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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
5th Stage
31/40

ライブ

合格発表から、3日が経った。



進路が決まり、プレッシャーから解放されたあたしは、平和な日々を送っていた。



「友菜」



「何?」



「合格祝いのプレゼント」



唯香と智紀君と別れ、光ちゃんと2人の帰り道。



唐突に光ちゃんは、カバンから一枚の封筒を取り出して、あたしに手渡してきた。



「開けてみてもいい?」



「おう」



封筒の中身を開けてみると、チケットが2枚入っていた。



「スピリッツのライブチケットだ~」



「友菜、スピリッツ好きだろ?」



「うん!でもこのチケットどうしたの?」



「親父が、ビンゴ大会の景品で当てたらしい」



「そうなんだ。でもあたしがもらっちゃってもいいの?」



「おう。俺からの受験合格祝いだと思ってくれればいい。2枚あるから、唯香ちゃんと行って来いよ」



「ありがとう!」



昔からスピリッツのファンだけど、ライブにはまだ行ったことがないんだよね。



すごく楽しみ~



今週の日曜日か~



「じゃあな」



「ばいばい」



興奮のあまり、チケットを握りしめたまま家まで帰ってきた。



早く時間が過ぎないかな~



その日はスピリッツの歌を聴きながら、眠りについた。



「唯香、今週の日曜って空いてる?」



「どうしたの?」



翌日、さっそく唯香に予定を聞いてみる。



「光ちゃんからスピリッツのライブのチケット2枚もらったから、一緒に行きたいなと思って」



「う~ん…ものすごく行きたいんだけど、日曜日は模試があるんだよね」



「そっか…」



あたしは推薦で無事合格したけど、一般入試を受ける人は、今大事な時期だもんね…



「ごめんね…」



「うん。仕方ないよ」



どうしよう…



1人で行くのは心細いし、余ったチケットがもったいない。



その時、祭りの時のやりとりが思い出された。



「誰のライブ行ってたの?」



「スピリッツだぜ」



そうか!



川越君もスピリッツ好きだった。



よし!勇気を出して、川越君を誘ってみよう。



放課後。



あたしは隣の川越君に話しかける…のではなくて、石原君の所に向かっていた。



直接聞く勇気がなくて、石原君を頼ることにしたのだ。



最近、川越君が教室にいるからか、就職活動を始めたからなのか分からないけど、石原君も教室にいることがほとんどだ。



「石原君」



「何だ?坂本」



「川越君と休みの日に遊んだりする?」



「たまに遊ぶけど…それがどうしたんだ?」



「えっと…川越君って、今週の日曜日、暇なのかなって…」



あたしの言葉を聞いて、石原君は少し考えた後、笑みを浮かべながら、立ち上がった。



そして…



「和馬く~ん」



川越君の所へ向かっていた。



「何だよ。気持ち悪い」



川越君は、明らかに石原君を警戒している。



「今週の日曜日空いてるっしょ?」



「別に予定なんてねえけど…」



「坂本、和馬は日曜日暇人らしいぜ」



石原君は、いきなりあたしに話を振った。



「そ…そっか…」



「だから、何だよ?」



川越君は、怪訝そうに石原君を見ている。



一方、石原君はあたしにアイコンタクトを送っている。



これは今誘えって、目で訴えているのだろう。



「ス…スピリッツのライブのチケットが1枚余ってるんだけど、一緒に行ってくれませんか?」



そう言った瞬間、川越君の目線がこちらを向く。



ドキドキするよ…



「おまえは行きたくねえのか?」



川越君は、石原君に向かって言った。



「いやいや。若いお2人で、行って来てくださいな」



「同い年だろ…」



「同い年じゃん…」



「息もぴったりですな~それでは、邪魔者は去りますか」



そう言った後、石原君は教室を出て行った。



「ハハッ…」



あたしはどうしていいかわからず、苦笑いするしかなかった。



「行く」



「へっ?」



「スピリッツのライブ」



「ありがとう」



「何でおまえが礼を言うんだよ?チケットもらったのは、俺なのに」



「一緒に行ってくれる事に対する、ありがとうだよ」



「そうか。じゃあ、俺は帰るから」



「うん。ばいばい」



まさか、こんなにあっさり川越君がOkしてくれるとは思わなかった。



川越君は、どんな心境でOkしてくれたのだろう…



ただスピリッツのライブに行きたいだけ?それとも…



ちょっと待てよ…



もしかして、これってデートなのかな?



