表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026
砂漠の国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

227/227

第227話:上層商業区の拒絶と、油圧切断のレスキュー論理

 制御を失って激しく狂乱していた巨大貨物昇降機『レガリア・リフト』をチェーンブロックの摩擦論理によって完璧に制動し、ポート・レガリアの上下インフラを正常化してから数分。

 

 カイトの四輪駆動車と白銀の高級キャンピングトレーラーは、安全に停止したリフトのプラットフォームを滑らかに滑り出し、ついに崖の上にそびえ立つ広大な『上層商業区』へと進入していた。

 

 そこは、本来であれば大陸全土から集まった商人の声が響き渡り、大理石の美しい店舗が立ち並ぶ、ポート・レガリアで最も華やかな中心地であるはずだった。

 

 しかし、フロントガラスの向こうに広がっていたのは、人っ子一人いない不気味な静寂と、無残にねじ切られた石造りの街灯や、深く切り裂かれた店舗の壁面という「破壊の爪痕」だった。

 

「……判定。上層商業区のメインストリートにおいて、深刻なセキュリティインフラの暴走を感知。……大霊峰の魔力が復旧した影響により、市場一帯の防犯を統括する古代の『物価・防犯管理中枢マーチャント・コア』が過剰同期を起こしている。……全領域を『重過失・不法侵入エリア』と誤認識し、自動排斥モードへと突入している構造不備を感知」

 

 カイトは衣服に汚れ一つない、いつもの三人が最初からお揃いで着ている漆黒のジャージを纏ったまま、無表情でハンドルを握り、ダッシュボードの透過マップを見つめていた。

 

 その聲音は徹頭徹尾、冷徹そのものだったが、通行するすべての存在を無差別に破壊しようとする自動システムの融通の利かないバグを睨みつける瞳には、徹底的な「デバッグの意志」が宿っていた。

 

 シュババババシィィィン!!!

 

 大通りの曲がり角に差し掛かった瞬間、空間そのものが鋭く引き裂かれるような甲高い金属音が鳴り響いた。

 

 広場の中央に鎮座する不気味な真紅の魔導碑から、侵入者を絡め取るための古代の『超硬合金・高圧捕縛ワイヤー(鋼線ネット)』が、蜘蛛の巣のように網の目のように空間全体へと一斉に射出されたのだ。

 

 ガガガガガ、ギィィィィィン!!!

 

 ワイヤーに放たれた高圧電流と、触れるものすべてを細切れにする物理的な剪断力が四輪駆動車のフロントバンパーを激しく叩いた。

 

 カイトの『重力操作』による姿勢制御をもってしても、全方位から不規則に絡みついてくる高電導ワイヤーの前に、車体は強引にその場へと縫い留められ、ガタガタと激しい火花を散らし始める。

 

 車内のエアコンディショナーが一時的に過負荷のエラー音を鳴らし、不穏な焦げ臭い熱気がじわりと室内に侵入し始めた。

 

「あうぅ……っ! カイト様、お外からビリビリする硬いヒモ(ワイヤー)がいっぱい飛んできて、お家をギューって締め付けています……っ! これじゃあ、お車が前に進めないです……。……あ、もぐもぐ。でも、カイト様がさっき出してくれたこの『極冷フリーズドライ・イチゴのホワイトチョコがけ』、サクサクで甘酸っぱくて、リア、お腹の底から勇気が湧いてきます……っ!!」

 

 助手席のリアが、お揃いのジャージの袖をパタパタと揺らしながら、チョコを口に運びつつ、窓の外で移動要塞に絡みつく無数の黒鉄のワイヤーを警戒するようにキッと睨みつけていた。

 

 彼女の言葉には、おやつの美味しさへの「純粋な愛着」と、それ以上に、大切な居場所を傷つけようとする防犯システムへの「野生の激しい怒り」が溢れていた。

 

 最高のコンディションを維持している彼女の肉体だったが、ワイヤーが周囲に展開している強烈な高圧電流の磁界の前に、不用意に触れれば生身の肉体をズタズタに引き裂かれるという危機感に、その一途な瞳を緊張に染めていた。

 

「くっ……、何て無作法な泥棒除けかしら……っ! 主がとうの昔に消え去っているというのに、真祖であるこの私まで不審者扱いするなんて、不愉快極まりないわ! カイト、あのワイヤー、ただ硬いだけじゃなくて、触れたものの魔力を強引に吸い取る『吸魔の磁気』が仕込まれているわ……っ! 私の調律の波動も、あの網の接続コードに触れる前に外側から霧散させられて、術式の展開が噛み合わないわね……っ!」

