A-SIDE-2
路肩に駐車違反してあるこの白いセダンに乗り込んでまずATだったことに安心する。
次にしたことはトランクルームを開けた。
鞄を入れる為ではなく、余計な産物が積んでいないかの確認だ。
――トランクルームには黒いナイロンの鞄がひとつ。
しかし中身は入っていないであろうことは、目視でなんとなくわかった。
ぺっしゃんこなのだから。
実際に黒い鞄を手に取りチャックを開けてみたが、やはり何も入っていなかった。
「よし。あ……ごめんスズメさん。先に助手席を開けとけばよかったね」
「それはいいんだけど、トランク開けたのにその勇君の持っている鞄は入れないの?」
「ああ……いいんだよこれは。と、友達がさ、何かトランクに入れ忘れているかもしれないかなって思っただけだからさ」
「ふーん」
少し挙動不審の僕を怪訝そうに見つめる彼女。
慌てて僕は車に乗り込み、助手席を開けて彼女も乗り込んだ。
それにしても暑い。
そして煙草臭い。
「冷房効くまで窓開けとこっか」
エンジンを掛け、冷房を全開にして鞄を後部座席にそっと置いた。
「ねえ」
トートバッグを大事そうに抱える彼女は、か細い声で僕を呼んだ。
「どうしたの?」
「本当に香川県行くの?」
「行くよ。その前に服屋とパスタ屋とコンビニに寄るけどね。やっぱり遠出するの後ろめたいなら辞めとく?」
「そんなんじゃない。なんか事がトントン拍子というか何というか……」
「それは僕も同じだよ。でもいいじゃないトントン拍子ならそれで。いける時にいっちゃえって感じかな、今の僕は……ちょっと大胆なのかもしれないけど」
しばし沈黙の時間が流れた。
彼女からトントン拍子と言われ正直驚いた。
それはこのゲームらしきものに関わっていない口調だったからだ。
「うん。うん、そうだよね。香川県の引田って場所しかわからないけど、問題ないよね。トントン行っちゃおう!」
この時は香川県の引田とか言う場所に行けば何とかなると思っていた。
彼女の行っちゃおうという言葉で数カ月ぶりのドライブがスタートしたのだった。




