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悪夢の夜5

いやはや、パールから会議を口頭で聞いてたけどひどくないか?

(パール、なんで内務大臣が続投なんだよ?)

(いや、話の流れは知ってるじゃないですか。)

(だからな・ん・でそんな流れになってんだよ? 責任は取らなくていいのか?)

(うーん、どこから説明しましょうか。簡単に言うと内務大臣は内務省に裏切り者がいると主張し、それに反対する人が現れなかったので皇帝がそれに便乗したという形ですよ。)

(そこが分からない、なんで反対する人が現れなかったんだ?、他の候補者からしたら引きずり落とすチャンスだろ。)

(…違ってたんですよ、内務大臣の雰囲気が。)

(…それだけ?)

雰囲気が違う?、それだけ追い詰められてたってことじゃないのか?

(いいえ、それだけではありません。ですが、おそらくマスターの想像を遥かに凌駕していると思います。修羅場を潜り抜けてきたはずの大貴族も恐怖で顔が引きつっていましたからね。)

(そんなに怖かったのか?)

(人間にとっては。…彼女は泣く泣く大切なものを切り捨て、揺らがぬ道を得ました。生きている限り、もう止まらないでしょう。)

(…大切な物とはなんだ?)

(物とは語弊がありましたね。おそらく、大切な人です。もしかしたら愛していたのかもしれませんね。彼女の部屋を確認したところ、幼少のころから彼女の付き人であるマルク・フォン・ゼーベックが死んでいるのを確認しました。彼の首には他人による切り傷があり、おそらく彼女は窮地をしのぐために切り捨てたのでしょう、裏切り者として。)

(愚かな。)

いや、切り捨てられるほどの愛だったと言う事もできるな。本当に好きな人は切り捨てないだろう、普通。

(ですが、彼が裏切り者であった方が疑いは少なくなります、彼女に情報が届いていないとするならば。)

(それで皇帝はその意見を飲んだのか。)

(彼女が失脚すればさらに帝位争いは激化します。この被害状況では皇帝もそのような事態は避けたいでしょう。)

(でもさ、責任者をきちんと処罰しないと腐るだけだろ。)

(その責任が、祭り上げられた裏切り者に擦り付けられると言うわけです。)

(ああ、家のために切り捨てられる…)

(はい。)

こっわ。裏切り者として処罰されるとかやってらんねぇな。家族の情とかないんだろうなぁ。

(帝都以外では襲撃は起こってないのか?)

(おそらく起こっていません。何かあればすぐに帝都まで伝わるよう仕組みがありますし、モルテ教はまずは各国の首都を主に活動拠点としていますから。)

(へー、でも今回の件で他の国もモルテ教を弾圧するだろうな。それにしても第3皇子たちはモルテ教にもスパイを仕込んでいたのか。)

(この様子ではかなり深いところも仕込んでそうですね。)

(ああ。よっぽど小さい時から準備してないと無理だよなぁ。)

本当に浮いてる下級貴族でよかった。やっぱり人間関係はしんどい。

(それよりもマスター、学園、休みになりましたね。)

(ああ。すげぇ嬉しい。復興ってどのくらいかかるかな?)

(西部の復興具合を見るに半年ぐらいですかね。)

(半年か。それだけあれば大分世界を回れるな。)

(ですがおそらく夏休みは返上ですよ。)

(はぁ!?、ふざけんなよ!!)

いや、まぁそんなことだと思ってたけどさ。

(夏休みが早めに来たと思えばいいんですよ。)

(…チッ)

それにしてもどこに行くか。冒険者をやってたときはあまり観光できなかったからな、今回はゆっくり見て回りたいな。

(どこに行くかは決めてるんですか?)

(いや、まだ決めてない。けどジルギアス王国は行ってみたい。)

(分かりました。情報を収集しておきます。)

(頼む。しかしあれだな、SS級冒険者が来るまでに去っておきたいな。)

バラバラに迎えに来るってことは、どうせウチは最後だろう。幼稚園児の時の気持ちを思い出す。

(ですね。しかし、マスターがいなくなれば家に迷惑がかかるかもしれませんが、宜しいのですか?)

(…成長のためだ。認めてくれるだろ。)

流石に半年もあの家で過ごしたくない。ゲームがあれば話は違うんだが。

(では明日に出発ですね。)

(ああ、楽しみだ。)




(…朝か。)

(おはようございます。)

(おはよう。)

(今日は残念ながら雨ですね。マスターの日ごろの行いのせいでしょうか?)

