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アイスクリームの魔法を手に入れた!~森の魔女と、魔吸の禁術~  作者: 悠然やすみ
第一章「アイスクリームの魔法を手に入れた!」(2013年11月3日に完結済みです)
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第一話「飛ばされて、異世界」 2

「うーん、もう食べられないよ……」


 気づいた時、私の周りには、沢山のアイスが浮かんでいた。バニラは勿論、イチゴ、オレンジ、メロン、レモン、チョコ、抹茶、小豆、ミント……色とりどりで見た目にも華がある。あまりにも詰め込み過ぎたせいで、私の腹はパンパンに膨れ上がっていた。


「とても幸せ……まるで夢みたい」


――夢ですよ。


「え?」




 目が覚めると、私は先ほどまで過ごしていた公園ではなく、不可思議な空間にいた。周りは淡くて白い光に包まれていて、どうなっているのかイマイチよく分からない。私の他には誰もいないようだけど、それなら先ほどの声は一体誰のものだったのだろう。空耳だろうか。何だか、優しげな大人の女性って感じだったけど。


――どうやら、起きたようですね。


「わわっ!」


 いきなり声が響いてきたので、私は動転して周囲を見回した。けれど、やはり誰もいない。


――そんなに慌てないでも大丈夫ですよ。


「む、無理だよそんなの! どんな人でも絶対に慌てるよ!」


――私は女神です。


 思いもよらない名乗りに、私の心は更なる困惑の渦へと巻き込まれていく。


「あなた、女神様なんですか!?」


――そうです。つい最近、試験に合格しました。


「女神にも試験なんてものがあるんですか?」


――はい、倍率が高いので必死に猛勉強しました。


「そりゃそうですよね! だって女神様ですもんね!」


 あまりに突拍子のない話なので、私の目はぐるぐるぐるぐる回っていく。絶えずに様々な疑問が私の心中に浮かび上がりまくっていた。


「あ、あの! その女神様が私に何の用なんですか!?」


――その前に、私からの質問に答えて下さい。あなたは『高校受験の準備そっちのけで休みをだらだらと過ごし、最後の日くらいはしっかりと勉強しようと思ったがやはり気が乗らず、本の返却ついでに公園のベンチでだらだらと帰宅を遅らせていた春川ミズホ』さんですか?


「な、なんか余計な修飾語が多いよっ!」


 けっこう心にグサグサとくる事実を優しげな声色で淡々と告げられ、私は涙腺がじわじわと弛んでいくのを感じた。


――涙目になっているという事は、どうやら本人で間違いないようですね。


「そういう確認方法ヒドい!」


――あなたは見事、天界で極秘に進められていたプロジェクトの対象に選ばれました。


「……え?」


 女神様の告げた事の意味が分からず、私は首を傾げる。


「プロジェクトの、対象?」


――はい。全世界で一人のみの抽選です。おめでとうございます。


 どんな宝くじよりも確率が低いと考えると、何だか自分がとても運の良い人間のように思えてきて、私は先ほどまでの悲痛な気分が和らいでいくのを感じた。むしろ、嬉しさを感じ始めたくらいである。


「ねえねえ」


 天にも昇る浮かれ気分で、私は女神様に訊ねた。


「そのプロジェクトってどういうものなの?」


――今からあなたには、異世界で暮らして頂きます。


「へえー、私これから異世界で暮らすんだ……ってええええええ!?」


 予想の斜め上をいく内容に、私は思わず絶叫してしまった。


「なんで!? どうして!?」


――天界で行われている研究の為です。


「それって私、実験体って事!?」


――その通りです。


 どうやら、宝くじの当選者とは似て非なる扱われ方らしいと、私は今更ながらに気づいてしまった。


「そんないきなり言われても! 準備する時間くらいないと困るよ!」


――まあ、良いじゃないですか。どうせ受験の準備もしていなかったんですから。そうする時間はたっぷりとあった筈なのに、後回し後回しとダラダラ……。


「い、痛い所を突かないでよおおおおおおおお!」


 この女神は絶対に私をなぶって楽しんでいるのだと、私は直感した。直感しながら涙腺が崩壊した。心が辛い。苦しい。どうしようもなく自業自得ではあるけれど、なんか微妙に理不尽である。


――それでは説明に入りますね。あまり時間もありませんので。


「……うう」


 悔し涙を流し続ける私を無視して、女神様は言葉を続ける。それによると、どうやら私が今から連れていかれる世界の言語や重力の感じ方など、そういった世界を渡るにあたって不都合になる部分は前もって女神様の魔法でどうにかしてもらえるらしい。つまり、向こうの世界に到着した私は向こうの世界の言葉を喋れて、向こうの世界の重力に適応していて、向こうでも面倒な事を後回しにする癖は直っていないそうだ。


「……って、いちいち最後にひどい事言わないでよおおおおおお!」


 涙が滝のように溢れてきて、私は手の甲を使って必死に流れをせき止めようとする。


――まあまあ、落ち着いて下さい。これから一つだけ貴女に与えられる特典の話をするのですから。


「特典……?」


 妙に聞き心地が良い熟語が耳に入ってきて、私は両手で目を擦るのを止め、顔を上げた。




――はい。貴女には本プロジェクトに関わる特典として、お好きな能力を一つ習得する権利があるのです。

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