でも、男の子と2人きりで遊びに行くってことは、そういうことだよね?



勢いで誘っちゃったけど、今更、事の重大さに気がついた。



ブーブー



その時、携帯が鳴った。



To 辻本君



俺のアシスト無駄にするなよ~健闘を祈る。




何だかんだで、辻本君はいい人だな。



翌日



家のパソコンで調べた会場までのルートを、川越君に見せた。



「意外と近いな」



「うん。大阪だからね」



舞台は京セラドーム大阪。



野球場としても使われていて、1度行ったことがあったので、調べるのは簡単だった。



軽く打ち合わせをした後、集合時間と集合場所を決めて、準備万端。



いよいよ、日曜日を待つだけとなった。



あっという間に時は流れ、迎えた日曜日。



「よし!頑張ろう」



気合を入れて、集合場所のバス停に自転車で向かった。



いつもより準備に時間をかけたから、バス停に着くのがギリギリになりそうだ。



何とか10分前にバス停にたどり着いた。



川越君、来てるかな?



周りを見渡すと、前方に眠そうにあくびをしている、川越君を見つけた。



「ごめんね、川越君。待った?」



「さっき来た」



「そっか。良かった~」



何かこの会話の流れって、カップルの会話っぽいよね?



それだけで、少しテンションが上がるのを感じた。



その後、バスで大阪に向かう。



「川越君って、大阪に行ったことはあるの?」



「取引先が大阪にあるから、何回か行ったことはある」



「さすが川越グループの御曹司様は、言うことが違うね~]



「別に凄くなんかねえよ」



「あたし、大阪に行くの初めてなんだよ~」



「どんだけ田舎人なんだよ…」



「あ~田舎人をばかにしたな~」



「してねえよ」



「ところで本場のタコ焼きって、やっぱりおいしいのかな?」



「話飛びすぎだし…そりゃうまいんじゃねえの」



「たこ焼きもいいけど、お好み焼きも捨てがたいよね~」



「食い意地張りすぎだろ…」



「そんなことないもん!でも両方食べたら、太っちゃうしな…ちなみに川越君はどっちが…好…」



あれ?



昨日あんまり眠れなかったから、瞼が重いな…



気付いたら、意識を手放していた。



……





~和馬Side~



「でも両方食べたら、太っちゃうしな…ちなみに川越君はどっちが…好…」



「たこ焼き」



「……」



しかし全く反応がない。



聞いといて、無視かよ…



そう思った瞬間!



バサッ



坂本が、俺の肩にもたれかかってきた。



寝てるし…



相変わらず、無防備な女だな…



それにしても、石原は俺と坂本をくっつけようとしてるのか?



