追及
翌日
学校に到着し、いつもの4人で話をしていた。
その時!
ガラガラ
教室のドアが開く。
そこには、思いがけない人物が立っていた。
「か…川越君」
あたしより先に、唯香が反応する。
久々に教室で見る川越君に、驚いているようだ。
「友菜~川越君が、教室に来たよ!」
「うん。珍しいね」
あたしが授業出ろってしつこく言ったから、出る気になってくれたのかな?
たぶん、ただの気まぐれだと思うけど…
唯香はずっと川越君を見つめているが、川越君は机に突っ伏したまま、微動だにしない。
キーンコーンカーンコーン
「あ~あ、鳴っちゃった…」
唯香はすごく残念そうな顔をしながら、自分の席に戻って行った。
ガラガラ
渡辺先生が、教室に入ってくる。
渡辺先生も入って来た時に驚きの表情で、川越君の方を見ていた。
その後も渡辺先生は、川越君のことが気になるようで、ちらちら川越君の方を見ながらHRを進めた。
HRが終わって、休み時間になる。
「おはよう、川越君、昨日はありがとね。教室にいるってことは、授業出る気になってくれたの?」
そう言った瞬間、川越君は体を起こし、こっちを見て来た。
その表情には、どこか憐みの色が感じられる。
あたし、何かしたかな?
その後、川越君はカバンから何かを取り出して、あたしに向かって投げて来た。
「うわぁ」
何とかキャッチした。
「おまえ、バカだろ?」
「今日初めて喋ったと思ったら、一言目がバカってひどくない?」
「薬局で商品買って、手ぶらで帰るとか、バカ以外の何物でもねえだろ」
袋の中身を見てみると、昨日あたしが買ったシャンプーだった。
「忘れ物なんて、誰でもするじゃんか!」
「そうだな。でもいい女になって俺を見返すとか言っておきながら、いきなりこのざまだな」
「し…仕方ないでしょ。ちび太と遊ぶのに夢中になってたから、シャンプーの存在なんて忘れてたんだもん」
「あっそ」
「不服だけど、とりあえず礼は言っておくね。ありがとう」
「じゃあ、目的は果たしたし、俺は行くから」
「どこに?」
「いつもの場所にだよ」
「授業は?」
「知るか」
「あっ!待ってよ~」
川越君は、あっという間に去っていった。
初めから、授業に出る気なんかなかったんだ。
きっとあたしにシャンプーを渡すためだけに、教室に来たんだと思う。
でも、川越君のあたしに対する言動や態度がひどくなってる気がするな…
あたしに対して、歯に衣着せぬ物言いになったということは、心を開いてくれたということで、とりあえずプラスに考えることにしよう。
「ちょっと、友菜~」
唯香がすごい勢いで、あたしに向かって来た。
「ど…どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ~いったい何から突っ込んでいいのか、良く分からないんだけど…」
「突っ込む?」
「昨日はありがとうってどういうこと?シャンプーをどこに忘れたの?それを何で川越君が持ってるの?ちび太って誰?神崎君の弟?」
陽菜は興奮した様子で、一気にまくしたてた。
「ちょっと、落ち着いて…」
「落ち着いてらんないよ~友菜と川越君が学校外で会うような、深い関係だったなんて…」
「唯香は、たぶん勘違いしてるよ…要約すると、昨日薬局で川越君に会って、飼い猫のちび太を見せてもらえることになって、川越君の家にお邪魔したんだけど、帰りにシャンプーを忘れて来たんだよ」
「それは、想像以上だわ。おまえ、川越とそんなに仲良かったっけ?」
光ちゃんも、会話に加わって来た。
心なしか、不機嫌そうな顔をしている。
「どんな形であれ、家に上がらせてくれるってことは、きっと川越君は友菜に心を許しているんだね」
「確かに最初の頃よりかは喋ってくれるようになったけど…そうなのかな?」
「さっきの川越と友菜ちゃんの会話聞いてたけど、川越が友菜ちゃんに気を許してる様に見えたし、お互いのやりとりが何か自然だったよね」
「智紀君から見ても、そう見えるんだ…」
「まあね。言い変えると、仲良くじゃれあっているようにしか見えなかったね。まあ俺には関係の無いことだけど…さあどうするの、お2人さん?」
光ちゃんと唯香を見ながら、智紀君は言った。
じゃれあうって…
そんなに他人から見たら、仲良さそうに見えたのかな?
「光太君、作戦会議しよ」
「そうだな」
そう言うと、2人とも、唯香の席へと行ってしまった。
「智紀君、光ちゃんと唯香は、何の会議をしてるのかな?」
「う~ん…よりよい未来を掴むために、2人で作戦を練っているんだよ」
「へぇ~2人は、すごくスケールの大きい話をしているんだね」
「まあね。2人の将来に関わって来る話だからね」
「えっ…光ちゃんと唯香が、将来結婚するの?」
「何でそうなるの…俺1人じゃ友菜ちゃんのボケに対応できない…2人とも早く帰って来てくれ~」
「??」
光ちゃんと唯香はずっと会議をしていて、1日中相手をしてもらえなかった。
……
~光太Side~
「友菜、いつの間に川越と仲良くなったんだろうな…」
「まったく気付かなかったよね。川越君が転校して来てすぐの頃なんて、喧嘩したとか言ってたし」
「まず友菜が、川越に対してどう思ってるかってのが、問題だよな…」
「そうよね…タイミングを見計らって、聞き出して見るわ」
「頼むわ。俺も機会があったら、それとなく聞いてみるし」
「うん。女の勘だけど、このまま行ったら、2人はもっと仲良くなって行きそうな気がするよ。そもそも女嫌いのはずの川越君が、友菜と普通に会話してる時点で凄いことだし」
「そうだな」
「友菜のこと保留にして、野球に集中するって言ってたけどどうする?」
「俺の誕生日が近いから、そこで何とかしたいけど…もし振られたら、俺夏の大会に平常心でいられる自信ねえわ…」
「そっか…光太君、友菜と同じぐらい野球のことも好きだもんね」
「もどかしいな…甲子園出場を決めて、告白するってのが、理想なんだがな」
「そうなるといいね。光太君の一生懸命に野球をする勇姿を見てたら、友菜の気持ちも揺れ動くかもしれないからね」
「そうだといいんだけど…」
難しい問題だよな…
そんなことを考えながら、1日を終えた。