 

 本革のローソファから立ち上がったエルザが、同じくお揃いのジャージの裾をキツそうに押さえ、調律杖を胸元で強く握り締めながら、赤い瞳を焦燥と憤怒に染めて叫んだ。

 

 常に「満床」の状態を維持している全盛期の魔力。しかし、物理的な質量と魔力吸収の二重の論理を持つ古代の防犯ネットの前には、ただ力任せに魔法をぶつけるだけでは、術式を根底から分解され、無力化されるのがオチだった。三人は、上層区の入り口で最も厄介な「物理的・魔術的捕縛のバグ」に直面していた。

 

『――侵入者を感知。ポート・レガリアの資産安全基準を敢行。……全領域への捕縛ワイヤー出力を最大値へ固定し、不法な生命反応を細切れに圧殺しろ――』

 

広場の中央にある古代の商業碑が、真っ赤な魔導眼スキャンセンサーを不気味に発光させ、カイトたちの車両を完全にロックオンする。さらなる高圧ワイヤーの束が、追加で一斉に放たれようとした、その時だった。

「……判定。敵システムは、こちらの質量と魔力反応を『魔導眼』で視覚認識して自動追尾を行っている仕様。……ならば、その認知能力を根底からブラックアウトさせる。……さらに、絡みつく超硬合金を物理的に解体する。金貨五枚を提示。等価交換!」

カイトは聲音に明確な「デバッガーの熱」を交え、潤沢な財布から金貨を掴み出して空間へ提示した。

光の粒子と引き換えに車内に現れたのは、強力な盾や武器などでは断じてない。

現代の地球において、災害救助の現場で潰れた車両の鉄板を強引に切り裂くために使われる、数十トンの絶対的な破断力を持つ重工業工具――『充電式・工業用油圧レスキューカッター(超硬合金刃仕様)』の重厚な機体と、あらゆる視界を瞬時に塗り潰す『工業用高粘度・超速乾黒ラッカースプレー』だった。

「エルザ! この現代の黒塗料の均質な粘着構造に、お前の魔力を同調させろ! 敵の魔導眼のレンズに触れた瞬間、いかなる魔力光をも完全に遮断・乾燥固着する『絶対盲目の上書き膜』へと機能を拡張する! リア、そのカッターとスプレーを抱え、重力操作の隙間を縫って敵のセンサーを完全に潰し、ワイヤーの根元を物理解体しろ!」

「いいわ……っ! ただの黒いインクと、無骨な鉄のハサミかと思ったら、随分と理にかなった、素晴らしい遮断の論理が通っているじゃない! 真祖の全盛期の魔力を、この目潰しの論理へと完璧に噛み合わせてあげるわ! 光を失い、自らの不備に溺れなさい!!」

エルザが激しい車体の振動に顔を歪めながらも、お揃いのジャージの袖を力強く翻し、満床の魔力を調律杖の先端からラッカースプレーのノズルへと完璧に流し込んだ。

現代の優れた化学工学の資材が、彼女の執念と魔力によって上書きされる。ただのスプレーから放たれる隠蔽力が、エルザの魔力によって、あらゆるセンサーを強制的に盲目化する超高密度の『絶対隠蔽ミスト』へと跳ね上がった。

「お任せください、カイト様――っ!! リア、あのお騒がせな意地悪お目々を、真っ黒にしてきます!」

リアが激しい「反撃の闘志」をその瞳に爛々と輝かせて助手席のドアを蹴り開けた。

カイトの固有スキル『重力操作』によって、油圧カッターとスプレーの質量は羽毛のように軽くなるようあらかじめ調整され、さらにリアの周囲の重力ベクトルが「商業碑の魔導眼の中心軸」へと完全に垂直固定される。

高圧電流の火花が吹き荒れる死の世界の中、カイトが施してくれた重力の導きとお揃いのジャージを心の底から信じたリアは、爆発的な脚力で絡みつくワイヤーの隙間を疾風のごとく駆け抜け、商業碑の魔導眼の直前へと肉薄した。

ズババババシィィィン!!!

商業碑から、リアを叩き潰さんと追加の高圧ワイヤーが真っ向から放たれる。

しかし、リアは痛みに顔を歪めながらも、お揃いのジャージの袖をパタパタと揺らしながら、手にした黒スプレーのトリガーを一気によ。

シューゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!

