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翌朝

「…はぁ、朝か。」

パールがいつものようにイヤホンらしきものを渡してくる。

(おはようございます。)

(ああ、おはよう。)

(今日は報告がいくつかありますが、重い物ばかりです。)

そりゃ戦争の引き金を引いたからね。

(まず昨日の件ですが、フォーミリア王国の首都ガーレットで戦いが勃発し、首都が破壊されました。民間人にも大勢の被害が出たようです。そして帝国軍は侵攻を跳ね返されて、一時撤退しています。現在は再侵攻に向けて軍の再編成をしていますね。)

(跳ね返されたのか、俺の予定だと蹴散らすはずだったんだけどな。)

(何事にもうまくはいきません。ですが王都は破壊され、略奪、強姦、無差別の殺害などが行われてます。)

戦争あるあるだな、まぁ仕方がない。他でもない俺のためだ。

(なるほどな。)

(それでもう一つの報告ですが、こちらはかなり衝撃的です。第8皇子が暗殺されました。どうやら毒のナイフで心臓を一突きのようです。)

ありゃりゃ、とうとう暗殺が起きてしまったか。

(それって不味い?)

(不味いですね。少なくともこれからは暗殺者が帝位候補者の間で飛び交うでしょうね。そしておそらくこの事件の裏には第3皇子、第4皇子が関わっているでしょう。)

ああ双子が動いた途端にこの事件が起きたのは怪しすぎんだろ。…いや、誰かがそう思わせようとしているのかな?

(…そうかもな。でもなんでこのタイミングなんだろうな?)

(第8皇子は第2皇子の陣営に属しています。そして現在、第2皇子は遠征中です。おそらく警備も通常より甘かったでしょう。)

なるほどな、うまく隙をついたってわけか。

(帝都はどんな感じだ?)

(皇帝に報告が上げられたのは少し前です。現在は近衛騎士や暗部を招集しています。)

(暗部ってなんだ?)

(要は工作員の集まりの事ですね。皇族が暗殺されてひどく叱責されているようです。近衛騎士団長と暗部のトップの処刑は間違いないですね。)

責任を取らされるってわけか。やっぱり出世したらその分取らされる責任も大きくなるからな。

よく日本で不祥事が起きるとお偉いさんが頭を下げていたのを思い出す。ああはなりたくないと子供ながらに思ったものだ。

(秘密裏に助けて手駒にするというのは無理かな?)

(分かりません。ですがおそらく内密に処刑されるでしょう。一応探っておきましょうか?)

(ああ、頼む。)

その二人が味方になったら頼もしいからな、バレたらやばいけど。

(でもすぐにこの話は他の貴族や平民に広がるでしょうね。いつまでも隠し通せるものではありませんから。)

(だよな。皇族も大変だな。ハブられた男爵家の次男でよかったよ。殺風景の領地を継がなくてもいいし。)

まぁ、もし継ぐことになっていたとしても放棄してた可能性が高いな。元日本人の俺としては反乱が怖い。たとえ魔法や剣が優れていたとしても数の暴力はつらい。

(マルスは大丈夫ですかね?)

(知らん。うまくやるだろ。…で、下手人は誰か分かってるのか?)

(はい。城の庭の隅で一人の男性が亡くなっているのが発見されました。そして身に着けていたのは伯爵家の紋章が彫られた腕輪でした。)

(…紋章付きの腕輪ねぇ。そんな証拠を残すとは思えないな。)

(はい、おそらく嵌められたのでしょう。最近は権勢を落としていましたから、どうにかしようと焦った可能性があります。)

(まぁ、隙を見せた方が悪い。)

(ドライですね。もっとも真相は闇の中ですがね。昨晩、その貴族家は全焼。家人は全員死亡しました。)

(…可哀相に。)

(マスターにもそう思う気持ちはあったんですね。)

(おい。俺を何だと思ってんだ。それぐらい思うさ。)

(そうですか。…まぁ、今回の件はおそらく彼らに罪を負わせて幕引きでしょう。)

(はぁ…やるせないな。)

(帝位争いですから。)

そこそこの権力じゃ我慢できないのかな? まぁ、上昇志向があって良しとしようか。

(…マルスはやっていけるのかねぇ。)

(なるようになるでしょう。)

ほんと次男でよかった。


ー--??ー--

「大変なことになりましたな。」

「全くだ。おそらくあの双子が動いたんだろう。これでさらに帝位争いは激しくなるぞ。」

帝位争いで暗殺が起きるのは珍しい。大抵は追い込まれてから起死回生の一手として放つのだ。失敗して計画が露見すればその時点で処刑となるからである。

「しかしどうして急に参加しようと思ったのでしょうな?、これまでは中立を保っていたはずですが。」

「大方、俺たちのうち誰かが皇帝になれば好き勝手に生きられないと思ったんじゃないか?、実際、新たな皇帝が即位すればすぐにどこかの家に婿として追いやられるからな。」

「あの二人は暗い噂も多いですからな、お気をつけなさいませ。」

「勿論だ。相手が誰であろうと油断しない。負けるわけにはいかないからな。」

「そうですな。」


ーー-??ー--

「あのバカタレどもが動いたわね。はぁー、一応警備を厳しくするわよ。」

「分かりました。それにしてもとうとうあの殿下たちが参戦ですか。さらに荒れそうですね。」

「もう荒れてるわよ。おそらく捜査も進まないでしょうしね。」

「そうですね。何より犯人が死んでいる状態で見つかりましたから。お腹に大きい穴をあけて。」

「その犯人をたどるだけじゃ、暗部でも大元までたどり着けないわ。おそらく小さいころから育て上げられた暗殺者でしょうから。」

〈はぁ、でも困ったわね。こちらも暗殺者をそろえないといけなくなっちゃったじゃない。〉


ーー-??--ー

「あいつらもやっと目が醒めただろうぜ。」

「楽しみだね、兄さん。」

「ああ。まずは勢力を集めるぞ。足元がなかったらどうにもならんからな。」

「分かってるよ。まだ中立の公爵家もいるからね、そいつらを引き込もうよ。」

「だな。とりあえず事件を起こして解決してやりゃあ、味方になるだろ。」

「まさしくマッチポンプだね、でもいい作戦だと思うよ。」

「なら計画を練るぞ。」

「うん。」

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