[2人きりのデートを楽しんできてね♪]とか、ふざけたメールを送ってきやがったし…



まあスピリッツのライブに行くって言ったのは、俺の意思なんだけど。



でも坂本は、いったいどういう気持ちで俺を誘ったのだろう。



「おまえは、何がしたいんだよ」



ピンッ



そう言いながら、坂本のおでこをはじいてみる。



「う~ん…たこ焼き…お好み焼き…もう食べられないよ…」



どんな夢見てんだよ…



相変わらず面白い奴。



でも空想を夢の中で叶えて幸せそうな顔をしていたのに、急に切ない表情に変わった。



そして…



「川越君…」



なぜか俺の名前をつぶやいた。



何で俺の名前を…



そして、俺の名前を呼ぶ前に切ない表情をしたのは、いったい何を意味しているのか…



わからねえ…



「俺をライブに誘って、おまえは俺にどうしてほしいんだよ…」



サラッ



そう言いながら、気付いたら坂本の髪に触れていた。



「う~ん…」



当然のことながら、答えは返ってこない。



でも俺は、今まで坂本に感じなかった感情が湧いてくるのを感じた。



「♪♪」



かと思うと、今度は、楽しそうに鼻歌を歌い始めた坂本。



こいつは、夢の中でも百面相かよ…



「フッ」



思わず笑みがこぼれる。



これまでに感じたことのない、穏やかな気持ちで、バスの到着を待った。



2時間ほどで、バスは大阪に到着した。



しかし、坂本はまだ目を覚まさない。



どんだけ寝るんだよ…



ゆさゆさ



「おい。起きろよ」



体をゆすりながら、声をかけてみる。



「う~ん…えっ…ここどこ?」



坂本は、明らかに寝ぼけている。



「大阪」



「大阪?そうか!あたし寝ちゃってたんだ…」



ようやく、自分の状況を把握したようだ。



「寝てる間に、川越君に迷惑をかけてないよね?」



不安そうに尋ねてくる坂本。



「別に」



「良かった~」



「う~ん。すっきりした」



坂本はそう言いながら、体を伸ばしている。



こっちはお前の夢の中の言動で悩んでるってのに、呑気な奴だな…



ピンッ



「いった~い。いきなりでこピンなんて、ひどいよ~」



「お前が悪い」



「あたしが何をしたっていうのよ~さっき迷惑かけてないって言ったじゃん!」



「自分で考えろ」



「わかんないよ~」



「わからなくていい」



「どういうこと?」



「別にいいだろ。早く降りるぞ」



「待ってよ~」



気付いたら、バスの中は俺達だけになっていたから、素早くバスを降りる。



ここからさらにバスを乗り継いで、京セラドームに到着した。



「うわ~凄い人だね~」



「そうだな」



「喉渇いたな~ジュース買ってくるよ。川越君は何がいい?」



「単独行動するなって。迷子になるだろ」



「うん。じゃあ一緒に行こうか」



「ああ」



自動販売機まで、2人で行く。



「おまえ、何飲む?」



「コーラが飲みたいな」



「わかった」



「まさかおごってくれるの?」



「ああ」



「いいよ~これぐらい自分で出すって」



「別にいい。素直におごられろ」



「うん。ありがとう」



坂本はコーラ、俺はコーヒーを飲みながら歩いていると、坂本が落ち着き無く、俺の様子を窺っている。



何だ?



「何か、言いたいことでもあるのか?」



「べ…別に」



坂本はそう言うと、目を逸らす。



こいつ、絶対嘘をつけないタイプだな…



「バスでのことを怒ってるのか?」



「そうじゃなくて…」



「そうじゃなくて?」



「あ…あのね…」



「ああ」



「もしこんな広い所で迷子になっちゃったら、お互い見つけるの大変だと思うんだ」



「そうだな…」



「だ…だから連絡を…」



「連絡?」



「連絡先を交換しませんか?」



西園寺は頭を下げて、自分の携帯を俺に差し出した。



「携帯を渡されても困るんだけど…」



「そうだよね…」



俺の言葉を否定の意味と思ったのか、がっかりした表情を浮かべている。



「ちげえよ。携帯の使い方なら、お前のほうが詳しいだろうから、おまえが操作してくれって話」



俺は坂本から手渡された携帯を返し、俺の携帯を坂本に手渡した。



坂本はしばらくポカ~ンとした表情を浮かべていたけど、しばらくしてすごいスピードで2台の携帯を操作し始めた。



「で…出来たよ」



「ああ」



坂本は安堵の表情を浮かべながら、俺に携帯を返した。



……





~友菜Side~



「連絡先を交換しませんか?」



距離を縮めるためには、まず連絡先の交換をしなければと思ったあたしは、勇気を出して、川越君に聞いてみることにした。



「携帯を渡されても困るんだけど…」



「そうだよね…」



しかし川越君から帰ってきたのは、否定の答え…



距離が少し縮まったかなと思っていたのはあたしだけだったのかな…



「ちげえよ。携帯の使い方なら、お前のほうが詳しいだろうから、おまえが操作してくれって話」



でもそれはあたしの勘違いだったようで、無事に連絡先を交換することができた。



簡単にあたしに携帯を手渡したけど、見られても平気なのかな?



