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ロイヤルロード(上)  作者: Koko
2nd Stage
11/40

前進

川越君が転校してきてから3日が経った。



石原君の情報によると、川越君は学校には来ているらしいけど、やはり授業には参加していない。



あたしもあの日以来、川越君に話しかけられずにいた。



今日は光ちゃんが朝練で先に行ってしまったので、1人で登校する。



「おはよう」



「おはようございます」



校門の所に立っている先生と、あいさつを交わす。



校門をくぐり、靴を履き替えるため、げた箱を開ける。



ん?



上履きの上に、手紙らしきものが置いてあった。



まさかと思い、中を開けてみると…



[昼休みに、体育館裏まで来てください]



そう書かれた紙が入っていた。



まさかラブレター?



どんな人からなのかな…



どうしよう…



そんなことを考えながら、教室に向かった。



「おはよう」



光ちゃんと智紀君は朝練があるみたいで、唯香しかいなかった。



「おはよう、友菜。どうしたの?そわそわして」



「な…何でも無いよ。ハハハッ」



「怪しい…」



「本当に何でも無いんだってば~」



「ふ~ん。まあいいや」



何とか、唯香の追及を交わすことができた。



バレなくてよかった…



唯香にバレたら、絶対について来るって言いそうだし…



それから何事もなく時が過ぎ、昼休みを迎えた。



いつものように、4人で弁当を食べる。



「ちょっとお手洗いに行ってくるね」



「いってらっしゃい」



唯香の様子を見ている限り、バレてはいないようだ。



教室を出て、急いで体育館裏に向かう。



ドキドキ…



緊張がピークに達した頃、体育館裏に到着した。



まだ誰も来ていない様子。



とりあえず、コンクリートの上に腰を下ろす。



そこは日陰になっていて、山の方からは心地よい風が吹いてくる。



絶好の昼寝スポットなんだろうな…



そんなことを思いながら、あたりを見渡してみると…



あっ!



5メートルほど先に、川越君の姿を見つけた。



まさか、川越君が手紙を?



そんな訳無いか…



そんな様子は微塵も無く、まさに昼寝の真っ最中といった様子だった。



どうしよう?声を掛けてようかな?



と…とにかくラブレターの件を解決してから、どうするか決めよう。



そう思いながら、ラブレターの主が来るのを待った。



「あの…すいません」



「はい」



しばらくして、背後から声がかかる。



緊張の一瞬。



振り返ると、髪の長い綺麗な女の子が立っていた。



えっ…



これは予想外の展開だ。



どうしよう…



女の子に告白されるとは、思ってなかったよ…



軽くパニック状態に陥っていくのを、感じた。



「あたし、2年の秋山花梨って言います。突然呼び出してしまってすいません。来ていただいて、ありがとうございます」



「は…はい」



「突然ですが、坂本先輩って好きな人いますか?」



あたしより背の低い秋山さんに、上目遣いで言われ、さらに緊張感が増していく。



「い…いないよ」



そう言った瞬間、秋山さんが安堵の表情を浮かべたのが見えた。



「良かった~それなら…」



「ごめん!女の子と付き合うって言うのは、想像できないんだ…」



秋山さんの言葉を遮って、はっきりそう告げた。



罪悪感から目を見れず、少し伏し目がちになる。



確認するのが怖くて、ちらっと目線をあげると、秋山さんは泣いていなかった。



頭に?マークを浮かべながら、首をかしげている。



「あれ?」



「へっ?」



あたしは、会話が噛み合っていないことを悟った。



「何の話ですか?」



「えっと…女の子と付き合うのは、想像できないっていう話?」



「あたしが聞きたかったのは、智紀先輩のことを、好きかどうかってことだったんですけど…」



「えっ…智紀君?」



秋山さんの言葉を聞いた瞬間、自分がとんでもない勘違いをしていることに気付いた。



「あたし、吹奏楽部で初めて野球の応援に行った時に、智紀先輩に一目惚れしたんです。それで前に智紀先輩を見かけた時、坂本先輩と仲良さそうに2人で話をしてたので、ちょっと心配になって…でも好きじゃ無いのなら良かったです」



「そっか…あはは~」



唖然とするとはまさにこのことであろう。



「智紀先輩には、あたしのことまだ言わないでくださいね。仲良くなるきっかけは自分で作りたいと思ってますから」



「う…うん」



「それでは失礼します」



結局ショックから立ち直る間もなく、秋山さんは去って行った。



はぁ~



深いため息をつく。



そういえば、川越くんが近くにいるんだった…



まさか全部聞かれてた?



