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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
1st Stage
3/40

始業式

4月






桜が満開に咲き誇り、春の本格的な到来を告げている。






新しい学年としてのスタートを切る日が、やってきた。






天気は快晴。






お天道様も、生徒達の門出を祝福してくれているようだ。






「もう3年生か~これまで、あっという間だったよね」






「そうだな」






「そろそろ、進路のことも考えなくちゃいけないし…光ちゃんは、進路決まってるの?」






「俺は大学に行って、野球をやりたいと思ってる」






「明確な目標を持ってるのっていいよね」






「お前は決まってねえの?」






「大学に行きたいと思ってるんだけど、やりたいことがまだ見つかんないんだよ…」






夢って何なのだろう。






そう自分に問いかけてみても、答えは出てこない。






「そういえば、今日からおまえが生徒会長か…大丈夫かよ?」





「失礼な。副会長には唯香もいてくれるし、大丈夫だよ」






生徒会の副会長、藤村唯香ちゃんは中学時代からのあたしの親友だ。






「唯香ちゃんが副会長か。でも生徒会って、2人だけじゃないよな?」






「うん。もう一人、会計の子がいるよ。まだ会ったことないけど」






「男か?そいつ」






「うん。2年生の男の子だって聞いてるよ」






「そうか…気をつけろよ」






「何を?」






「はぁ…」






「なぜため息?」






「おまえには、一生分かんねえよ」





そうこうしてる内に、学校へたどり着いた。






1年に1度しかない、クラス替えに胸躍るこの日。





「一緒のクラスになれるといいね!」






「そうだな」






去年、唯香とは一緒のクラスだったものの、光ちゃんとはクラスが離れてしまっていた。






そのため、登下校以外であまり話すことが出来なくて、寂しい思いをしていたのだ。






「う~ん…見えない…」






人が多くて、名前の書かれている所が隠れてしまっている。






「あたし、ちょっと前に行って見てくるね」






「ああ、頼む」






人込みをかき分け、少しずつ前に進んで行き、最前列にたどり着いた。






いよいよ運命の時。






あたしの名前は…あった。






3年3組 坂本友菜






光ちゃんは…






やった!3組だ!






この後、3組に唯香の名前も見つけ、あたしにとって、最高のクラス替えとなったのである。






もう一度人込みをかき分け、光ちゃんに最高の結果を報告すべく、急いで戻る。






「どうだった?」





「あたしも、唯香も、光ちゃんも、皆3組だったよ!」






「良かったな。唯香ちゃんも一緒で」






「うん。今年は、良い年になりそうな気がするよ!」






「ところで智紀はどうだった?」






「智紀君も3組だったよ!」






杉山智紀くんは野球部の副キャプテンで、光ちゃんの親友でもある。






「あいつがいると、うるせえんだよな」






「でも一緒のクラスになれて、嬉しいんでしょ?」






「まあな。用も済んだし、教室に行くぞ」






下駄箱で靴を履き替え、教室に向かう。





ガラガラ





「友菜~」






唯香がすごい勢いで駆け寄ってきた。






「唯香、おはよう」






「唯香ちゃん、おはよう」






「おはよう、友菜、光太君。一緒のクラスになれたね!昨日、神社に行って、お祈りした甲斐があったよ!」






唯香が、あたしの手をぶんぶん振り回している。






「おっす、光太、友菜ちゃんもおはよう」






「よう」






「おはよう、智紀君」






智紀君とも、あいさつを交わす。






「お前、落ち着けって。友菜ちゃん、困ってんだろ」






「いいじゃん。嬉しいんだから」






「まったく…少しは人の迷惑考えろっての。てか俺達は一緒のクラスじゃなくて、良かったのかよ?」






「光太君とは、一緒のクラスになれたらいいなって思ってたよ。でも智紀は、別にどうでもいい」






「こっちこそ、お前なんて願い下げだっての」






唯香と智紀君は、いつも喧嘩している気がする。






3年生になっても相変わらずのようだ。






「喧嘩しないの」






「「喧嘩じゃない」」






息ぴったり。






漫才をやったら、きっとうまくいくんじゃないかな。






唯香と智紀君は、中学校1年生の時からの付き合いだ。






あたしの親友の唯香と、光ちゃんの親友の智紀君。






ある日、4人で遊んだことがきっかけで2人は知り合い、少しずつ仲良くなっていった。






それから、みるみるうちに仲が深まり、今の夫婦漫才コンビに至るわけだ。






喧嘩するほど、仲がいい。






まさにその言葉が、ぴったり当てはまると思う。






あたしの勘では、智紀君は、唯香のことが好きなんじゃないかと思う。






智紀君は、唯香にしょっちゅうちょっかいを掛けているけど、それは思春期特有の好きな子に対する照れ隠しの行動なんじゃないかと感じているからだ。






一方の唯香も、喧嘩している割にはいつも楽しそうだ。






唯香のことを好きな男の子はいっぱいいると思うけど、唯香が心を許している男の子は、おそらく智紀君だけだと思う。






だから唯香の中で、智紀君が特別な存在では無いのかと思っている。






2人が付き合えばいいのにな~






そう思っている、今日この頃である。






キーンコーンカーンコーン






「まだ話したいことあるのに~とりあえず席に戻るね」






「うん」






クラス表を見た時、担任の先生の名前を見たけど、知らない名前の先生だった。






新任の先生なのかな?






ガラガラ






「は~い、席についてください」






先生が教室に入ってきた。






「HRを始めます。まず初めに自己紹介をさせてもらいますね。あたしは今年から教師になって、この学校に赴任しました渡辺陽菜です。担当は国語です。まだ右も左もわからない新米教師ですが、よろしくお願いします」






勢い良く、お辞儀をする。






ゴーン






鈍い音が響き渡った。






どうやら、教卓に頭をぶつけたらしい。






教室中が、爆笑の渦に包まれる。






張り詰めていた空気が、一気に解き放たれた。






「いった~」






先生は頭を抱えている。






面白い先生だな~






「今から始業式なので、廊下に2列に並んでください」






渡辺先生がそう言ったので、廊下に並ぶことにした。






体育館に到着し、始業式が始まる。






「あた…あたしは…」






渡辺先生は着任の挨拶で緊張しながらも、意気込みを語っていた。






始業式が終わり、教室に戻る。






今日は授業がないから、このまま下校だ。






「これでHRを終わります。皆さん、さようなら」






渡辺先生が、疲れた表情をしながら言った。






教室にいた生徒達が、一斉に立ち上がる。






「光ちゃん、今日部活?」






「ああ。おまえは?」






「あたしは生徒会があるから。終わったら迎えに行くね」






「わかった。智紀、行くぞ」






「ああ」






光ちゃんと智紀君は、教室を出て行った。






「あたし達も、早く生徒会室に行こう」






「うん」






こうして教室を後にし、唯香と一緒に生徒会室に向かったのである。


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