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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
3rd Stage
23/40

急展開

しばらく待っていると、智紀君だけが姿を現した。



「あれ?光ちゃんは?」



「すぐ行くから、先に行けって言われたよ。様子が気になって、しばらくして振り返ったら、清水と一緒に、校舎の方に歩いて行ったみたい」



「そっか。清水さんと一緒なんだ…唯香と智紀君は先に帰っていいよ。あたしは光ちゃんを待ってるし」



「あたし達だけ、先に帰る訳には行かないから待ってるよ。いいでしょ、智紀?」



「おう。それにしてもこんな時に、光太は何をしているんだろうな」



「マジあの女、腹立つわ…」



「ちょっと、あたし様子見て来るよ」



「あたし達も行くよ」



「大丈夫。唯香と智紀君はここで待ってて。すぐに、戻ってくるから…」



この時、光ちゃんを探しに行かなければ、運命は変わっていたのかもしれない。



人生のターニングポイントは、唐突にやって来る。



光ちゃんのげた箱を確認すると、上履きがあったから、どうやら外にいるようだ。



一旦外に出て、校舎の周りを探してみることにした。



しばらく歩いていると、裏庭に来たところで、人の声が聞こえて来た。



足音をたてないようにそっと歩いて、校舎の影に隠れながら、ちらっと覗いてみると、光ちゃんと清水さんの姿が見えた。



一体こんな所で、何の話をしているのだろう?



とりあえず、話が終わるのを待つしかないのかな…



「別にいいじゃないですか~ケチな男は嫌われますよ?」



途中からなので、話の内容は良く分からないけど、清水さんが、光ちゃんを説得しているようだ。



「だから無理だって言ってんだろ。しつこいぞ」



光ちゃんはあたしに背を向けているので、表情は伺えないけど、語気からして、少しイライラしている様子が垣間見えた。



どうしよう…



こんな状況じゃ、声をかけられないよね…



でも今日は、どうしても一緒に帰りたいんだけどな…



あたふたしていると、不意に清水さんと目があった気がした。



あわてて首を引っ込める。



気づかれちゃったかな?



どうせ気付かれたのなら、堂々と声を掛けた方がいいよね。



別に、やましいことをしているわけじゃないんだし。



一回深呼吸をする。



よし!