聞かれてたとしたら、ものすごく恥ずかしいな…



「プッ」



そんなことを考えていると、いきなり吹き出す音が聞こえてきた。



周りを見渡してみる。



秋山さんが去った今、あたしの周りには昼寝をしている川越君しかいない。



川越君の方を見る。



寝ているはずなのに、さっき見た時より明らかに口角が緩んでいた。



おそるおそる近づいて行って、話しかけてみる。



「あ…あの~」



「………」



「今の話全部聞いてた?」



「女の子と付きあうなんて、想像出来ないから」



「えっ?」



「お前が言ったんだろ。何驚いてんだよ」



「あたしに対して、初めてまともに会話してくれたことに驚いてるんだよ」



そう言うと、川越君はしまったという顔をした後…



「変な奴」



苦し紛れに言い放った。



「ハハハッ」



「何がおかしいんだよ?」



「川越君がしまったって顔をしたのが、面白くて」



「おまえ、俺を何だと思ってんだよ…」



「愛想悪い冷徹人間」



「ひどい言われようだな…てか冷徹人間って何だよ」



「何だと言われると難しいんだけど、初めて川越君を見た時に、そう感じたんだよ」



「やっぱり変な奴」



「変な奴じゃないよ。あたしから見たら、川越君のほうがよっぽど変だよ」



「おまえのほうが変」



「川越君!」



「おまえ!」



「おまえじゃない。坂本友菜だよ」



「知ってる」



「覚えててくれたんだ~嬉しいな」



これまでの拒絶が嘘のように、会話が繋がる。



ようやく、苦労が報われたんだなということを感じた。



「おまえは、いったい何なんだよ?」



「坂本友菜だよ」



「だから、分かってるっての…」



「じゃあ、いったい何が聞きたいの?」



「何で、俺にそこまで構うんだ?」



「自分でも分かんないよ!」



「はぁ?」



「と…とにかく教室に…」



キーンコーンカーンコーン



肝心の本題に入ろうとしたところで、それを遮るように、タイムアップを告げるチャイムが鳴った。



「チャイム鳴ったぞ。生徒会長さんよ」



「……」



「早く教室に…」



「残る」



「はぁ?」



「ここに残る」



「生徒会長が、授業をサボっていいのかよ?」



「不良生徒の更生も、生徒会長の仕事だから、これはサボリじゃないの」



「俺は不良じゃねえよ。意味無い授業聞きたくねえだけだ」



「そうだね。T大付属だもんね」



「はっ?何でおまえがそれを知ってんだよ?」



「石原君から聞いた」



「ちっ…石原の野郎。しゃべりやがって」



「仲いいんだ?」



「別に仲良くねえよ。あいつが勝手に話しかけて来るだけだ」



「またまた~照れ隠ししなくてもいいんだよ」



「違うっての。まったく石原といい、おまえといい、この学校は、変な奴ばっかだな」



「変な奴ばっかりじゃないよ。川越君にはこの学校のことを好きになって欲しいな。田舎は、都会よりも、優しくて暖かな心を持った人が多いんだよ」



「話が完全にずれてきてんだけど…どっから、田舎の人のほうが優しいって話が出て来たんだよ…」



「あれ?」



「本当、変な奴…」



その後も、他愛のない世間話をした。



ほぼ、あたしが喋ってただけだけど…



川越君は意外と話をしやすくて、話したいことが次々に頭に浮かんできた。



まあ、半分以上あたしの話を聞いていなかったのは、この際気にしないで置こう。



話が一区切りした所で、5時間目の終了を告げるチャイムがなった。



チャイムが鳴ったということは、1時間以上、川越君と話をしていたことになる。



まったく気づかなかった…



楽しいことは、時間があっという間に過ぎるっていうけど、それだけ、川越君との会話を、楽しんでいたと言うことになるのだろうか。



とりあえず、教室に戻ることにした。



「あたし、そろそろ教室に戻るね」



「………」



「それじゃあね」



