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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
3rd Stage
19/40

~友菜Side~



7月



ようやく梅雨の季節も抜け、晴れの日が続いている。



気温も上昇し、日差しが強くなって来たのを、肌で感じるようになった。



いよいよ、夏の到来である。



夏と言えば海。



あたし達の中でも、海の話題で盛り上がっていた。



「海、行きたいね~」



「俺も~夏のビーチは、女の子の宝石箱やで~」



「おまえ、誰だよ…」



「まあまあ。智紀君が、浮かれる気持ちもわかるよ。海って楽しいもんね」



「楽しむって言っても、おまえ、いつも浮き輪でプカプカ浮いてるだけだろ…」



何を隠そう、あたしはカナヅチなのだ。



でもあたしはプカプカ浮いてるだけでも、楽しいんだけどな…



「そういえば、友菜は水着持ってるの?」



「う~ん…高校に入学した時に買った水着を、おとつい試着してみたんだけど、サイズが合わなくなってたんだよね…」



「成長期なんだね。うらやましいな~」



あたしの体を見渡しながら、唯香が言った。



「おまえは高1の頃から、成長してねえんじゃねえの?」



「うっさいわ。1センチぐらいは伸びたし」



「1センチとか伸びたうちに入らねえし。おまえはいつまでたっても、チビのまんまだな」



恒例の喧嘩が始まった。



「別に人の成長なんて、人それぞれだから、気にすることないよ。小柄な唯香は女の子らしくて可愛いから、あたしはうらやましいよ」



「友菜、ありがとう」



唯香が抱きついてくる。



「友菜ちゃん、高校に入ってから、だいぶ背が伸びたんじゃない?」



「そうかな?」



「あたしもそう思う。だって最近抱きついた時の頭の位置が変わって、ふかふかなんだもん」



そう言うと唯香は、あたしの胸に強く頭を押しつけて来た。



「ちょっと、唯香!」



「いいじゃん。女の子同士なんだし、減るものじゃないでしょ?」



「もう…」



「極上の抱き心地だよ」



そう言いながら唯香は、なぜか光ちゃんの方を見た。



光ちゃんは、なぜか苦笑いをしている。



いつも毅然としている、光ちゃんには珍しいシーンだった。



放課後



あたしと唯香は水着を買いに行くために、イオンに向かっていた。



唯香は水着をいっぱい持っているけれど、毎年新しい水着を買っている。



唯香いわく、流行に乗り遅れたくないらしい。



エスカレーターで2階まであがり、ファッションフロアに到着する。



その中でひときわおしゃれな店に、あたし達は入った。



「いらっしゃいませ」



品の良い店員さんが、あたし達を迎えてくれた。



「すいません。水着を探してるんですけど、どこにありますか?」



「はい。ご案内いたします」



店の奥に足を進めると、その一角に水着がずらりと並んだコーナーがあった。



「友菜、ちなみに今年の流行色って何色なの?」



「今年の春夏のトレンドは、モダンでシャープなブルー。あとは女性らしいきれいで上品なピンクだね」



「青とピンクか~」



「お客様、よくご存じですね」



「はい。ファッションに興味があるので、雑誌を読んで、毎日欠かさずチェックしてるんです」



「なるほど。だからお詳しいのですね」



「はい」



「それで、唯香はどの色の水着を買うの?」



「う~ん…あたしにブルーはあんまり似合わないと思うから、ピンクかな」



