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贈り物語り――モンテスキューに憧れて――  作者: 王道楽土
3章 『偉大なことを成し遂げる人は、つねに大胆な冒険者である』
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  B-SIDE

「いいから女の子は座ってて」


「キッチン借りるね幸江ちゃん。ささっとつまみ作るから」


「隆司君料理できるんだぁ。すごぉーい」


いたたまれない。

了承したとは言え幸江の自宅でついさっき合ったばかりの隆司と則明の大学生と四人で食事会。

三人の言葉のやり取りを聞いていると、自然と心でつっこんでしまう。

勿論、馬鹿にした類のものだけど。


「先に飲んでて。お酒じゃないから。それとも今日はいっちゃいますか!?」


空気の読めない則明が、コップに入ったジュースを二つテーブルに置き、癪に障る発言をした。

両手をパンと叩き広げるという鬱陶しいアクション付き。


「いっちゃいませんので。わたし達はジュースでいいです」


舌打ちするような表情を浮かべた則明は、隆司のいるキッチンへ戻っていった。

幸江に酒は絶対に駄目だ。

こないだみたく、わたしは絡まれるに決まっている。

それを反省してたのか、幸江もきちんと断りオレンジジュースを飲む。


しばらくすると、隆司がキッチンから料理を運びだした。

何やらいい匂いがする。


「お待たせ―。大したものじゃないけどよかったら食べて」


玉葱を細くスライスしたサラダ。

あらびきソーセージがのった皿にマスタードソースとケチャップの入った小さなカップ二つ。

ペペロンチーノ大盛り。

厚揚げ豆腐を焼き、その上に青ネギと胡麻を大量に乗せたもの。

5人分はありそうな枝豆。


他人のキッチンで僅か30分程度でこの出来栄え。

少し興味が湧いたわたしは初めて隆司に話しかける。


「隆司さんって料理得意なの? やけに仕上げ早いからさ」


「得意ではないけど、居酒屋でバイトしてるから。それに則明にも少し手伝ってもらったんだよ。あ、あとおばさん家のキッチン使いやすかったから。調理器具沢山あるしキッチン広いし、幸江ちゃんは羨ましいよ。こんな家に住めて」


おばさん? 

そういえばまだ三人の関係性を訊いていなかった。


「幸江。隆司さんって――」


「従兄だよぉ。隆司君はわたしの従兄」


わたしの質問を食い気味で答えた幸江は、当然のように言った。

最初から説明してくれれば、多少なりともわたしの怒りは軽減されていたのに。

何故言わなかった。

まあそれが幸江なのだろうとひとりで納得した。


それにしても全く似ていない二人です。

顔も性格も全然違う。

従兄ってそうゆうものなのかな。

親戚と会ったことがない――いるのかも知らない――わたしにはこういった関係性というのは、不思議なものに感じる。

血は繋がっているけど、別々の家庭環境。

そんな誰でも当たり前のことが不思議に感じるわたしは変わっているのかな。


「うえぇーい。ジュースのお代わりお待ちー!」


落ち着きのある隆司と違い、はっちゃけた則明に好意を抱くことは絶対にないだろう。


食べて食べてと勧められ、それぞれ一口食べてみる。

美味しい。

やるな隆司と上から目線で褒めたが口には出さない。

いつもは思ったことを口に出すが、相手を褒めたり、感謝したりする言葉というのは、フィルターがあるらしく濾過された言葉をわたしは言う。


「うん。悪くないね」


「不味くなければ良かった。幸江ちゃん好き嫌い多いけどいける?」


「大丈夫だよぉ。美味しいよ隆司君。将来コックになればいいのに」


「ははは。無理無理」


わたしの愛想無い返事を受け流した隆司。

特に不機嫌な顔もせず、幸江と将来の話をし始めた。

則明もリビングに戻り、並べられた料理と酒を交互に飲み食いしていた。

わたしから話しかけることなく、相槌を打つ会話が続いた。


それにしても暑い。

幸江の自宅に着きリビングに入った時に、むんとした熱気がわたし達を襲い、幸江が即座に冷房を入れていた。

しばらくして涼しかったのに何故か今は暑い。

他人の家の設定温度に提言することは出来ず、しばらく我慢した。

三人は暑くないのか目を配ると、幸江が少し暑そうにしていた。

これなら言いやすい。


「幸江。暑くない?」


「ちょっと暑いねぇ。温度下げよっか」


立ち上がった幸江は少しよろめき、リモコンを手にしボタンを二回押す。設定温度を二度下げたのだろう。

ピ、ピとデジタル音が二度鳴った。


食事も終盤であり、ほとんど平らげた料理を見た隆司と則明は立ち上がり片付けをしだした。

わたしも手伝おうと皿に手を伸ばすと、隆司に遮られた。


「ああ、いいよ。俺らがやるから。二人は談笑でもしてて」


「どうも。でも悪いんで」


「いいから飲んでてよ」


 しつこく手伝おうとするのも迷惑と思い、幸江と談笑でなく帰る旨を伝える。


「幸江。わたしもうすぐ帰るね。ねえ聞いてる?」


ソファーに移った幸江はどうやら寝てしまったらしい。

実はわたしも急激に眠気が襲っていた。

頭も少しクラクラとし、血が上っているみたい。

なんだろうこの初めての感覚は。

全身が滲んでいるみたいに、ジーンとする。


「ちょっと幸江。わたし帰るよ」


強く揺さぶっても幸江は起きない。

気持ち良さそうに眠っている。

仕方ないそのまま帰ろう。

従兄がいれば変なことも起きないだろう。


――経験のないわたしは浅はかであった。

男の性欲というものに。

軽はずみな誘いなど受けるべきではなかった。

これも未熟故なのかな。

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