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レベル999の最強勇者になったのに、左手の結婚指輪(呪い)が嫁の説教を再生し続けてくる件  作者: セルライト
第二章:偽りの救済と、勇者の「ちゃぶ台返し」

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第1話:魔王の断末魔と、開かない「玄関のドア」

第1話:魔王の断末魔と、開かない「玄関のドア」

魔王ルシフェルの巨体が、健一の一撃によって光の粒子へと霧散した。

「……勝った。勝ったぞ、美紀!」

健一は崩れゆく玉座の間で、天を仰いで叫んだ。

レベル999の魔力が、役目を終えたかのように静かに収束していく。背後ではリリナたちが「勇者様! 世界が救われましたわ!」と涙ながらに抱きついてくるが、健一の意識は既に、次元の彼方にある「自宅のアパート」へと飛んでいた。

魔王が消えた跡地には、黄金に輝く「次元の門」が出現していた。

これを通れば、元の世界に戻れる。美紀の怒鳴り声が、洗濯機の脱水音があの狭いリビングが待っているはずだ。

「さらばだ、異世界! 二度と来るか、コンニャロメ!」

健一は一切の未練を断ち切り、光の渦へとダイブした。

視界が白く染まり、懐かしい「生活の匂い」が鼻をくすぐる。

……はずだった。

「……あ?」

目を開けた健一の前に広がっていたのは、見慣れたアパートの廊下ではなく、**「真っ白な、終わりのない空間」**だった。

そこには、健一の自宅の玄関ドアだけが、ぽつんと独立して立っている。

「なんだこれ? 演出か? 粋な計らいか?」

健一は期待に胸を膨らませ、ドアノブを回した。

ガチャガチャ。

開かない。

鍵はかかっていないはずだ。なのに、ドアは山を動かすような重圧で、ビクともしない。

「おい、冗談だろ。美紀! 美紀、開けてくれ! 俺だ、健一だ!」

ドアを叩く。だが、返ってくるのは虚しい反響音だけだ。

その時、足元から不気味な声が響いた。

『……勇者よ。お前の役目は、終わっていない』

振り返ると、そこには消滅したはずの魔王の残滓……ではなく、この世界の「システム」そのものが具現化したような、歯車の集合体が浮かんでいた。

『魔王を倒した者は、次代の神となる。それがこの世界の理。元の世界? そんな下等な次元、もはやお前の居場所ではない』

「はあ!? ふざけんなよ! 神様なんて求めてねえって言っただろ!」

健一の怒りが爆発する。だが、システムは冷酷に告げた。

『お前が望もうが望むまいが、お前はこの世界の「バッテリー」だ。お前がここに留まることで、この美しい箱庭は維持される。美紀? あの女は、お前が消えた一秒後には別の人生を歩んでいる。お前は、もう「不要」なのだ』

その瞬間、健一の中で何かが「プチッ」と音を立てて切れた。

それは、彼をこれまで支えてきた「良識」という名の最後のリミッターだった。

「……不要? 俺が? 美紀が俺を忘れる?」

健一の左手の指輪が、どす黒い漆黒の炎を上げ始めた。レベル999。その限界突破した力が、今度は「世界を守るため」ではなく、**「世界を根こそぎ破壊するため」**に再定義される。

「いいか、よく聞け、クソシステム。俺は美紀に怒られるために生きてるんだ。美紀のいない世界なんて、神の座だろうが極楽浄土だろうが、俺にとっちゃ『燃えないゴミの日に出された粗大ゴミ』以下なんだよ」

健一は聖剣を抜き、目の前の「玄関ドア」ではなく、その周囲に広がる「白い世界」の虚空を睨みつけた。

「この世界を維持するために俺が必要だって? だったら話は簡単だ。……俺を帰さないこの世界ごと、粉々にぶち壊してやる」

「勇者による、世界の解体工事(ちゃぶ台返し)」が、今始まった。

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