「光ちゃ…」



声を掛けようと、校舎の影から出て、裏庭に足を踏み入れた。



「えっ…」



そこには、思いもよらぬ光景が広がっていた。



光ちゃんの体と、清水さんの体がぴったりくっついて、唇が重なっていた。



清水さんは、こっちを見ながらにやりと笑っている。



あたしはパニックに陥り、踵を返して、無意識の内に走り始めた。



……





~光太Side~



「光太先輩」



野球道具を倉庫にしまって、いざ帰ろうとした時、清水にいきなり声をかけられた。



「何だよ?」



「ちょっと話があるんですけど、あたしについてきてもらえませんか?」



「はっ?」



「光太~先に行っとくぞ」



「悪い。すぐ行くから」



清水の表情からして、嫌な予感がする。



「俺はおまえについていく義理なんてないから。それじゃ」



一方的にそう告げて、その場を後にしようとした。



「へ~そんな態度とってもいいんですか?これがどうなっても知りませんよ?」



妙な物言いに思わず振り返ると、清水の手に、友菜からもらったお守りがあるのが見えた。



「何でおまえが、それを持ってるんだよ?」



「グラウンドに落ちてたらしくて、グラウンド整備をしていた人が届けてくれたんですよ」



きっとホームベース上で皆と抱き合っている時に落としたのだろう。



あの時は興奮しすぎて、無我夢中で喜んでいたから、全く気がつかなかった。



「それは大事な物なんだ。返してくれ」



「試合している時、何かあるたびにこれを握りしめてましたもんね?どうせ坂本先輩にもらった物なんでしょ?」



「そうだよ」



「返して欲しかったら、あたしについてきてください」



「…分かった」



清水のことだから、何をしでかすか分からない。



ここで怒らせたら、お守りを、引きちぎられる可能性だってある。



そう考えると、俺に選択肢は無かった。



清水は、学校の裏庭までやって来た所で、ようやく足を止めた。



「こんな所まで、来る必要あったのか?」



「2人きりになりたかったんですよ。そんな乙女心も分かんないんですか?」



「分かんねえよ…それで、話って何だよ?」



「まだあたしと付き合う気になれませんか?」



「はっ?」



「あたしモテるんですよ?このまま放っておいたら、他の人と付き合っちゃいますよ」



「勝手にしろ」



「そうですか。じゃああたしとデートしてください。デートくらいならいいですよね?減るもんじゃないですし。デートしてくれたらお守りを返しますよ」



「前にも言っただろ?俺は友菜のことが好きだから、他の奴とデートなんて出来ねえよ」



「別にいいじゃないですか~ケチな男は嫌われますよ?」



「だから無理だって言ってんだろ。しつこいぞ」



弱みに付け込んで、無茶な要求をしてくる清水に、俺の怒りはピークに達していた。



その時、清水の表情がびっくりしたような顔になったかと思うと、不気味な笑みを浮かべ始めた。



何か、良からぬことを思いついたのだろうか?



ガサゴソ



その時、後ろで、何か物音がした。



誰かいるのか?



物音に気を取られ、清水が近づいて来ていることに気づくのが一歩遅れた。



気付いた時には、俺と清水の唇が重なっていた。



「光ちゃ…」



その時、ここにいるはずの無い人物の声が、聞こえて来た。



俺のことを、光ちゃんと呼ぶ人間は一人しかない。



それ以前に、好きな人の声を聞き間違えるはずがない。



でも今だけは、勘違いであって欲しかった。



慌てて清水を引き剥がし、振りかえる。



そこには、この場を立ち去ろうと走り出した、友菜の後ろ姿が見えた。



「あ~あ、あたし達のこと、勘違いされちゃいましたかね~」



清水は含み笑いをしながら言った。



清水に、言いたいことは山ほどあったけど、今は清水の相手をしている場合ではない。



一度睨みつけてから、無言でこの場を立ち去った。



……





~友菜Side~



「待てよ、友菜!」



頭が真っ白なまま走っていると、後ろから、あたしの名前を呼びながら追いかけて来る光ちゃんの姿が見えた。



「……」



現実を受け入れられなくて、光ちゃんの呼びかけに応えることも無く、ただひたすら走り続ける。



だけど運動音痴のあたしが、光ちゃんのスピードにかなうはずもなく、すぐに追いつかれた。



ガシッ



光ちゃんに腕を掴まれる。



「やだ!離して!」



「落ち着けよ!俺の話を、ちゃんと聞いてくれ!」



「嫌だ!あたし達を待たせておいて、あんな人気のない所で2人きりで会ってキスするってことは、清水さんと深い仲なんでしょ?2人の関係を受け入れられるように努力するから、時間をちょうだい…今は光ちゃんの顔見れないよ…」



「だからキスは清水に無理やりされただけで、俺の意志じゃない。誤解だ!」



「でもあたし達を待たせておいて、人気のない裏庭で2人きりで会ってたのは、事実じゃん!」



「それは、事情があったからで…」



「どんな事情?」



「言えねえけど、やましいことは無い」



「やましいことがあるから、隠し事するんでしょ?やっぱり信じられないよ!」



感情をコントロールすることが出来ず、やがて涙が溢れだした。



「じゃあ、俺の本当の気持ちを、見せてやるよ」



「えっ?」



その瞬間、腕をグイッと引き寄せられたかと思うと、あたしと光ちゃんの唇が、そっと触れた。



何が起こったのか、一瞬理解することが出来なかった。



びっくりしすぎて、涙が止まる。



これが、あたしのファーストキスだった。



「ど…どうして、キスしたの?」



「まだ分かんねえのかよ!友菜のことが好きだから、キスしたんだよ!」



光ちゃんは真剣な表情で、あたしを抱きしめる。



会話の流れと雰囲気からして、あたしが光ちゃんに抱いている[好き]とは、明らかに違うことが分かった。



「あ…あたしと光ちゃんは、幼なじみだよね?」



「ああ。でも幼なじみであると同時に、ずっと友菜のことが好きだった」



「嘘…」



「友菜が、俺のことをただの幼なじみとしか見てなかったことは分かってる。ただこれを機に、俺のことを幼なじみじゃなくて、1人の男として見てくれ」



「……」



急展開に次ぐ急展開で、あたしの頭は機能停止寸前の所まで来ていた。



だから光ちゃんの問いかけに対し、ただ頷くことしか出来なかったのである。



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