まああたしには恐れ多くて、そんな勇気が無いけどね…



その後、ライブの開始時間が近づいてきたので、ドーム内に足を踏み入れた。



ドーム内は、皆の楽しみという気持ちなのか、熱気で溢れている。



「いよいよだね」



「ああ」



ライブが始まるという高揚感で、あたしのテンションはすでにHighになっている。



10分ほど経過した時、いきなり照明が落ち、ステージにライトが照らされ、スピリッツのメンバーが登場した。



キャ~



女の子の歓声が飛び交う中、あたしも一緒になって叫んだ。



「本物だよ~川越君!」



「フッ、当たり前だろ」



いよいよライブが始まった。



携帯プレーヤーで聞く音楽とは、また違う世界がそこにはあった。



直接耳に響く生歌。



スピリッツの音楽が輝きを増し、迫力と臨場感も相まって、極上のハーモニーを奏でている。



隣の川越君も、凄く聞き入っているようだ。



あたしはこのライブでスピリッツのことがもっと好きになった。



[きみとであったきせ~きが~

こ~のむねにあふれてる~]



あっ!



この曲はあたしが一番好きな曲だ。



神崎グループの御曹司である川越君と、ごく普通の女子高生であるあたし。



普通に生活していれば、出会うことのなかったあたし達。



この出会いは奇跡だ。



今のあたしの気持ちにリンクさせながら、いつまで経っても色褪せない名曲達に聞き入った。



やがてすべての曲が終わり、スピリッツのメンバーたちがステージを後にする。



[アンコール!アンコール!]



これ、一回やってみたかったんだよね。



一回ステージの外にはけたスピリッツのメンバー達が戻ってきて、再び熱唱する。



曲が終わり、手を振りながらスピリッツのメンバーがステージを去り、夢のような一時はあっという間に終わってしまった。



しばらくライブの余韻に浸ってから、会場を後にした。



「すごかったね~川越君!」



「そうだな」



「でもはしゃぎすぎて、お腹すいたよ~」



「何だそりゃ…」



「まだ帰りのバスまで時間あるし、おいしいもの探ししようよ?」



「別にいいけど」



「よし!決定~待ってろよ。たこ焼き、お好み焼き~」



「両方食うと、太るんじゃねえのか?」



「ライブでいっぱい飛び跳ねたから、大丈夫…じゃないから、たこ焼きだけにしとこ」



「それが無難だな」



電車を乗り継いで、難波までやってきた。



ここに来たのは、食べ物だけではない目的があった。



「やると思った…」



目の前には、呆れた顔をしている川越君。



何をしているかというと、あたしはグ○コの看板の前でポーズをとっている。



「川越君も、一緒にやろうよ」



「無理」



「え~」



まあ期待はしてなかったけどね…



「じゃあ、写真撮ってよ」



「仕方ねえな…」



パシャ



カメラを川越君に渡して、写真を撮ってもらった。



「撮れた?」



「たぶんな」



「帰ったら、唯香に自慢しよっと♪」



記念撮影が終わって、あたしは事前に調べておいた、たこ焼き屋さんに向かうことにした。



「着いた~」



「疲れた…」



「お腹ペコペコだよ~すいませ~ん。たこ焼き10個くださ~い」



「まいど~」



さっそくたこ焼きを購入した。



「いただきま~す」



「ここで食うのかよ…」



「だって、お腹すいてるんだもん」



パクッ



「あちちっ、う~ん。おいしい!」



アツアツふわふわの生地と、大きなタコの歯ごたえが絶妙に口の中でマッチしていて、とてもおいしい。



「川越君も食べなよ。おいしいよ~」



「後で食う」



「え~アツアツの時に食べなきゃダメだよ!」



「猫舌なんだよ」



「大丈夫だって。ほら!あ~ん」



川越君の口元までたこ焼きを持っていく。



「おまえな…こんな道端であ~んとか恥ずかしくねえのかよ…」



周りを見渡すと、何人かの人達がこっちを見ていた。



しまった…



唯香によくこうやって食べさせてあげてたから、癖でやっちゃったよ…



急に恥ずかしくなってきたあたしは、慌てて手を引っこめようとした。



でも…



パクッ



「えっ…」



「うまい」



珍しくいたずらっ子のような顔で、あたしが持っていたたこ焼きを口に入れた。



「な…な…」



「な?」



「何してんの~」



川越君の意外すぎる行動に、あたしは動揺が隠しきれない。



でも凄く優しい表情をしてる。



出会ってすぐの時は、あたしにこんな表情を見せてくれることはなかった。



川越君もあたしに対して、少しは気を許してくれてるってことでいいんだよね?