「ピンクか~きっと似合うと思うよ」



可愛い唯香には、ぴったりな色だ。



「だからあたしの代わりと言っちゃ何だけど、友菜はブルーにしてみたら?まあ自分の好きな水着を買ったらいいと思うけどね」



「ブルーか…あたしに似合うかな?」



私服としてもあまり持っていない色だから少し不安になった。



「まあ友菜はスタイルいいから、何色来ても似合うんだろうけどね」



「ありがとう」



「じゃあさっそく片っ端から試着しますか」



そう言うと、何着かのピンク色の水着を抱えて、更衣室の方へと消えて行った。



あたしも選ぶとするか。



ブルーを中心に見て回ることにした。



数分後…



「友菜、友菜~」



試着室の方から唯香の声がする。



「どうしたの?」



試着室の方まで歩いて行って、返事をした。



「あたし、もう決めたからさ、友菜も見てくれる?」



「うん」



ガラガラ



試着室のカーテンが開く。



ピンクの水着を身に纏った唯香が、立っていた。



花柄の水着に、フリルとリボンがついていて、とてもかわいらしい。



「どう?似合う?」



「うん。すごく似合ってて、可愛いよ」



「ありがとう。ほら次は友菜の番だよ。一緒に選んであげる」



「お願いします」



あたしはあまりセンスが良くないから、友菜が一緒に選んでくれると助かるな。



2人であたしの水着選びを始めた。



「う~ん」



唯香は、なぜか自分の時以上に、真剣に悩んでいる。



そしておもむろに、一着の水着を手に取った。



「これなんてどう?」



唯香が手にしているのは、ブルーを基調とした、白のドット柄があしらわれている水着だった。



「おしゃれだし、すごくいいと思うんだけど…」



「けど?」



「ちょっと布地の部分が少ないような気が…」



「今時の高校生はこれぐらい普通だよ。絶対に似合うから着てみなって」



「うん…」



「楽しみだな~」



唯香に押し切られて、試着をすることになった。



さっそく試着室に入って、着替える。



着替え終わって、自分の姿を鏡で見てみると、そんなに悪くはない感じだった。



でも胸元が、ちょっと開き過ぎな気がするんだけどな…



人前で見せることを思うと、すごく恥ずかしい気持ちになった。



「着替え、終わった?」



外から唯香の声がする。



「う…うん」



あたしがそう答えると、心の準備をする時間もないまま、唯香が外からカーテンを開いた。



「ど…どうかな?」



「想像以上だわ…こんな姿でビーチを歩いてたらナンパされるだろうね。ねえ、店員さん」



「はい。とっても良くお似合いですよ」



「ありがとうございます」



「光太君が見たら、どんな反応するか楽しみだな~」



「光ちゃん?」



「何でもないよ~」



こうして無事に、水着を買うことが出来た。



水着を買ってから数日が経ち、週末を迎えた。



ブーブー



夜ごはんを食べ終えて、リビングでテレビを見ていると、携帯が鳴る。



着信:光ちゃん



「もしもし」



「俺だけど、日曜日暇か?」



「明日?特に用事は無いけど、どうしたの?」



「この前、海に行きたいって話をしてただろ?」



「うん」



「実は明日急に相手の都合で練習試合が中止になって、うちの学校のグラウンドもサッカー部が練習試合で使うから、練習も出来なくて、休みになったからさ、どうかと思って」



「あたしはOKだよ」



「そうか。車は母さんに頼んであるし、どうせ智紀は暇だろうから、あとは唯香ちゃんの都合だけ、聞いといてくれるか?」