エルザの魔力によって何万倍もの密着力へと拡張された現代の黒塗料が、古代の魔導眼のレンズへと真っ向から吹き付けられた。

その均質な遮断膜に触れた瞬間、侵入者を感知していた古代のセンサーは、光の波長を完全に遮断され、一瞬にして周囲の状況を何も認識できない「完全な盲目ブラックアウト」へと強制上書きされた。

自動追尾システムが完全に機能停止し、商業碑は標的を見失ってガガガと内部の回路を混乱パニックさせて作動を停止した。

「仕上げですっ! このおっきなハサミで、絡みつく硬いヒモは全部パチンとチョッキンです!」

リアはそのまま四輪駆動車へと引き返し、車体をガチガチに縛り付けていた超硬合金ワイヤーの根元へと、現代の『油圧レスキューカッター』の強固な刃をガチリと噛み付かせた。

そのまま、カチッとスイッチを押し込み、数十トン単位の絶対的な油圧拡張力を一気に解放したのだ。

パシィィィン!!! パシィィィン!!!

近代の優れた防災科学が生み出す、絶対的な破断の論理。

エルザの魔力調律を伴わない純粋な物理的解体の前に、数百年分の頑強さを誇った古代の防犯ワイヤーは、何の手応えも残せないまま、まるで紙細工のように綺麗に、そして小気味良い音を立てて次々と切断され、床へと転がっていった。

「――標的の完全な機能停止、および物理的捕縛の切断を確認。……仕上げだ。固有スキル『重力操作』、最大出力展開。残存する余剰高圧電流のベクトルを『大地の底』へと垂直反転しろ」

カイトは車内から、血の滲むような意志で右手を小さく翻した。

切断されたワイヤーの周囲に残留していた、処理しきれない過剰な電磁エネルギーの周囲だけ、重力のベクトルを「上層商業区のさらに深い岩盤の底」へと完全に垂直反転させ、固定したのだ。

市場を内側から破壊しようとしていた致命的なバグの残骸は、カイトの重力制御によって強引に地底へと安全にアースされ、周囲の美しい大理石の店舗を一つも傷つけることなく、完全に綺麗に、安全に最適化デバッグされた。

シュウゥゥゥゥン……。

次の瞬間、あれほど狂乱してワイヤーを撒き散らしていた古代商業碑の真っ赤な暴走光が、一瞬にしてスーッと退いていき、本来の静かな、ただの美しい市場の道標へと戻っていった。

自動防犯システムの過剰同期による捕縛バグという最大の環境不備が、カイトの用意した金貨五枚の日常資材・工具のシステムと、リアの決死の目潰し・油圧切断突撃、エルザの魔力調律という三人の完璧な論理の噛み合いによって、何一つ街を破損させることなく完璧に最適化された瞬間だった。

「ぷはぁっ! カイト様、エルザの姉様! お外の硬いビリビリ、この真っ黒スプレーとおっきなハサミのおかげで、みんなパチンと綺麗にお片付けできました! リア、お家を傷つけられなくて嬉しいです!」

お揃いのジャージの裾を嬉しそうに揺らしながら、満面の笑みで助手席へと戻ってきたリア。その瞳には、かつてない苦戦を乗り越えてカイトの役に立てたことへの「最高の達成感」と「一途な愛着の笑顔」が満ちあふれていた。

「ふぅ……、ふぅ……。本当に、ドレス(ジャージ)を細切れにされるかと思ったわ。物体の視界を完全に奪い、油圧の力で理詰めでへし折るなんて、相変わらず貴方の弾き出す日常の論理には驚かされるわね。……ふふ、でもこれでお気に入りの大通りをゆっくり進めるわ。感謝してあげるわよ、カイト」

エルザもソファへと腰掛け、ジャージの襟元を少し緩めて息を吐きながらも、死線を共に乗り越えた仲間への「深い深い絆の感情」をその瞳に溢れさせて楽しそうにクスクスと笑った。

「……メインストリートにおける防犯不備の排除、および市場航路の安全確保を完全に完了した。デバッグ手順、極めて良好だ。……これより、上層商業区の中心街への巡航を再開する」

カイトは表情一つ変えなかったが、バックミラー越しに満足そうに笑い合う二人のジャージ姿を確認すると、その口元をほんの僅かに、誰にも気づかれないほど優しく、中心の温もりを込めて緩めていた。

車内のエアコンが静かに息を吹き返し、再び心地よい二十四度の冷気が満ちる中、安全と平穏を取り戻した美しい新天地『ポート・レガリア』の上層メインストリートへと向かって、白銀のトレーラーを牽引する漆黒の移動要塞は、その車体を滑らかに、安定して滑らせていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