(違うだろ。)

日常会話をしていると皆も起きだした。適当に挨拶を交わし、本題に入る。

「なぁ、学園はやっぱり休みかな?」

「流石にな。少なくとも犯人が特定されるまでは休みなんじゃないか。」

「はぁ、まだ始まったばっかりだったのになぁ。」

フレイ、がっかりしすぎだろ。そんなに学園が好きなのか? 同じ人間とは思えん。


その後、カフェテリアで朝食をとると教室へ向かう。

「皆、おはよう。突然だが昨日帝都で爆発事件があった。大きい音で目を覚ました人も多いと思う。これに対して陛下は非常事態宣言を発動し、帝都の復興が完了するまで学園は休みになることが決まった。」


「マジか。」

「仕方ないですの。」

「フン」

「だよなー」

皆、それぞれ話し出す。


「はいはい、静かに。それで、時間差で早いと今日からおうちの人が迎えに来るからな。しっかり荷造りをしておけよ。それと無断外出は一切認めないからな。伝えることは…このくらいか。ああ、あとそうだ、今日からSS級冒険者が警備に来てくれるそうだ、安全面には心配しないように。」

(無断外出は駄目だそうですよ。)

(それはルールであって法律ではない。なら大丈夫だ。)

(面の顔が厚くて尊敬します。)

(照れるぜ。)

(…)

無反応はやめい!!

(SS級冒険者が来る前がいいけど、さすがに昼間から消えるのは不自然だしなぁ。ちなみに誰が来るとか分かるか?)

(アマルンティア・ガーツ、あの白髪の女ですね。ちなみに平民です。)

(マジかよ。…どうすればいい?)

流石に正体はバレないと思うが、魔力を把握されてたら気づかれるかもな。

(そうですね、やはり来る前に去るべきかと。)

(…よし、この後すぐに抜け出そう。手紙を置いていった方がいいな。代筆頼む。)

(仕方ありませんね。適当に偽造しておきます。)

(さすが頼りになるぅ!!)

(それほどでもありますね。)

(…くっ、否定できない。)

その後、自由時間となったので人影のないところに移動するが―

「ジン、どこにいくの?」

ローナァーーー、なんでお前がここに!!

「あ~…」

どうしよう、適当にごまかすか。

「…ねぇ、私ってそんなに馬鹿に見える? 確かに私は能天気だけどさ、分かることもあるんだよ。」

じっと見つめてくるローナ。その瞳に俺は何も言えない。

「…なぜ俺に干渉するんだ。」

「好きだからだよ。前にも言ったじゃん」

好きか、…よく分からないんだよなぁ、マジで。俺はたぶん恋人でも邪魔になったら別れる。でも本当に好きなら自分から別れることはないわけで。…結局その思考に行きついて恋というものが分からなくなる。それに人のために何かしてやりたいなんて思ったこともない。

「…すまん。俺はお前の事は好きじゃない。」

「分かってる。それと何か隠してるでしょ、誰にも言えないことを。」

驚いた。ちゃんと演じてるつもりだったんだが。

「何故そう思う?」

「時々醒めた目で皆を見てるよね、皆が気付かないところで。」

そりゃ醒めた目にもなるさ。俺とは気質が反対の人間に囲まれてるんだからな。

「…なるほど。お前はちゃんと見てるんだな。」

「そりゃあね。で、どこに行くの? 言っておくけど誤魔化せないよ、ちゃんと未来を見たんだから。」

ちっ、なんて便利な能力だ。俺も欲しい。

「おっしゃる通りだ。俺は学園が再開するまで旅に出るつもりだ。」

「どうして?」

「気分転換かな?」

「なら私も連れていって」

「断る!!」

無理無理、コミュニケーション面倒だから。

「お願い。」

「ハァ~、無理。お土産買ってやるから我慢しろ。」

(そういう問題ではないと思いますよ。)

(いや、でも連れていくのは論外だ。)

(可哀相に。)

俺はローナを振り切り、トイレに駆け込む。

「待ってよ!!」

ローナの声を無視し、そして―

転移!!

(うげっ、雲で何も見えん。早く避難船を出してくれ。)

そういや雨とか言ってたな。

(了解。)

パールがそう言うと巨大な飛行船が出現し、すぐに乗り込む。

しかし中は何もなかった。

「…ソファは?」

「ありませんよ。リュウの素材くらいしかありません。」

「マジか。」

「途中で買えばいいじゃないですか。」

「…それもそうだな。とりあえず帝国から脱出だ。ジルギアス王国へ向かえ!!」

「了解。」

こうして俺は世界へ見聞を広めに行くのだった。


ーー??ーー

「くそっ、スカーレットめ。王位を継ぐのは僕だぞ!! それなのに――」

3歳年下のスカーレットが魔法剣を習得したと聞き、焦る。

(女の分際で生意気だ!! 僕が王になったら真っ先に処刑してやる。)

「ダニアン様。ハーレ公爵が面会に来てますが?」

「ふむ。通してくれ。」

ハーレ公爵は自分の勢力をまとめ上げてくれてる手駒。丁重にもてなす必要がある。

「失礼いたします。」

「いえいえ、よく来てくださいました。ハーレ叔父上。」

「敬語はよしてください、殿下。私にも立場というものがございます。」

「そうですか?、分かりました。それで今回は何用だ?」

「素晴らしい宝石を手に入れたので殿下に献上しようと参った次第です。」

「ほう、父上ではなく俺に。」

「次代の王はダニアン様。ならばどちらを優先するかは決まっているではありませんか。」

「ふふ、お前は見る目があるようだ。」

「恐縮にございます。」

(とりあえず繋がりは出来た。あとはどう調理するか。)

クレセリア皇国、ここでも腐敗は始まっていた。


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