「わかったよ」



「じゃあ頼むわ。もしOKなら友菜の家に10時集合って言っといてくれ」



「うん。確認取れたら、すぐ連絡するね」



「おう。じゃあな」



「バイバイ」



ピッ



電話を切った。



そのまま、唯香に電話を掛ける。



「もしもし」



「もしもし。急な話なんだけど、明日野球部が休みになったから、海に行かないかって光ちゃんに誘われたんだんだけど、唯香は明日、何か用事ある?」



「大丈夫だよ。せっかく新しい水着も買ったし、早く海に行きたかったんだ」



「良かった~それじゃあ、明日あたしの家に、10時に来てくれない?」



「分かった。明日が楽しみだね!」



「うん。あたしも楽しみだよ!」



「それじゃあ、また明日ね」



「バイバイ」



ピッ



唯香から、OKが出た。



光ちゃんに確認した所、智紀君も大丈夫だったようで、皆揃って行けることになった。



これから野球部の夏の大会が始まるし、受験もあって、皆で遊ぶことも少なくなってくると思うから、いい思い出が出来るといいな。



翌日



唯香があたしの家にやって来て、ゴールデンウィークの時と同じように、一緒に朝食を食べた。



「「いってきます」」



「いってらっしゃい」



朝食を食べた後、お母さんに見送られながら、家を出た。



その後、2人で光ちゃんの家に向かう。



ピーンポーン



ガチャ



「いらっしゃ~い、ようこそ我が家へ」



光ちゃんの家なのに、なぜか智紀君が迎えてくれた。



「お前の家じゃねえよ…」



そう言いながら、光ちゃんが後ろから姿を現した。



「おはよう。2人とも準備出来てる?」



「ばっちりさ」



「まあ男なんて、ほとんど荷物ねえけどな」



「それもそうだね」



「出発するか。母さん、友菜達が来たから車頼む」



「はいは~い」



こうして海に向かって、出発した。



「友菜ちゃん、どんな水着買ったの?」



車が走り出して、すぐに智紀君が聞いて来た。



「ブルーのドット柄の水着だよ」



「へぇ~意外な色を選んだんだね」



「うん。唯香によると、今年の流行色らしいから」



「そっか。友菜ちゃんには、ピンクの水着を着てもらいたかったな」



「唯香は、ピンクの水着にしたんだよ。可愛い水着だから、智紀君、見惚れちゃうかもよ~」



「こいつがピンクの水着を着ても、意味ねえんだよ…」



「悪かったわね」



「まあまあ」



「友菜の水着姿可愛いから、期待しててね。光太君」



「ハハッ…」



そういえば、光ちゃんにも水着姿を見られることになるのか…



ちょっぴり恥ずかしいな…



車を走らせること30分。



目的地に到着した。



「「ありがとうございました~」」



「皆、青春して来るのよ。今から親戚の家に行ってくるから、迎えが必要になったら連絡してね、光太」



「ああ」



おばさんは、近くにある親戚の家に向かったようだ。



車から降りて、海に向かう。



ビーチには、既にたくさんの人の姿があった。



泳いでいる人、サーフィンをしている人、日光浴をしている人。



皆それぞれが形は違えど、海を満喫している。



あたし達もレジャーシートを敷き、ビーチパラソルを立てて、場所を確保した。



後は水着に着替えて、海に入るだけだ。



「あの…着替えたいので、ちょっとあっちを向いてくれませんか?」



海辺の方を指差しながら、光ちゃんと智紀君に向けて言った。



「友菜ちゃん、服の下に水着を着てこなかったの?」



