」



「公園で寝る」



「そんな…最近、夜は凄く冷えてきてるから、風邪引いちゃうよ…」



「家に帰るよりは、マシ」



「……」



坂本は何か考えている。



「川越君」



「何だ?」



「か…川越君さえ良かったら、家にと…泊らない?」



「はっ?どう考えても、迷惑だろ?」



「そんなことないもん。事情を話せば、きっとわかってくれるよ」



「付き合ってもない男を、家に泊めるなんて常識外れ…」



「お母さんに電話してくる」



「話聞けよ…」



坂本は少し離れた場所で、電話をかけ始めた。



「川越君がカギ無くしちゃって、家に入れないらしいから、泊めてあげてもいい?」



嘘だけど、そういうことにしてくれたほうが助かる。



「良かった~じゃあ今から川越君を連れていくからね」



OK出るの早いな。



「サプライズゲストも連れて行くからよろしく~じゃあ、ばいばい」



サプライズゲストってちび太のことか?



電話を終えて、坂本が戻ってきた。



「OKだって~」



「ちび太のこと言わなくてもいいのか?」



「サプライズにしたほうが、面白いじゃん」



「そういう問題かよ…」



相変わらず感覚がズレている。



「お客さん用の部屋があるから、寝るところは心配しなくていいよ」



「ああ」



「じゃあ、行こっか」



俺達は、坂本の家に向かって歩き始めた。



坂本はさっきまで泣いていたのに、今は鼻歌を歌いながら歩いている。



相変わらず感情の起伏が激しい女だ。



「よ~し、ちび太!ダッシュだ」



「ニャ~」



西園寺に続いて、ちび太も走り始めた。



ちび太のやつ、坂本のこと、好き過ぎるだろ…



「お~い、川越君、早く~」



遠くでこっちを振り返って、ちび太を抱きかかえながら、手を振っている坂本。



「ちょっとちび太、くすぐったいよ~」



ちび太は、坂本の手を舐めている。



猫の舐めるという行為は、愛情表現の一つらしい。



両親のことでイライラしていた気持ちが、坂本とちび太のやりとりを見ていると、少し晴れた気がした。



しばらく歩いて、坂本の家に到着した。



田舎めぐりツアーの時に、バイクで家まで送り届けたから、ここに来るのは2回目だ。



もちろん家の中に入るのは、初めてだが。



「ただいま~」



ハイテンションのまま、勢い良くドアを開ける坂本に続いて、俺も坂本家に足を踏み入れた。



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