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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
2nd Stage
12/40

始まり

~和馬Side~



焼け付くような暑さ。



今日は、今年に入ってから、最も暑い日になった。



屋上は日差しが強かったので、俺は日陰のある場所を探す。



しばらく歩いて、体育館裏の日陰になっている草むらを見つけた。



体育館裏と言っても、体育館からは大分離れていて、音はほとんど聞こえてこない。



もちろん授業中だから、人の気配も感じられない。



コンクリートの上で横になり、やがて意識は遠のいていった。



……



「どうしよう…」



誰かがそう発したのと同時に、俺は意識を取り戻した。



ちらっと目を開けると…



「またこいつか…」



坂本の姿があった。



その姿を確認すると、再び目を閉じた。



話し掛けられても、面倒なだけだし…



そもそも何でこいつは、こんな所にいるんだ?



その答えは、すぐに明らかになった。



「あの…すいません」



「あたし2年の秋山花梨って言います。突然手紙で呼び出してしまってすいません。来ていただいて、ありがとうございます」



「はい」



どうやら女に呼び出されて、ここに来たようだった。



「突然ですが、坂本先輩って好きな人いますか?」



「い…いないよ」



「良かった~それなら…」



「ごめん!女の子と付き合うって言うのは想像できないんだ…」



ハッ?



誰も告白なんてしてねえだろ…



「あれ?」



「へっ?」



「何の話ですか?」



「えっと…女の子と付き合うのは想像できないっていう話?」



「あたしが聞きたかったのは、智紀先輩のことが好きかどうかってことだったんですけど…」



「えっ…智紀君?」



案の定勘違いだったようで、ちらっと目を開けると、坂本は自分の勘違いに気がついたのか、完全に放心状態に陥っていた。



「あたし、吹奏楽部で初めて野球の応援に行った時に、智紀先輩に一目惚れしたんです。それで前に智紀先輩を見かけた時、坂本先輩と仲良さそうに2人で話をしてたので、ちょっと心配になって…でも好きじゃ無いのなら良かったです」



「そっか…あはは~」



「智紀先輩に、あたしのことはまだ言わないでくださいね。仲良くなるきっかけは、自分で作りたいと思ってますから」



「う…うん」



「それでは、失礼します」



はぁ…



坂本の深いため息が聞こえてきた。



「そういえば、近くに川越君がいるんだった…まさか全部聞かれてた?聞かれてたとしたら、ものすごく恥ずかしいな…」



いきなり坂本が、独り言を喋り始めた。



俺に話しかけている様子でも無いから、きっと無意識の内に、心の声が漏れてしまっているんだろう。



「プッ」



不覚にも思わず吹き出してしまった。



その瞬間、坂本は我に返ったようで、意を決したように俺に近づいてきた。



「あ…あの~」



「………」



「今の話、全部聞いてた?」



「女の子と付きあうなんて、想像出来ないから」



「えっ?」



「お前が言ったんだろ。何驚いてんだよ」



なぜか無意識の内に、突っ込んでしまっていた。



「あたしに対して、初めてまともに会話してくれたことに驚いてるんだよ」



「変な奴」



「ハハハッ」



坂本は、なぜか大爆笑し始めた。



本当に意味不明な女だ…



「何がおかしいんだよ?」



「川越君がしまったって顔をしたのが面白くて」



「おまえ、俺を何だと思ってんだよ…」



「愛想悪い冷徹人間」



「ひどい言われようだな…てか冷徹人間って何だよ」



「何だと言われると難しいんだけど、初めて川越君を見た時、そう感じたんだよ」



「やっぱり変な奴」



「変な奴じゃないよ。あたしから見たら、川越君のほうがよっぽど変だよ」



「おまえのほうが変」



「川越君!」



「おまえ!」



「おまえじゃない。坂本友菜だよ」



「知ってる」



「覚えててくれたんだ~嬉しいな」



坂本のペースに乗せられて、思わずムキになってしまっていた。



「おまえは、いったい何なんだよ?」



「坂本友菜だよ」



「だから、分かってるっての」



「じゃあ、いったい何が聞きたいの?」



「何で、俺にそこまで構うんだ?」



正直不気味だ。



俺に恋愛感情があって、近づいて来る女は、たくさんいた。



でも坂本には、一切そんな空気は感じられない。



「自分でも、分かんないよ!」



返ってきた答えは、またもや意味不明のものだった。



「ハァ?」



「と…とにかく教室に…」



キーンコーンカーンコーン



チャイムが鳴った。



「チャイムが鳴ったぞ。生徒会長さんよ」



「……」



動揺しているのが、目に見えてわかった。



こいつはきっと、隠し事の出来ないタイプだろうな…



「早く教室に…」



「残る」



坂本から返ってきたのは、予想外のものだった。



「ハァ?」



「ここに残る」



「生徒会長が、授業をサボっていいのかよ?」



「不良生徒の更生も、生徒会長の仕事だから、これはサボリじゃないの」



「俺は不良じゃねえよ」



「そうだね。T大付属だもんね」



「ハッ?何でおまえが、それを知ってんだよ?」



「石原君から聞いた」



「ちっ…石原の野郎。しゃべりやがって」



「仲いいんだ?」



「別に仲良くねえよ。あいつが勝手に話しかけて来るだけだ」



「またまた~照れ隠ししなくてもいいんだよ」



「違うっての。まったく石原といいおまえといい、この学校は俺のペースを乱す変な奴ばっかだな」



「変な奴ばっかりじゃないよ。神崎君にはこの学校のことを好きになって欲しいな。田舎は、都会よりも優しくて暖かな心を持った人が多いんだよ」



「話が完全にずれてきてんだけど…どっから田舎の人のほうが優しいって話が出て来たんだよ…」



「あれ?」



「変な奴…」



その後も、話を続ける坂本。



「唯香がしんちゃんのモノマネを披露してくれたんだけど、全然似てなかったの」



「ふ~ん」



「そしたらね、智紀君が[俺のほうが似てる]って言って、モノモネをやったんだけど、智紀君もあんまり似てなくって」



「……」



「そしたら、光ちゃんがボソっと[ぞ~さん]って言って、その言い方が、一番そっくりだったから、あたし大爆笑しちゃったよ」



唯香?智紀君?光ちゃん?



せめて人物説明ぐらいしろよ…



こんな調子で、喋るだけ喋った後…



「あたし、そろそろ教室に戻るね」



「………」



「それじゃあね」



坂本は去って行った。



今思えば、これが始まりだった。



この後、2人の関係は徐々に変化していく…




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