「着て来たけど…」



「あんたには、微妙な乙女心が分からないのかね?」



「よく分かんねえけど、友菜ちゃんがそういうなら、向こう向いててあげるよ」



「ありがとう」



「こっち振り返ったら殴るわよ」



「暴力女め。待ってらんねえから、先に泳いでこよ」



そう言うと智紀君は勢いよく服を脱いで、海に向かって走って行った。



「智紀君、準備運動もしないで海に入って、大丈夫なのかな?」



「あんなやつ、放っておいたらいいのよ。あたし達は今から着替えるから、光太君も先に泳いできていいよ」



「俺は今から友菜の浮き輪を、膨らませなくちゃならねえから」



「そっか」



「ごめんね…」



あたしは肺活量があまり無くて、浮き輪がなかなか膨らまないから、毎回光ちゃんに頼んでいるのだ。



「別にいいって。着替え終わったら、言えよ」



「うん」



あたし達は、さっそく着替え始めた。



着替えると言っても、下に水着を着ているからすぐに着替えられる。



「へ…変じゃないかな?」



「凄く似合ってるよ。海に入る時に髪が邪魔になりそうだからくくってあげようか?あと日焼け止めも塗らなきゃね」



「うん。お願い」



後ろで髪をくくってもらって、あたしの手の届かない所に、日焼け止めを塗ってもらった。



これで準備完了だ。



「光ちゃん、お待たせ」



あたしが声を掛けると、光ちゃんが振り返る。



光ちゃんも、すでに水着に着替えていた。



当然、上半身は裸で、割れている腹筋が目に飛び込んで来る。



ちょ…直視できないよ…



「どうよ、光太君?ビーチのアイドルが降臨したよ」



「ど…どうかな?」



「いいんじゃね」



そう言うと、あからさまに目を逸らされた。



ガーン…



「あれ~光太君、何で目を逸らすのかな?」



「似合ってないかな?」



「そういう問題じゃねえんだよ。ほら、これ着とけよ」



そう言うと、あたしに向かって、パーカーを投げて来た。



「光太君が照れるなんて、貴重な姿が見れたな」



唯香はなぜかご機嫌だ。



「海に入る時以外は、それ脱ぐなよ」



そう言うと、光ちゃんはあたし達を置いて海に行ってしまった。



「行っちゃった…」



「たまには光太君をからかうのも、楽しいね」



「光ちゃん、褒めてくれなかったな…」



「心の中では、大絶賛してるよ」



「そうなの?」



「あたしには光太君の気持ちが分かるよ。パーカーを友菜に渡したのが、何よりの証拠じゃない」



「それは、あたしの水着姿が見苦しいから、隠せってことじゃないの?」



「まあ友菜には、微妙な男心は分からないか…」



「??」



「とにかく、光太君も似合うって思ってくれてるから、大丈夫だよ」



「う…うん」



唯香は確信を持っている様子だから、信じたほうが、いいのだろう。



せっかくの海で、落ち込んでても仕方ないし。



「そうだ!友菜に聞きたいことがあったんだ」



「何?」



「川越君のことだよ」



「えっ…川越君?」



まさかこんな場所で、川越君の話題が出てくるとは思わなかったから少しびっくりした。



「ぶっちゃけ友菜は、川越君のことどう思ってるの?」



「どうって言われても…」



「好き?嫌い?」



「好きか嫌いかって言われたら好きだけど、どう思ってるかって聞かれても、正直自分の気持ちがよく分かんない…」



「そう言うと思った。今まで冗談っぽく言って来たけどさ、あたし本気で川越君のこと好きなんだ」



「うん…」



「だから、友菜の気持ちもはっきりと聞きたい」