無反応の川越君を置いて、教室に戻る。



あたしには、川越君と初めてまともに話せたという満足感が漂っていた。



「あっ…しまった…」



そのまま意気揚々と歩いている内に、重大な事実に気がついた。



あたしが川越君に話しかけたのは、授業に出てもらうように交渉するため。



結局その話をするのを、忘れていた。



つまり、この1時間は、本当に単なるサボりになってしまっていたのだ。



さらに、秋山さんからの告白勘違い事件があったことも思いだして、ますます自己嫌悪に陥った。



何してんだろ、あたし…



ガラガラ



ブルーな気分のまま、無意識の内に、教室のドアを開けていた。



「ちょっと友菜!どこ行ってたのよ」



ドアを開けた瞬間、いきなり唯香からの追求が待っていた。



しまった…



お手洗いに行くって言ったまま、それっきりだったことを思いだした。



慌てて言い訳を考える。



「ちょっとお手洗い行った帰り道に、立ちくらみがしたんだ…だから保健室で休ませてもらってたの…」



そう言うと、急に唯香は深刻そうな顔に代わった。



「そうなんだ…大丈夫なの?」



「1時間寝たから、すっかり元気になったよ」



嘘ついてごめん、唯香…



「そっか…でも今日は早く帰って寝なよ。渡辺先生にはあたしから言っとくし」



「でも後1時間だから、授業受けてから帰るよ」



「わかった。でも無理はしないようにね」



「うん。ありがとう」



唯香の優しさが、少し痛い…



でも本気で心配してくれて、嬉しかった。



その後、6時間目の授業を受けて、放課後になった。



HRが終わった後…



「坂本さん、この後、先生の所に来てください。それでは坂本さん、号令をお願いします」



「起立、令、さようなら」



「はい。さようなら。気を付けて帰るのよ」



予想通り、渡辺先生に呼び出された。



さすがに教師に嘘はつけないので、渡辺先生には、本当のことを話そう。



「坂本さん、どうしたの?5時間目いなかったみたいなんだけど…」



「すいません。ただのサボりです」



「えっ…」



渡辺先生は、ものすごく驚いた表情をしている。



「坂本さんが、何の理由もなくサボるなんてありえないよね?何か理由があるんでしょ?」



「別に無いですよ。川越君を見つけたから、話をしてただけで…」



あ~怒られるのかな…



人生で初めて授業をサボったし、優等生でこれまで通っていたので、今まで先生に怒られたことは1度も無い。



なぜか、少しワクワクした。



渡辺先生が何も言ってこないので、表情を見てみると、なぜか泣きそうな顔になっていた。



「あたしのせいで、坂本さんに授業サボらせちゃったんだね。あたしが川越君のこと頼むなんて言ったから…ごめんね、坂本さん」



渡辺先生から聞こえてきたのは、謝罪の言葉だった。



「何で渡辺先生が謝るんですか?100%あたしが悪いのに…」



「そんなことないよ。あたしが転校生を気にかける余裕ないから、悪いんだよ…」



「新任教師なんだから、仕方ないですよ。あたしに出来る事なら、何でも協力しますから」



「ありがとう」



「と…とにかく、本当に単なるサボリ…」



「あっ!職員会議が始まるんだった。あたし、もう行かなくちゃ。5時間目は出席したことにしておくから、心配しないでね。それじゃまたね、坂本さん」



「ちょ…ちょっと!」



あたしにとってはいい方に誤解されたまま、渡辺先生は去って行った。



う~ん…これで良かったのかな…



でもどうしようもないか。



教室を出ると、唯香が待っていてくれた。



「渡辺先生との話、終わった?」



「うん」



「とりあえず、今日は生徒会に行かずに帰ろっか。勇気君にも、今日は無しって連絡しておくし」



「ありがとう」



そのあと唯香に家まで送り届けてもらい、色んな事があった1日は終了した。





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