友達?
おそるおそる声がした方向を向くと、セラ、マリー、ミランダ、紅色の髪の美少女がいた。
げぇ、なんでミランダがいるんだよ。一番の地雷じゃないか。
(マスター、友達を増やすチャンスです。積極的に行きましょう。)
(おまえ、ほんと嫌な奴になったな。出会った頃はどうしたらいいか分かりましぇーん、とか言ってたのにな。)
(言ってませんよ!!)
(いーや、言ってたね。)
(言ってません。)
「ね、ねえ、ジン、また話を聞いてないね、マリーは悲しいよ。」
「ん?、聞いてるよ。」
「二人は知り合いなの?」
「知り合いと言えば知り合いだな。」
「ひどーい、一緒にデートした仲なのに。」
「いや、だからデートじゃないって。」
「いや、でも一緒に帝都を回ったじゃん。」
「へ~、帝都を一緒に二人で回ったんだ。手紙で私と回ろうって誘っても断ったのに。」
悪いな、手紙の内容は知らないんだ。全部、パールに書かせてたから。
(断っておきましたよ。一時は承諾しようと思いましたが、さすがにマスターが可哀相なので。)
(そいつはナイス判断だ。セラの相手なんかしてられるか。)
「いや、たまたま出会っただけだ。」
まだセラは不満そうな顔をしているが、そのまま交流は続く。
「初めまして、私の名前はミランダ・ロウ・ギラニアです。今回は学園のためのパーティということなので気楽に行きましょう。学園では身分に関係なく平等ですから。」
凄い名前だな。ファミリーネームがギラニアって、いかついな。
なんか引くわ。
それに身分に関係なく平等なわけねぇだろ。現実という同じ枠組みにある以上、相互に影響は受ける。
学園が完全な独立状態じゃないのがいい証拠だ。
「私の名前はロハド・フォン・マーベルと申します。」
「私の名前はケルン・フォン・レーベックと申します。」
ケルンがわたくし、とかいってるの気持ち悪いな。
俺も無難に行くか。
「…仕方ないわね。お願い、かしこまらないで。大丈夫、絶対不敬罪とかで罰したりしないから。」
な、なんで俺が言う前に言うんだ、この女。性格腐ってんな、明確なパワハラじゃねぇか。
皆が俺の事を見つめてくる。
ああ、もう、やればいいんだろ。やれば。
「俺の名前はジン・フォン・エルバドス。よろしく。」
セラとマリーを除いた面々が驚いた顔をしている。
いや、ミランダ、あんたは驚いた顔をしちゃだめだろ。あんたがやれって言ったんだぞ。
「なかなかやるな、ジン。」
「たしかにねぇ、僕も見習わないと。」
男の連中は褒めてくるが、きれいな紅色の髪をした美少女は俺をにらんでくる。
うわー、サラに似ているような気がする。気が強いところとか。
そんなことを思っていると、その少女が前に出てくる。
「私の名前はロゼ・フォン・シュミットです。よろしくお願いします。」
そう言って、華麗な一礼をしてみせるが俺の事をまだ睨んでいる。
(シュミット家の階級はなんだ?)
(公爵家ですね。高い方の。)
(…それぐらいじゃないと、ミランダ皇女と一緒に居れないよな。)
なんか妙に納得してしまった。
(なんで俺の事を睨んでるんだろ?、初対面だよな?)
(そうですね。下級貴族なのに皇族になれなれしく話しかけたからではありませんか?)
(本人がそうしてくれって言ったんだぞ。)
(それで実行する人がいるかは別です。あくまでもお願いであって命令ではありませんから。)
(…確かに。俺、もしかして危ない橋を渡ってた?)
(そうですね。相手が意地悪なら嵌められてたかもしれませんね。)
えっ、何それ、怖い。
だから貴族政治は嫌なんだ。
「ちょっとジン、あんた聞いてるの?。」
ロゼが怖い。権力があるっていうのにも怖さが倍増する。
こういう女苦手だ。絶対結婚とかしたら主導権を握るタイプだ。
「聞いてるよ。」
「じゃあ、今の話でいいわね、あとはあんただけよ。」
えっ、何の話?、全く聞いてなかった。
(パール、何の話をしてたんだ?、こいつらは?)
(分かったって言っとけば大丈夫ですよ。)
なんて無責任な奴だ。
それ以外に返答の仕方が分からないのが、なお腹立たしい。
「ああ、それで大丈夫だ。」
「皆で帝都を回るのか、楽しみだな。」
な、なんだと聞いてないぞ、そんなの。
(よかったですね、マスター。仲が深まりますよ。)
(お前、さては知ってたな。)
(もちろんですよ、マスターのために心を鬼にして黙ってたんですよ。)
…もう駄目だ。俺はもうこいつに勝てないのかもしれない。
その後も帝都を回る計画が立てられていく。
…俺はなんて無力なんだ。自分にとって不愉快な未来を避ける術を一つも持ってない。
仮病はだめだよな。バレたら一発アウトだし。
「じゃあ、明日の朝9時ごろ、噴水前に集合だね。」
早くない?、お店やってないよ?
「楽しみだね~、いろいろ回りたいなぁ。」
「確かに、あんまり回ることがないからね。」
「私もあんまり城の外に出たことがないから、楽しみ、しかも友達と回るのははじめてね。」
「私は帝都を回ったことがないわ。」
ロゼのカミングアウトに驚く女性陣。
その後も盛りあがっている女性陣の会話に割り込めるはずもなく、こっちは男性陣で話す。
「ジンは、次男だろ。将来なりたい職業とかってあんのか?」
まだ11歳なのにそんなことを考えるのか。成人年齢が15歳で早いからかな?
「特にはないけど、強いて言うなら帝立学園の図書室の司書かなぁ?」
「変わってんなぁ。」
「確かにそうだね。普通は騎士とかになりたいとかいうのが多いんだけどね。」
騎士とかそんな自己犠牲あふれる職業はごめんだ。しかもこんな大陸の情勢では。
「へ~、ジンって、司書になりたいんだ。」
「向上心のない男ね、どうせなら近衛騎士とか目指しなさいよ。」
「でも、ジンらしい気がする。」
「なかなか特殊な職業が好きなのね。」
いっせいに女性陣が介入してくる。
入ってくんなよ、ややこしくなるだろうが。ほら、ケルンとロハドが大人しくなってるじゃないか。
「私、覚えてるのよ。8歳の時の誕生日パーティで囲まれていた時にジンとセラがやってきて、この人たちも私と話しに来たのかしらと思ってたのに、中心にいた私を見た瞬間、ジンは逃げ出したのよね。」
見られてたのか、バレてないと思ってたのに。不味いぞ。
「確かにそうだったね。なんか美味しい料理があるからとか言ってたけど。」
「あぁ~、ちょっと思い出せないですね。」
「「「「嘘(よ)」」」」
「ジン、敬語になってるよ。分かりやすいね。」
しまった。ちょっと動揺してしまった。
っち、どうすればいい。ごまかすしかねぇ。
「その、人混みが嫌いでさ、ちょっと飛び込みたくないなぁって思ったんだ。」
「初めっからそういえばいいのに、変にごまかすから。」
その後もいろいろ話をし、やっとパーティは終わった。
つ、疲れた。明日、もう無理かもしれない。
本当に仮病で休むか?、体調がすぐれないのは事実だからな。
「ジン、ちゃんと来なさいよ。仮病とか使ったら宿まで押し掛けるから。」
怖いな。赤髪は気が強いって法則でもあるのか?祖母も昔は気が強かったりして。
俺はげんなりしつつ宿まで帰るのだった。