唯香が真剣な表情であたしの答えを待っている。



「さっきも言ったけど、この感情が恋なのかどうかは分かんない。でも一緒にいて楽しいし、川越君の前だと素のままの自分でいられるんだ」



「なるほどね。LoveかLikeか、恋愛素人の友菜には分からないってことだね」



「ごめんね…唯香のことを応援するって、言ってたのに…」



「友菜、謝っちゃだめだよ。元々応援してっていうのも勝手な話だから。恋愛は自由なんだよ」



「うん」



「どっちが川越君と付き合うことになっても恨みっこなし!女の子同士の友情はこんなことでは崩れないでしょ?」



「まだどうなるか分からないけど、もちろんだよ!唯香があたしのこと許してくれるならだけど…」



「そんなこと言ったら、怒るよ?」



「怒っていいよ。怒るってことは、あたしのことをちゃんと考えてくれてるってことだから」



「ちくしょ~かわいいこと言ってくれるじゃないか。もう怒ったぞ。突撃~」



「うわぁ」



唯香が、いきなりあたしに向かって、突進してきた。



「素肌の方が、柔肌を直接感じられるからいいよね~弾力アップ!」



「ちょ…ちょっと!」



「あたしは、怒ってるんだからね。だからそれを受け止めるのが、友菜の使命なんだよ」



「怒って抱きついてくるって、矛盾してない?」



「矛盾してないよ~だ」



「2人とも、何やってんの?俺も混ぜて~」



智紀君が、休憩をするために帰って来たようだ。



「智紀は、こっち来るな~」



唯香が智紀君に向けて、パンチを繰り出す。



しかし智紀君は、野球で鍛えた反射神経でひらりとかわした。



そして、砂に足を取られ、踏ん張りのきかなくなった唯香は、体ごと智紀君に向かって飛び込んだ。



バタン



「うわぁ!」



「いってぇ…」



もつれるようにして、2人は倒れ込んだ。



「2人とも大丈夫?」



「大丈夫、ちょ…ちょっと智紀!ど…どこ触ってんのよ」



「ふ…不可抗力だ。てかおまえが勝手に俺に向かって来たんだろ。と…とにかく早くどけよ!」



「まったく…あんたがいきなり避けるから、悪いのよ」



「はぁ?普通避けるだろ。俺に責任を押し付けるなよな」



「うるさい!」



お互い顔を赤くして、いつも以上のテンションで言いあいをしている。



砂がクッションになったおかげで、どうやら2人共、怪我は無さそうだ。



「おまえら、いったい何やってんだよ…」



なかなか海に入らないあたし達の様子を見に来たのか、大ちゃんも戻って来た。



全身砂まみれのまま立っている2人に、憐みの視線を送っている。



「智紀がいきなり相撲するとか言いだして、あたしを巻き込んだの」



「ち…ちげえよ、勝手なこと言うな!」



「おまえ、やっぱ最低…」



「無実だ~」



グ~



智紀君が叫んだ後、いきなり、あたしのお腹が鳴った。



「ハハッ…」



朝ご飯、ちゃんと食べて来たのにな…



恥ずかしい…



「そういえば、結構いい時間だね」



時計の針は、12時を少し回った所を指していた。



「昼飯食いに行くか」



「うん」



海で食べる昼食と言えば、海の家。



だから、あえて弁当は用意してもらわずに、海の家で食べる予定になっていた。



唯香と智紀君が全身の砂を払い終わってから、4人で海の家に向かう。



歩いていると、周りの視線をちらほら感じた。



[ほら見ろよ!あの子超美人じゃん]



[ホントだ。すらっとしててスタイルもいいしな。でも隣の子も可愛いじゃん]



[そうだな。でも男連れだから、声かけらんねえよな]