いくら好きなアーティストのライブとはいえ、嫌いな人とライブに行くはずがないし、嫌われていることは無いと思うけど、川越君はあたしのこと、どう思ってるんだろう?



「ほら、お前も食えよ」



今日の川越君は、ねじが外れているのだろうか?



あろうことか、神崎君はたこ焼きを爪楊枝で刺し、あたしの口元に近付けてきた。



「ダ…ダメだよ」



「おまえが先にやってきたんだろ?」



川越君は、またもや獲物を見つけたような表情で、あたしを見下ろしている。



前から思ってたけど、あたしのことをからかうのが、川越君の趣味らしい。



[キャ~あのカップル見て!食べさせあいっこしてるよ]



[おい!あんまりじろじろ見るなって]



相変わらず周囲の注目を集めている中、あたしは覚悟を決めた。



パクッ



一口目はあんなにおいしく感じたたこ焼きが、緊張で全く味がしなかった。



あたしなりに頑張って川越君を睨んでみたけど、川越君は涼しい顔をしている。



「それで睨んでるつもりか?」



「あたしは怒ってるんだよ!」



「フッ、面白れえ顔」



「何よ~」



あたしは怒りに任せて、残っていたたこ焼きを全部食べた。



「おいおい…」



「ごほごほっ」



「一気に食ったら、喉詰まるに決まってんだろ…」



川越君は本気で心配そうに、背中をさすってくれている。



喋れないあたしは、ジェスチャーで飲み物を要求した。



川越君はあたしの行動の意図に気づいてくれたようで、自分のカバンからお茶を取り出して、手渡してくれた。



でもこのお茶は飲みかけだから、間接キスになっちゃうよ…



え~い



そんなこと気にしてられるか!



急いでキャップを開けて、喉にお茶を流し込んだ。



すると、ようやく息ができるようになった。



助かった…



「大丈夫かよ?」



気付いたら、間近に川越君の顔。



さっきは息が詰まって顔が赤くなっていたけど、どうやらまだ収まりそうにない。



「う…うん。大丈夫」



「やれやれ…焦らすなよな」



「ごめん…ありがとね」



川越君に迷惑かけちゃったな…



めんどくせえが口癖で、あまり多くを語るタイプではないけれど、本当は頼りがいがあって、優しい川越君。



一緒にいて楽しいし、ドキドキする。



今日初めて二人っきりでデートして、"好きかも"の疑問形から"好き"という確信に変わった。



「別に怒ってねえから、元気出せよ」



「うん…」



「おまえに暗い顔は似合わねえよ」



「わかった。元気出す!よ~し、次甘いもののお店行ってみよ~」



「たこ焼き9個も食って、まだ食うのかよ…」



「甘いものは別腹って言うでしょ?」



「そうだけどよ…」



「じゃあ、出発!」



いろいろ頭で考えることはあるけど、この貴重な時間を楽しまなきゃもったいないよね。



有名なスイーツのお店で、プリンとお土産用のロールケーキを購入した。



今は、帰りのバスに向かう駅のホームにいる。



「やっぱり、都会ってすごいね~」



「何がだよ?」



「電車が3分置きに来るんだよ」



「普通だろ」



「普通じゃないよ。舞亀市は、1時間に1本しか電車が来ない時間帯もあるんだから」



「知らなかった…俺はそんな田舎に住んでたのか」



「でもやっぱり田舎がいいな。空気がいいし、緑もあって星がきれいだし」



「おまえ本当、田舎好きだよな」



「あ~また田舎をばかにした~」



「してねえよ」



「今度、田舎の良さをわからせてあげるんだから!」



「はいはい」



行きと同じように電車とバスを乗り継いで、舞亀市に帰ってきた。



見慣れた景色が目の前に広がり、夢世界から現実に帰ってきたことを実感した。



「楽しかったね」



「おう」



「また一緒に遊ぼうね。今日はありがとう!」



「気をつけて帰れよ」



「うん。バイバイ」



こうして、初デート?は、無事に終了した。




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