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レベル999の最強勇者になったのに、左手の結婚指輪(呪い)が嫁の説教を再生し続けてくる件  作者: セルライト
第二章:偽りの救済と、勇者の「ちゃぶ台返し」

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第2話:聖都炎上! 「おもてなし」への制裁


「勇者様! 何を……一体、何をなされているのですかッ!?」

聖都エリュシオンの中央広場。かつて魔王軍の脅威から世界を救った「救世主」を称えるために集まった数万の民衆の前で、聖女リリナの悲鳴がこだました。

健一の手には、魔王を討ち果たした伝説の聖剣……ではなく、近くの露店からひったくった「一本の鉄パイプ」が握られていた。いや、それはただの鉄パイプではない。レベル999の魔力が充填され、黄金の輝きを放つ「概念破壊の棍棒」へと変貌していた。

「リリナ、どいてろ。仕事の邪魔だ」

健一の目は、完全に据わっていた。

彼は、先ほど次元の狭間で見た「システム(世界の運営)」の傲慢な態度が許せなかった。俺をバッテリーにしてこの世界を維持する? 美紀が俺を忘れる? ふざけるな。そんな「運営の都合」で塗り固められた世界など、一円の価値もない。

健一は、聖都の象徴である高さ五十メートルの「女神像」の足元に歩み寄った。

「勇者様、そこは聖域です! 触れることすら許されぬ――」

「聖域? 掃除のしにくいデカいオブジェの間違いだろ」

健一は鉄パイプをフルスイングした。

ズドォォォォン!!

物理法則を無視した衝撃音が響き渡り、純白の大理石で作られた女神の足首が、まるで熟しすぎたトマトのように爆ぜた。ゆっくりと、しかし確実に、聖都の信仰の象徴が傾いていく。

「ぎゃああああ! 女神様が! 女神様が倒れるぞぉーっ!」

パニックに陥る民衆。だが健一は止まらない。倒れゆく女神像の頭部が地面に激突する寸前、彼は跳躍し、空中でその頭部をサッカーボールのように蹴り飛ばした。

「いらねえんだよ、こんな見栄えだけの置物は! 美紀はな、玄関に置いてあった俺の趣味のプラモデルをな、『掃除の邪魔』って理由だけで、一瞬で不燃ゴミに出したんだぞ! その時の俺の血を吐くような絶望に比べれば、この石像一つ壊すなんて、プチプチを潰すような快楽だわ!」

女神像の頭部は、聖都の議事堂を直撃し、議事堂ごと粉砕した。

健一の暴走は、もはや「乱心」という言葉では片付けられない。それは、抑圧されたサラリーマンが、全知全能の力を手に入れた結果引き起こされた、史上最大の「八つ当たり」だった。

「勇者ケンイチ! 貴様、魔王に魂を売ったか!」

聖騎士団長が、数百の騎兵を引き連れて健一を取り囲む。

「総員、突撃! 狂った英雄を討て!」

「騎士団長……お前、いい鎧着てるな。手入れも行き届いてる」

健一は、迫り来る騎兵たちを冷めた目で見つめた。

「でもな、その鎧を維持するための『クリーニング代』、誰が出してると思ってんだ? 民の税金か? それとも魔王の遺産か? ……いいか、世の中にはな、『旦那のスーツをクリーニングに出す手間がどれだけ大変か分かってるの?』って週に三回はキレられる男がいるんだよ!」

健一が地面を力一杯踏みつける。

ドッゴォォォォォォン!!

衝撃波が地脈を逆流し、突撃してきた騎兵たちの足元の石畳が、まるでポップコーンのように弾け飛んだ。馬も人も、重力に逆らって空高く放り出される。

「うわあああ!」「助けてくれぇ!」

「助けて? 甘えるな。俺だって、住宅ローンの返済日に銀行の残高が足りなかった時、誰にも助けてもらえなかったんだぞ! この世界そのものが、俺を帰さないっていう『不当な契約』を押し付けてくるなら……俺はこの世界の『利用規約』を物理的に書き換えてやる!」

健一は、大聖堂の巨大な鐘楼に手をかけた。

レベル999の筋力が、建物の構造を無視して鐘楼を根こそぎ引き抜く。

「リリナ、メイ、クロエ。お前らには感謝してるよ。……でもな、お前らが俺に向けるその『完璧な笑顔』が、今は何よりも鼻につくんだ。美紀はな、俺が帰宅した瞬間に『ねえ、脱いだ靴下、そのままにしないでって言ったよね?』って、この世の終わりみたいな低い声で迎えてくれるんだよ」

鐘楼を肩に担ぎ、健一は聖都の最も豪華なエリアを見渡した。

「そこには『嘘』がない。そこには『打算』がない。……でも、この世界はどうだ? 運営が用意した『勇者を繋ぎ止めるための居心地の良さ』で溢れてる。……そんなもん、俺にゃ毒ガスと同じなんだよ! この世界を維持するために俺が必要だって言うなら、俺が必要なくなるまで、この箱庭を徹底的に『更地』にしてやる!」

健一は担いだ鐘楼を、聖都の貴族街に向けて全力で投擲した。

空気を切り裂く轟音と共に、鐘楼がミサイルのように貴族たちの邸宅を次々と貫通していく。

「やめて……もうやめてください、勇者様……っ」

リリナが膝をつき、祈るように健一の足に縋り付く。

「……リリナ。美紀がよく言ってたんだ。『片付かないなら、全部捨てればいいじゃない』ってな。……俺は今、その教えを忠実に守ってるだけだ」

健一の左手の指輪が、かつてないほど禍々しい漆黒の輝きを放つ。

その輝きは、聖都の空を覆い、太陽の光さえも遮り始めた。

運営システム……聞こえてるか。俺を帰さないなら、次は隣の国を更地にするぞ。……俺の有給休暇(この世界での滞在)は、もうとっくに終わってんだよ!」

聖都エリュシオン。かつて希望と呼ばれたその場所は、一日足らずで「巨大な産業廃棄物置き場」へと変貌した。

しかし、健一の破壊衝動はまだ収まらない。

彼が見据えるのは、この世界の経済、自然、そして理そのもの。

「さあ、次だ。次はどこを壊せば、あの『玄関のドア』が開くようになるかな……?」

勇者による、世界全土を対象とした「超大規模・断捨離」は、まだ始まったばかりだった。

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