声までは聞こえて来ないが、何か話をしているようだ。



「チャラ男達の視線ウザいわ~」



「唯香が可愛いから、皆注目してるんだよ」



「はぁ…」



光ちゃんは、ため息をつく。



「光太君、ドンマイ」



「??」



「友菜ちゃんは分からなくていいんだよ。それにしても、髪をアップにした友菜ちゃんは大人っぽくて、見惚れちゃうな」



「そうかな?ありがとう」



「美雪のことを、いやらしい目で見てんじゃないわよ」



「うなじがたまらんですな~」



「気持ちわる…」



「光太はうなじの魅力、分かるよな?」



「……」



「無視するな~」



…気を取り直して、歩いて行く。



あたし達を見つめる視線の中には、女の子からの視線もあった。



2人共、かっこいいもんね。



智紀君は手を振り返していたけれど、ほとんど無視されていた。



どうやら、大半が光ちゃんへの視線だったようだ。



やっぱり光ちゃんは、女の子からモテるんだなと再認識させられた。



こうして視線を浴びながら歩き、海の家に到着した。



「いらっしゃいませ~」



昼食時とあって、海の家は、たくさんの人で溢れかえっていた。



テーブルが空いていなかったので、しばらく待つことになった。



「皆、何食べる?」



「俺、焼きそば大盛りと、ラーメン」



「光ちゃん、そんなに食べられるの?」



「1個当たりの量が少ないから、これぐらい頼まないと足りねえんだよ」



育ち盛りはすごいな~



「俺、カレー大盛り~あとラムネ」



「スポーツやってる人間が、炭酸飲むなよ」



「そんなの、自由じゃん。外で飲むラムネは、最高においしいんだぜ」



「勝手にしろ…」



「唯香は、どうする?」



「たこ焼きと、かき氷のイチゴにする」



「友菜は、どうするの?」



「あたしもたこ焼き~。あと、かき氷のブルーハワイ味も頼もうかな」



「友菜の水着の色と一緒だね。てかブルーハワイって何なんだろうね?」



「昔やってた映画の名前が由来だって説が一番有力だけど、詳しくは分かってないみたい。ブルーハワイは普通カクテルのことを指すのだけれど、かき氷にお酒は入れられないから、かき氷のブルーハワイは柑橘系の味に仕上げてあるらしいよ」



「そうなんだ。でも柑橘系の味だったら、ブルーハワイって言うイメージじゃないよね…」



「確かにそうかも…」



柑橘系なら、オレンジ色にするといいのかな?



10分ぐらい待った後、テーブルが空いて、ようやく注文の番が回って来た。



皆それぞれ注文し、食べ物が出揃った。



「「いただきま~す」」



智紀君はのどが渇いていたのか、勢いよくラムネを飲み始めた。



「く~うめえ」



あっという間に、飲み干してしまった。



「何で海の家の食べる食べ物って、こんなにおいしく感じるんだろうね?」



「それは、水着の店員さんの愛情がこもっているからだよ」



「おまえ、アホだろ…」



「そうだよ。水着の店員さん見て鼻伸ばしちゃって…気持ち悪い」



「別にいいだろ。このぼったくりと思える値段設定は、水着の店員さんが、接客をするというサービス料なんだよ。そう思うと、この値段でも安いもんだぜ」



「じゃあサービスいらねえから、安くしろよ」



「そうだよ。水着で接客されても、女の子には何のメリットもないじゃん」



「逆に男の店員だったら、男にメリットねえし」



「そこんとこ、どう説明してくれるのよ?」



「2人で俺に集中攻撃してくんなよ。何も言い返せねえじゃないか…」



「海の家は、需要と供給のバランスを考えると、圧倒的に需要の方が多いから、この値段設定でも飛ぶように売れるんだよ。それに仮設費用がかかるうえ、夏の間だけの短期契約だから、どうしても値段を高くせざるを得ないんだ」



「冷静な解説ありがとうございます…」



こんな会話をしながら、食事を終えて、海の家を後にして、元の場所まで戻って来た。



「それじゃ泳ぎに行くとしますか」



「智紀!あたしと勝負しなさい」



「はぁ?何でおまえと勝負しなきゃならねえんだよ」



「へぇ~逃げるんだ。じゃあ、あんたの負けってことでいいわね?」



「そこまで言うなら勝負してやるよ。俺、結構泳ぎに自信あるから、どうせおまえの負けだけどな」



「あたしもスイミングに通ってたんだから、素人になんかに負けないわよ」



そう言うと2人して海に向かって走っていった。



あたしと光ちゃんだけが取り残された。



「光ちゃんは泳ぎに行かないの?」



「さっき充分泳いだし、飯食ってすぐになんて泳ぎたくねえから、ここで日光浴でもしとくわ。荷物も見とかなきゃならねえし」



「そっか。あたしはまだ海入ってないから、行ってくるね」



「ああ。おまえロクに泳げねえんだから、あまり沖まで行くなよ」



「大丈夫。水面にプカプカ浮いてるだけだから」



「とにかく気をつけろよ」



「うん。行ってきます」



あたしも海に向かった。



唯香と智紀君は沖のほうで競争しているようだ。



まず軽く準備体操をしてから水に足をつける。



「冷た~い」



日光によって火照った体には心地良い冷たさだった。



いよいよ海に入る。



慎重に歩いて行き、浮き輪に体を預けながら、水面に浮かんだ。



体は波の動きに合わせて、ゆらゆらと揺れている。



「♪♪」



あまりに心地良くて、自然と鼻歌を歌ってしまっていた。



天気は快晴。



海から見る雲ひとつない青空もまた格別のものだ。



しばらく時間も忘れ、のんびりと過ごしていた。



……



ふと我に帰って周りを見渡してみると、だいぶ沖のほうまで流されていることに気がついた。



足を付けてみようと試みたけれど、もう足がつかない所まで来てしまっていた。



どうしよう…



その時、いきなり大きな波が押し寄せて来た。



「うわぁ~」



足を付けようとジタバタしていたため、波にのまれ、バランスを崩して、浮き輪を手から離してしまった。



泳げないため、必然的に犬かきをして何とか溺れないように努力する。



しかし体力的に長くは続かず、しばらくすると頭まで水に浸かってしまった。



ゴーグルを付けていなかったので、目も開けられず、ただひたすら水を掻くことしか出来なかった。



水を飲んでしまって、呼吸もままならない。



どうしよう…



まだやり残したことが、たくさんあったのにな…



なぜか、そんなことが頭をよぎった。



その時!



突如強い力で、下から体を持ち上げられた。



「ゴホゴホッ」



下から支えてもらうことにより、水面に顔を出すことが出来て、ようやく息をすることが出来た。



「友菜!大丈夫か?」



聞き慣れた声。



目を開けるとあたしが一番頼りにしている、見慣れた姿がそこにはあった。



「光ちゃ~ん」



恐怖から解放されて、思わず涙が出て来てしまった。



もたれかかるようにして、光ちゃんに体を預ける。



「大丈夫なんだな?」



「うん。少しだけ水は飲んじゃったけど、体は大丈夫だよ」



「まったく…おまえは本当に世話の掛かるやつだな」



「ごめんね…」



「あれほど沖のほうに行かないように気をつけろって言ったのに…」



「うん…反省してます」



「うとうとしてて、ふと海の方見たら、おまえ沖に流されてるんだぜ。しかも溺れかけてるし…マジ焦ったっての」



「助けてくれて、本当にありがとう」



「ああ。海岸まで戻るぞ」



「うん」



大ちゃんに手を引っ張ってもらって、何とか海岸までたどりついた。



陸に上がり歩いていると、唯香と智紀君が駆け寄って来た。



「光太君とラブラブで、泳ぎのレッスンしてたの?」



「友菜が溺れてたから、助けに行ってた」



「えっ!そうだったんだ…それで、友菜は大丈夫なの?」



「うん。光ちゃんがすぐに助けに来てくれたから、今はまったく平気だよ」



「良かったね、友菜ちゃん。ちゃんと光太王子に感謝するんだよ」



「光ちゃん、ありがとう。光ちゃんは、あたしの大好きな王子様だよ」



「ああ」



「そういえば、唯香と智紀君の勝負は、どっちが勝ったの?」



「あたしが勝ったに決まってるじゃない。素人相手に負けてられないよ」



「おまえがフライングしたから、この勝負は無効だ~」



「結局、あたしの圧勝だったんだから、ぐちぐち文句言わないの。罰ゲームを、受けてもらうわよ」



「くっそ~」



どうやら、今回は唯香が勝利したようだ。



後日、智紀君の罰ゲームが行われた。



内容は、おでこにバカと書いたまま、一日を過ごすというものだった。



クラスメイトはもちろんのこと、渡辺先生や他のクラスの人までも、笑いの渦に巻き込んでいた。



「くっそ~この屈辱、一生忘れねえからな」



智紀君は唯香に向かって、嘆いていた。



「ほ~ほっほ」



唯香は満足そうな笑みを浮かべながら、一日中智紀君を観察していたのである。



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